635 / 796
26章 建国祭
622
しおりを挟む
「ミゲルロディア大公閣下は、既に魔王が存在していると結論つけましたよ」
シェリーの爆弾発言にイーリスクロムの声が室内に響き渡る。
『君はあと数年は猶予があると言っていたはずだ!』
「正確には5年以内です」
イーリスクロムの曖昧な言い方にシェリーは訂正をする。それも魔王の情報を与えたのが白き神ということで、それなりの信用性はある。
「何事にも予想外はつきものです。一国を治める者であるなら、柔軟な対応をしていただきたいですね」
その言葉にイーリスクロムのため息が白い板から聞こえてきた。
『はぁ。僕のように試行錯誤しながら国を治めている者を、そこにいる御仁方と比べないで欲しい』
「だから、教えているではないですか。前回はグローリア国が主導で動いたのですよね。では、今回はどの国が主導権を握りますか?」
魔王という強敵に向かうために国々をまとめ上げる中心となる国はどこかとシェリーは問いかける。
「ラース公国ですか?しかし、ラース公国は戦える組織はありません。ギラン共和国ですか?あの国はきっと今回も守りに徹するでしょうね。フェクトス総統閣下もシド総帥閣下も自国のことには熱心ですが、他のことに気が回るタイプではありません」
シェリーは口にはしないが、マルス帝国は論外であり、炎国もわざわざ大陸に人員を派遣してまで、魔王という存在と戦おうとはしないだろう。強いて言うのであれば、シェリーが炎王を引っ張り出してくるぐらいだ。
「だったら、どこが指導権を握らなければならないかわかりますよね」
『頭ではわかっているよ。でも、すべきことがありすぎるんだよ』
「以前から言っているように、この期に命令系統を1本化すべきです。それともクロードさんにおんぶに抱っこしてもらわなければ、立てませんか?」
シェリーはイーリスクロムに対して、死人の手を借りなければ、何もできないのかと、嫌な言い方をした。
『君にはわからないだろうが、正論を言っても、できることとできないことがあるんだよ』
国という巨大なものを動かすのであれば、正しいことばかりで進めない。そこには人の思惑が絡み合って、一筋縄ではいかないものだ。
「佐々木さん。web会議できないだろうか」
シェリーとイーリスクロムの平行線の話に、炎王が別のやり方はどうだと提案してきた。
「炎王。ネット回線はありませんよ」
シェリーの鋭い一言でぶった切られる。そのことに炎王は苦笑いを浮かべた。インターネットが存在しないことぐらい理解していると。
「あの発明家のユーフィア・ナヴァルなら、カメラと映し出すモニターぐらい作れるんじゃないのか?」
『ドラゴンの瞳と幻視蝶の鱗粉があれば、できますよ』
突然、ここには居ない人物の声が聞こえてきた。
「ユーフィアさん。盗聴は犯罪です」
『シェリーさん。法整備はされていないので、法律では罰せられません』
シェリーとイーリスクロムの通信を傍受していたユーフィアだった。確かに通信に関する法律がなければ、罰則規定に引っかからない。
『そちらに、どのような方がいらっしゃるか存じませんが、私はユーフィア・ナヴァルと申します。国王陛下。通信に割り込んでしまって申し訳ありません。説明書だけ渡して保留機能を言わなかったのは落ち度でした。これは私の責任ですので、謝罪させていただきます。すみませんでした』
ユーフィアは始めから通信を傍受して、聞いていたようだ。
『勿論、作らせていただきますが、先程言った素材がないので、厳しいですわ。それをいくつ作ればいいのですか?20個「ユーフィアさん」……つい、興奮してしまいました』
ユーフィアのいつも通りのテンションで、物作りの意欲を押し出した言葉をシェリーは遮る。このままだと、話し合いも何も出来ないと。
「ユーフィアさん。それは後で話し合うので、黙って盗聴に専念しておいてください」
「佐々木さん。もう少し言い方というものがあると思う」
シェリーの犯罪臭い言葉に炎王がたしなめる。別の言い方というものがあるだろうと。
「炎王。ユーフィアさんはただ単に、通信の長距離での安定性を調べているだけだと思うのでそれでいいのですよ」
『あら?シェリーさん。あとは高い山脈は障害になるのかと、どれぐらいの期間一回で通信し続けられるかですわね』
シェリーの言葉に補足をいれるユーフィア。確かにラース公国とシーラン王国の間には高い山脈がある。普通であるなら、衛生通信をすべきところだ。
「という感じですのでいいのです」
「佐々木さんの口の悪さに動じないのならそれでいいか。ああ、それでweb会議だと物だけを送って、決められた日の時間に魔道具を起動させれば、国主となる者たちが自国に居ながら、議会を開ける。説明が一度で済むだろう」
『では、それで行こう』
炎王の説明が一度ですむという言葉にイーリスクロムは、即決したのだった。
