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26章 建国祭
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ルークは始まって半刻ですでに飽きていた。ルークの目の前に繰り広げられているのは、グループごとに分けられた者たちがロイヤルバトル形式で戦い最後まで残っていた者が午後の第2予選に進むというものだった。
何故、ルークが飽きてしまっているのか。それは、ルークの目が超えてしまっているからだった。
ここで戦いを繰り広げている者たちは、己の力に自信を持っている者たちで間違いはない。だた、冒険者でいうところの精々Bランクがいいとろだろう。
ルークの父親はグローリア国の魔導師長を務めた超越者のオリバーだ。そして、姉のシェリーは白き神からチート級のスキル創造を得ていたために、ルークが物心ついた頃には既に普通を逸脱した姉だった。そんな家族を持つルークにとっては、自分に足りないものが何か得るものがあるかと期待していた分、落胆も酷かったのだった。
「ミュゼル先輩。これのどこが楽しいのですか?」
思わずルークは聞いてしまった。周りの熱狂している者たちが理解できないと言わんばかりに。
「ん?だから、賭け事に良いんだ。ほら、例えばあの熊獣人なんかさぁ……」
ミュゼルがこの闘技場に着いてから賭け事の話しかしていないと思えば、一般の部では賭け事をするぐらいしか意味を見いだせないと言うことだったのだ。そう、ミュゼルはクストの息子であり、初代傭兵団長であったマリアがナヴァル公爵家に仕えているのだ。彼もまた普通の学生としては逸脱した力を身に着けていたのだった。
だからだろう。ルークとミュゼルが共にいることになったのは。
ルークはミュゼルの賭けることを勧める人物の説明を聞き流しながら、ふと空を見上げた。
空を移動する空島が今日はよく見えると、そんなどうでもいいことを考えていた。その空に何かキラリと星のように輝くものが見えたような気がした。昼間なのに星が見える?
そんなおかしなことをルークが思っていると、そのきらめきが大きくなり、煌めきが空一面に……ルークが空の輝く物体に気を留めていると、闘技場の一部が爆発した。何が起こったのかと光から目を離し、爆発がした場所をみれば、砂埃が舞い上がっていた。何が起こったのだろうと疑問に思っていた次の瞬間、再び近くの観客席の方から爆発音が聞こえ、悲鳴が上がる。
「おい!ルークここはヤバい」
腕を掴まれミュゼルから立ち上がるように引っ張られることに眉を潜めながらミュゼルを見ると、ミュゼルは空を唖然として見つめている。
ルークも同じ視線を空に向けると、何かよくわからない煌めく物がこちらに向かってきているところが見えた。
そして、空気を掠める音に続き、次々と観客席に落ちて爆発する音が周りで響いている中、ルークとミュゼルは固まって空を見つめている。悲鳴と爆音という異常事態が更に彼らを行動不能にさせていく。
そして、二人の目にはどう見ても避けようがない距離感に不可解な何かが迫って来ていると映る。
ルークはその初めて見る理解できない物に対して目を瞑って衝撃に耐えようとした。目を瞑って身を固くし暗くなった視界が更に何かに日を遮られるように暗くなり、ふわりと甘い匂いが鼻をかする。しかし、来るはずの衝撃がいくら経っても訪れない。
ルークは恐る恐る瞼を開け、ピンクの瞳が捉えたものは……
「ねえ……さ……ん」
黒髪が視界を占めていた。
「ねえさん!ねえさん!おねえちゃん!う……うでが‼」
ルークからはシェリーの背中しか見えないが確実にシェリーの右腕が肘から先が無く、足元に血溜まりが出来ていた。
「るーちゃん大丈夫?怪我は無かった?るーちゃんはおねえちゃんが守るから側にいるのよ?」
そう言って振り返るシェリーの顔は穏やかな笑顔だが、左目が閉じておりそこからは血の涙が流れていた。
そう足元の血溜まりは腕一本にすれば多い量の出血だった。ルークからは見えないが、かなりの傷を負っているようだ。
「シェリー!」
