番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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26章 建国祭

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「そんな私の話など、どうでもよいではないですか」

 シェリーはスキル創造の構築のことをバッサリと切る。思ったとおりのものができあがらないスキルに四苦八苦した話など、シェリーだけが知っていればいいことだと。

「私が問題定義したいのは、帝国からの攻撃だと思われたあとに、次元の悪魔の襲撃があったことです」

 マルス帝国からの攻撃と確定できないのは遠方の国の出身者であろう奴隷たちで構成された集団からの攻撃であり、例え奴隷から解放されても、どこの誰からの指示を受けたとは、本人たちは知らない可能性もある。
 そして、既にマルス帝国の者たちは王都メイルーンから引き上げ、捕まえて聞き出すことも出来ないのだ。

「たまたまだったとは、考えられないのか?」

 炎王が偶然にも襲撃の日が重なったのではないのかと、指摘する。
 今回の襲撃された日というのは、新年が明けた数日後。まだ人々が浮かれており、祝の雰囲気が抜けきらない現状で起きている。
 特に王都メイルーンは建国祭の初日という、人々が国中から集まるイベントが重なったのだ。

 例えばだ。魔王というモノが存在し、年が明けて人々が浮かれて油断しているときを狙って世界中に宣戦布告した。
 マルス帝国は毎年行われている建国祭の人々がごった返している時期を狙って襲撃してきた。
 この二つの組織の意図はバラバラであり、たまたま王都メイルーンの襲撃に重なってしまったのではないのか。
 炎王はそう言いたいのだろう。

「否定はしません。結局のところ魔導弾はただの鉄の破片の散弾攻撃でしたので、獣人の人々に怪我を負わすことはありませんでしたから」

「ふむ。種族の壁は大きい。もしその魔導弾というものが、公都グリードでばらまかれていれば、大惨事になっていたことだろう。しかし、帝国がそこで介入する意図がわからぬ」

 ミゲルロディアはシェリーの言葉に一定の理解は示したものの、魔王と帝国が手を組んだとすることには疑問を投じた。

「人々に再び30年前の恐怖を植え付けるのであれば、次元の悪魔の複数体襲撃だけでよいだろう。突然の襲撃は我々を混乱に陥れるには十分であった」

 何も予兆がなく、突如として上空に次元の穴があけば、それだけで人々の恐怖心は30年前の討伐戦を思い出させることになるだろう。
 だが、これはその時代を生きた者たちにしか通じない。

「人族にとっての30年と獣人にとっての30年は違うと思います。この30年間の間に生まれた者たちにとっては、空に次元の穴が複数空いていても、何だろうと見上げ、それが何だとは気が付かなかったのではないのですか?」

 シェリーはオリバーから話を聞いていたものの、初めて次元の悪魔が空間を割ってでてきたのを目視したのは、ほんの最近のこと。多くの若者は歴史として、次元を割いて世界に侵入してくるとは聞いていても実際に目にしたものと、想像していた感じとは違っていれば、それが敵の襲撃とは思わないのではないのだろうか。

「炎王は言っていましたよね。首都ミレーテは吹雪いており、ユールクスさんではないと対処ができなかったと。ということは、ギラン共和国は吹雪で敵の襲撃に気づかず、突如襲撃されることになっていたのではないのですか?」

 シェリーの言葉に、炎王は目を見開く。確かにダンジョンマスターのユールクスに確認をとって、その時に思ったことを口にした。ユールクスではないと対処が難しかっただろうと。

「と考えれば、王都メイルーンへの攻撃は何の意図があったか、わかるのではないのですか?」

「あの国は軍がかなりの力の保持をしている。ミサイル攻撃をしたのはブラフの意味があり、その攻撃を沈静化されるのも織り込み済み、攻撃された混乱を収めようとしているところに、本命を投入したと、佐々木さんは言いたいのか?」

「ええ、そうです」

「下に目を向けていれば、上空からの襲撃は脅威的ということか」

「少し、訂正を入れるとすれば、魔導弾の沈静化は帝国が思っていたよりも早かったのではないのでしょうか?軍の師団長三人には散々脅しをかけていましたので」

 三人というのは、わざわざ言うことではないが、第6師団長のクストと第5師団長のヒューレクレトと第3師団長の……いや、第0師団長のツヴェークの三人ということだ。そのシェリーの言葉に、炎王は『普通は軍の師団長クラスは脅さないからな』と突っ込んでいる。

「帝国の予定では魔導弾の攻撃の最中に、次元の悪魔が襲撃してくる予定だったのではと、私は推測します」

 これは、シェリーが飛び出して行ってしまったために、大元を叩くように言ったカイルの機転だ。そうでなければ、軍としては誰があるじかわからない奴隷に、おいそれと攻撃をすることはない。
 奴隷に攻撃したとなると、そのあるじに対しても攻撃したと捉えかねない。この場合は、あるじを通して攻撃を止めされるのが、一般的な常識だった。




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