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27章 魔人と神人

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「まぁ、そういうことだね。僕は一番偉いからね。全てのモノに平等なんだよ」

 白き神は平等とは言いつつも、何度もシェリーの目の前に現れていることから、特別視していることがうかがい知れる。

「ただ、僕が創り出していないモノは論外だけどね」

 白き神が作り出していないものとはなんだろうか。結局のところ、魔物も魔人も人の悪心の影響を受けたモノであり、元々はこの世界に存在していたものだ。悪魔と呼ばれる者達も元々はこの世界の住人。
 ならばそれは何を指すのか。

「悪魔のことですか?」

 シェリーは元はこの世界の住人である者たちが変化した次元の悪魔や完全体の悪魔のことかと尋ねる。それは白き神が言った言葉と違うと思われるが、シェリーは疑問として口にはしているものの、言葉の強さには確信めいたものが垣間見える。

「それと魔王かな?」

 白き神はニヤニヤと笑みを浮かべながら、シェリーと同じく疑問を投げかけるように口にはしている。それはシェリーの言葉を肯定しているように思えた。

「ここまで真実にたどり着いご褒美に、一つ教えてあげるよ」

 白き神は褒めてあげると言っても否定してくるシェリーに褒美として情報をあげようと言った。これは物や加護では決してシェリーは喜ばないことを確信しているからだ。

「思っていた以上に早く、魔王と呼ばれるモノができてしまったね」

「魔王ができた?」

 白き神はミゲルロディアが予想していたことを事実として口にした。神という存在が魔王の存在を口にしたのだ。それは絶対的な確定。

 それも『魔王と呼ばれるモノができてしまった』と言ったのだ。その事にシェリーは眉を顰める。
 一度だけその鱗片を見つけたことはあるが、オリバーによるとそれは不完全なモノだと言っていた。
 ならば、別の何かによって魔王と成ったモノがいるということだ。

「それは誰ですか?」

 シェリーは元の人物は誰かと聞いた。前回の魔王はグローリア国の第二王子だったのだ。では今回もそれなりの人物であろうと予想ができる。
 何故なら、各国の首都に次元の悪魔を送り込むという普通では考えられないことを成したのだ。まるで世界に対して宣戦布告をするように。

「それを調べて対処するのは、聖女である君の役目だね」

 白き神は全てのモノを慈しむような笑顔で、シェリーに言った。その言葉にシェリーは舌打ちをする。結局この存在は、いつも肝心なことを言わないと。

「ちっ!それは褒美でもなんでもないではないですか。その辺りは現状から予想していました」

「そうかな?僕は予想よりも早く・・と言ったんだよ。その意味はわかるかな?」

 誰が何を言おうと、白き神はこの世界の創造主である。ということは、全てを見通すことも可能だということだ。黒のエルフのアリスのような未来視もだ。

その白き神が知り得たことが早まったと言っている。これが何を意味するのか……。

「不可解な要素があると言っています?」

 シェリーは白き神の干渉を受けない要因が加わったのかと尋ねる。そのような存在はこの世界では数えるほどとなる。

「しかし、そもそも悪魔という存在は、貴方の管理外のモノですよね」

 その一つが30年前から出現が見られた悪魔という存在だ。次元の悪魔も完全体の悪魔も、人の悪の心を取り入れ、その身を変化させたものなのだ。それは予想が外れても仕方がないものだろう。

「うーん?正確にはそうでもないかな?君たちが『次元の悪魔』と言っている存在は何かな?」

 白き神はシェリーの言葉を曖昧に否定した。そして次元の悪魔とは何かと聞いてきたのだ。

 次元の悪魔。それは、人が何らかの要因により力を得て、次元の悪魔に成り果てること。ただ、詳しいことは、現段階ではわからない。これもまた仮説でしかない。

「元は人だということはわかっています」

「そうだね。では『完全体の悪魔』と呼んでいる者たちは?」

「ダンジョンのエネルギーを得たアーク族の成れの果てです」

「うんうん。そうだね。ダンジョンの力もアーク族もこの世界に元から存在していた者が進化しただけ、そう君たちのようにね」

 白き神は白い花が咲き乱れる地面に伏しているラフテリアに視線を向けた。

「ただ、元から存在していた者たちではないから、不確定要素はあることにはかわりないけど、僕は君たちを否定することはない」

 否定することはない。それは魔人であるラフテリアにとって、感極まることだった。番であるロビンを苦しめた者たちに、己に与えられた役目を踏み潰した者たちに死という恐怖を与え、死ぬことがない狂気を与え、人々から恐れられ、存在そのものを抹消されたラフテリアにとって、救いだった。
 敬愛する白き神からの言葉に声も無く、ただ黒きなまこから涙がこぼれおちる。元は新緑のような鮮やかな緑色だった瞳は見る影もない。そんな変わり果てた姿を己を神が認めてくれた。

 泣き震えるラフテリアを側にいるロビンは愛おしく優しく肩を抱くのだった。


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