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27章 魔人と神人

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「シェリー。これどう見ても、死んでいるようにしか見えないけど?」

 カイルが、朽ちてバラバラになった骨を見ながら言った。それは誰の目にも明らかだ。骨が生きているように動くのであれば、それはスケルトンという魔物でしかないと。

「だから言ったではないですか。シュロス王は永遠のを願ったと」

 そう言って、シェリーは抱えているカイルの腕から飛び降りる。そして、残骸が散らばっている床から、何かを探しているのか、かき分けていた。

「何かあるのか?」

 シェリーの行動に疑問を持ったモルテ王が尋ねる。ぱっと見た感じでは、そこにシュロス王となるモノはなさそうだ。

「強いて言うのであれば、魂の容れ物ですかね。肉体が老化し限界がきたとなれば、魔導兵のように外装をまとった人形に入れるか、元の肉体の再構築を模索すると思うのです」

 シュロスは以前言っていた。この力が使えるのは、この肉体だからではないのかと。
 ならば、シュロスとしては、肉体が朽ちたあとに再構築する手段を模索したはずだ。
 死からの再生。ゲームならではの考え方を。

 そのために一旦、魂が肉体から離ることで、死という状態を作り出すために、魂を入れる容れ物を用意したはずだ。

 ただ、何かの残骸と骨が散らばっている状態だということは、失敗したか、シュロスの意図をアーク族が正確に理解していなかった可能性がある。

「肉体の再構築?聖女の力のように死者を生き返らすってことかな?」

 カイルは肉体の再構築という意味が理解できず、シェリーが死者を生き返らすことと同じかと尋ねた。それに対しシェリーは首を横に振る。

「流石に聖女の力では、骨に血肉や神経や臓器を与えて、人の形にまでするのは無理ですね。それこそ魔女や神の領域です」
「え?それはエリザベートが出来て、シェリーには出来ないってこと?」
「生き返らす条件に縛られていますので」

 条件。シェリーが使う聖女の力は、死して4半刻30分以内という条件に縛られている。いや、箍を外したラフテリアはその条件を覆してきたが、ラフテリアが普通かと問えば、魔人だからということになる。

「あ、多分これです」

 シェリーは残骸の中から小さな丸い玉を掴み上げた。見た目はラムネの瓶に入っているビー玉のように、球状の黒い玉だ。

 それをとても嫌そうにつまみ上げている。

「自分が悪心にまみれているじゃない」

 シェリーは独り言のように呟く。
 黒い玉。それは長年この状態から解放されなかったシュロスの怨嗟の塊なのだろう。黒いモヤをまとっている。

「シェリー。それをどうするのかな?」

 シュロス王というには、小さな塊の存在にカイルもモルテ王も困惑気味だ。いや、結局のところ二人はシェリーの言葉を真に理解出来ていなかっただけだ。

 神が与えた永遠の命という状態をだ。

「取り敢えず、浄化します。このまま復活して、魔王だったとしても頷ける状態ですから……浄化で魂そのものが消滅しても、面倒くさくなくいいですし」

 魔王がどのような存在かは見たことはないものの、何千年という時を孤独に生きた者の恨みは如何ほどのものか、想像しがたいことだ。

 シェリーは黒い小さな玉を覆うように白い光で満たす。壊れてしまってもいいというシェリーの心がにじみ出ているのか、この空間を白一色に染め上げるほど、強い光を放っている。

 いや、もし復活しても、ゲーム脳のシュロスとの会話の成り立たなさを思い返すと、壊れてしまえば良いという感情が強く出てしまっているのだろう。
 浄化と言うには些か、殺意が混じっているようだった。


 どれほど時間が過ぎただろうか。太陽の日が遮られた国であり、洞窟の中のため、正確な時間はわからない。
 シェリーが浄化している間、時間を持て余したカイルとシュロス王が、散らばった残骸から骨を骨格標本のように床に並べ、それ以外の残骸を元の姿らしき形に床に並べる時間が過ぎていた。

「ああ、そっちですか。まぁ、魔導兵を見ればなんとなく、予想はできていましたが……」

 シェリーは、空色の丸い玉を指でつまむように持ちながら、床に並べられたモノを見ている。

 そして、何故か意気投合したように、満足気な表情をしているカイルとモルテ王の足元には骨格標本があるが、一部欠けているところがある。長年の放置でもろくなってしまったのだろう。
 その骨の横には鎧のような物が並べられている。

 全身を覆うフルプレートアーマーのような感じだが、隣に並べられている骨格の人が着るには、小さすぎる大きさだった。
 いや、骨が着るにはぴったりな大きさと言い換えよう。

「これをどうする?」

 カイルは埋葬するのかという意味で聞いたが、シェリーは答えず、何かを感じ取ったのか、斜め上に視線を固定したまま動かなくなった。

「シェリー?」

 どうしたのだろうと、カイルは声をかけるが、シェリーの言葉にこの場の空気が一転したのだった。

「上空を旋回している?」

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