シェリーの爆弾発言にイーリスクロムの声が室内に響き渡る。
『君はあと数年は猶予があると言っていたはずだ!』
「正確には5年以内です」
イーリスクロムの曖昧な言い方にシェリーは訂正をする。それも魔王の情報を与えたのが白き神ということで、それなりの信用性はある。
「何事にも予想外はつきものです。一国を治める者であるなら、柔軟な対応をしていただきたいですね」
その言葉にイーリスクロムのため息が白い板から聞こえてきた。
『はぁ。僕のように試行錯誤しながら国を治めている者を、そこにいる御仁方と比べないで欲しい』
「だから、教えているではないですか。前回はグローリア国が主導で動いたのですよね。では、今回はどの国が主導権を握りますか?」
魔王という強敵に向かうために国々をまとめ上げる中心となる国はどこかとシェリーは問いかける。
「ラース公国ですか?しかし、ラース公国は戦える組織はありません。ギラン共和国ですか?あの国はきっと今回も守りに徹するでしょうね。フェクトス総統閣下もシド総帥閣下も自国のことには熱心ですが、他のことに気が回るタイプではありません」
シェリーは口にはしないが、マルス帝国は論外であり、炎国もわざわざ大陸に人員を派遣してまで、魔王という存在と戦おうとはしないだろう。強いて言うのであれば、シェリーが炎王を引っ張り出してくるぐらいだ。
「だったら、どこが指導権を握らなければならないかわかりますよね」
『頭ではわかっているよ。でも、すべきことがありすぎるんだよ』
「以前から言っているように、この期に命令系統を1本化すべきです。それともクロードさんにおんぶに抱っこしてもらわなければ、立てませんか?」
シェリーはイーリスクロムに対して、死人の手を借りなければ、何もできないのかと、嫌な言い方をした。
『君にはわからないだろうが、正論を言っても、できることとできないことがあるんだよ』
国という巨大なものを動かすのであれば、正しいことばかりで進めない。そこには人の思惑が絡み合って、一筋縄ではいかないものだ。
「佐々木さん。web会議できないだろうか」
シェリーとイーリスクロムの平行線の話に、炎王が別のやり方はどうだと提案してきた。
「炎王。ネット回線はありませんよ」
シェリーの鋭い一言でぶった切られる。そのことに炎王は苦笑いを浮かべた。インターネットが存在しないことぐらい理解していると。
「あの発明家のユーフィア・ナヴァルなら、カメラと映し出すモニターぐらい作れるんじゃないのか?」
『ドラゴンの瞳と幻視蝶の鱗粉があれば、できますよ』
突然、ここには居ない人物の声が聞こえてきた。
「ユーフィアさん。盗聴は犯罪です」
『シェリーさん。法整備はされていないので、法律では罰せられません』
シェリーとイーリスクロムの通信を傍受していたユーフィアだった。確かに通信に関する法律がなければ、罰則規定に引っかからない。
『そちらに、どのような方がいらっしゃるか存じませんが、私はユーフィア・ナヴァルと申します。国王陛下。通信に割り込んでしまって申し訳ありません。説明書だけ渡して保留機能を言わなかったのは落ち度でした。これは私の責任ですので、謝罪させていただきます。すみませんでした』
ユーフィアは始めから通信を傍受して、聞いていたようだ。
『勿論、作らせていただきますが、先程言った素材がないので、厳しいですわ。それをいくつ作ればいいのですか?20個「ユーフィアさん」……つい、興奮してしまいました』
ユーフィアのいつも通りのテンションで、物作りの意欲を押し出した言葉をシェリーは遮る。このままだと、話し合いも何も出来ないと。
「ユーフィアさん。それは後で話し合うので、黙って盗聴に専念しておいてください」
「佐々木さん。もう少し言い方というものがあると思う」
シェリーの犯罪臭い言葉に炎王がたしなめる。別の言い方というものがあるだろうと。
「炎王。ユーフィアさんはただ単に、通信の長距離での安定性を調べているだけだと思うのでそれでいいのですよ」
『あら?シェリーさん。あとは高い山脈は障害になるのかと、どれぐらいの期間一回で通信し続けられるかですわね』
シェリーの言葉に補足をいれるユーフィア。確かにラース公国とシーラン王国の間には高い山脈がある。普通であるなら、衛生通信をすべきところだ。
「という感じですのでいいのです」
「佐々木さんの口の悪さに動じないのならそれでいいか。ああ、それでweb会議だと物だけを送って、決められた日の時間に魔道具を起動させれば、国主となる者たちが自国に居ながら、議会を開ける。説明が一度で済むだろう」
『では、それで行こう』
炎王の説明が一度ですむという言葉にイーリスクロムは、即決したのだった。
10
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる