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27章 魔人と神人
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しおりを挟む「ちょっと聞き捨てならない言葉があったが?」
「そうよ!ルティーが神人って無いわ!」
「いや、そこではなくて、白き神と会ったということだ」
「神と会うことぐらいあるでしょ!こんな悪魔の化身のような。ルティーを神人だなんて認めないわ」
「神と会うことが異常だといつも言っているだろう」
「仲がよろしいのですね」
言い合っている魔女と死の王にシェリーは呆れたように言う。
「いい加減に本題に入っていいでしょうか?」
「良くないわよ!」
「良くない!」
いつまで経っても、話が脱線していることにシェリーはため息を吐き出した。シェリーにとっては口論する程のことではないので、先に話を進めたいと。
「はぁ。私は聖女ですから、神の声を聞いたりお会いすることはあります。それから、神自ら手を加えて作り出された者であるなら、神人と言っていいでしょう。我々ラースも女神ナディア様の血が入った神人です。ロビン様も白き神から肉体を得て、神人と成った。ならば、モルテ神とオスクリダー神から作り出されたモルテ王も神人です」
シェリーの言葉に言い合っていた二人は黙って考え深い表情をしている。言われてみればそうだと。納得できるが、したくないという表情だ。
「納得できたのなら、話を始めますよ」
シェリーは強引に話を始めた。アーク族が魔人を模して悪魔という存在を作り出したこと。そして、世界を混沌に陥れる魔王という存在を作り出し、先日魔王が再び作り出されたことを白き神から聞いたことを話した。
「相変わらずバカじゃない?」
「はぁ。会話が成り立たない奴らが何をやっているんだ?」
長年生きた魔女と死の王は途中からシェリーの話を呆れるように聞いていた。相変わらず馬鹿なことをしていると。
「やっぱり、もっと島を落とした方がよかったかしら?」
「俺も一つ落としたぞ」
「そうよね。馬鹿な鳥を黙らすのなら、巣を落とすのが一番よね」
魔女と死の王の話から、いくつか島を落としたと予想できた。その言葉にシェリーは考えるように視線を斜め上に向けた。
「あの?エリザベート様。空島が何かしらの魔術の陣を構成しているという結論に至ったと思うのですが、それだと既に魔術の陣が機能していない可能性がありますよね」
そう、大陸の南側は移動する空島は存在していない。そして、北側にはいくつか空を移動する空島が存在している。それは心というものを具現化し、力として動力源に使用するためのものだ。
ただ、ここまで大規模だと、それだけとは言い切れない。他に機能があってもおかしくはない。
「その島を落としたとなると、何か空島で不具合が起こっていてもおかしくは無いですよね」
「別にいいと思うわ」
「いい気味だ」
何があったかはわからないが、アーク族は相当二人から嫌われているようだ。
「お二人は関係が無いことでしょうが、魔王やら悪魔やら作り出すようになったのは、アーク族の願いである永遠に生きるという何かに不具合が生じたのではないのでしょうか?」
「うーん?あれか?俺が呪いを受けたきっかけの島か?」
モルテ王には何か心当たりがあるようだ。モルテ王が正気を失うほど狂気に苛まれた呪い。
「ちょっとした小競り合いで腹が立って、夜にしかわからない小さくてキラキラ光る島を落としたんだが、あの時は本当にあいつら怒り狂っていたな」
それは、ほとんどが夜と言っていいモルテ国でも、本当の夜が来なければわからないほど、小さすぎて地上からは空島と認識されない大きさだったのだろう。シェリーが空島の残骸をカイルに指摘されなければ、気づかなかったぐらいに小さな島。
「まぁ、小さすぎて地上からぶつけた地面に埋もれてわからなくなってしまったがな」
この話はモルテ王の逸話に出てきた話ではないのだろうか。狂った死の王が村ごと地面を持ち上げて、空に投げつけたと。これは事実と逸話と食い違っている。モルテ王の話からすれば、まだ呪いを受けていない正気だった頃の話だ。
しかしこれも仕方がない。モルテ国は死の国。夜が明けない死の神と闇の神の祝福を得た国なのだ。そこを行き来する者も少なく、いつしか話が歪んで伝わっていったのだろう。
「あら?そんな島があったの?私知らなかったわ」
「所詮、島の残骸か何かだったのだろう」
空島の知識をもつエリザベートでも知らない島があったようだ。ただ、モルテ王もあまりにも小さい島だったので、島の残骸と決めつけていた。
「あの?エリザベート様がご存知でないとすれば、アーク族の中でも重要施設だった可能性はないのですか?」
アーク族の中でも一般的に知られてはいない場所。となれば、エリザベートが知っていなくても納得できる。他の者には知られることを避け、秘密にすべき場所。
もし、これがエリザベートが居場所を知らないシュロス王の島だったとすればどうだろう。
永遠を具現化した王が地上に落ちてしまったとしたら、彼らの信仰心とシュロス王の永遠という言葉が、揺らいでしまうことになるのでは、ないのだろうか。
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