怒っているようで、動揺しているようなカイルの声が聞こえたかと思えば、シェリーの前にはカイルの姿が存在していた。
「早く治癒を!」
シェリーに自分の治癒をするように促すも、シェリーは首を横に振る。戦いの場で治療行為は相手に隙を見せる行為のため、シェリーは頑なに自分自身での治癒を拒んだ。そうここにはルークがいる。ならば抜いた剣を下ろすような行為はシェリーはしない。
「シェリー。腕を持ってきたから早く付けてくれ。頼む」
カイルの次にオルクスが現れ、切り離されたシェリーの肘から下の腕を探し出していた。そして、少年二人を睨みつける。
「おい!青狼のクソガキ。ルークを連れて頑丈な建物まで突っ走れ!それぐらい出来るだろ!」
殺気が混じった言葉にミュゼルは無言でコクコクと頷き、ルークの手を取る。しかし、ルークが動く様子はない。
「ミュゼル先輩!姉さんが!」
あまりの事にルークはシェリーの側を離れないとミュゼルの手を振り払った。しかし、そんなルークに冷たい声が降り注ぐ。
「ルーク。君がいるとシェリーが動けない。さっさと避難しろ。青狼。ルークを抱えて立ち去れ!」
カイルは怒りが混じった視線をルークに向け、その視線をそのままミュゼルに向けた。
カイルとオルクスから己を否定するような視線を向けられたミュゼルは暴れるルークを肩に担いで、駆け出した。獣人のミュゼルに力では敵わないルークはシェリーの血にまみれた姿を目に映しながら遠ざかっていく。
新しく改築した校舎はちょっとやそっとでは壊れない構造になったことをミュゼルは思い出し、騎士養成学園に戻って行ったのだった。
何故、ルークが飽きてしまっているのか。それは、ルークの目が超えてしまっているからだった。
ここで戦いを繰り広げている者たちは、己の力に自信を持っている者たちで間違いはない。だた、冒険者でいうところの精々Bランクがいいとろだろう。
ルークの父親はグローリア国の魔導師長を務めた超越者のオリバーだ。そして、姉のシェリーは白き神からチート級のスキル創造を得ていたために、ルークが物心ついた頃には既に普通を逸脱した姉だった。そんな家族を持つルークにとっては、自分に足りないものが何か得るものがあるかと期待していた分、落胆も酷かったのだった。
「ミュゼル先輩。これのどこが楽しいのですか?」
思わずルークは聞いてしまった。周りの熱狂している者たちが理解できないと言わんばかりに。
「ん?だから、賭け事に良いんだ。ほら、例えばあの熊獣人なんかさぁ……」
ミュゼルがこの闘技場に着いてから賭け事の話しかしていないと思えば、一般の部では賭け事をするぐらいしか意味を見いだせないと言うことだったのだ。そう、ミュゼルはクストの息子であり、初代傭兵団長であったマリアがナヴァル公爵家に仕えているのだ。彼もまた普通の学生としては逸脱した力を身に着けていたのだった。
だからだろう。ルークとミュゼルが共にいることになったのは。
ルークはミュゼルの賭けることを勧める人物の説明を聞き流しながら、ふと空を見上げた。
空を移動する空島が今日はよく見えると、そんなどうでもいいことを考えていた。その空に何かキラリと星のように輝くものが見えたような気がした。昼間なのに星が見える?
そんなおかしなことをルークが思っていると、そのきらめきが大きくなり、煌めきが空一面に……ルークが空の輝く物体に気を留めていると、闘技場の一部が爆発した。何が起こったのかと光から目を離し、爆発がした場所をみれば、砂埃が舞い上がっていた。何が起こったのだろうと疑問に思っていた次の瞬間、再び近くの観客席の方から爆発音が聞こえ、悲鳴が上がる。
「おい!ルークここはヤバい」
腕を掴まれミュゼルから立ち上がるように引っ張られることに眉を潜めながらミュゼルを見ると、ミュゼルは空を唖然として見つめている。
ルークも同じ視線を空に向けると、何かよくわからない煌めく物がこちらに向かってきているところが見えた。
そして、空気を掠める音に続き、次々と観客席に落ちて爆発する音が周りで響いている中、ルークとミュゼルは固まって空を見つめている。悲鳴と爆音という異常事態が更に彼らを行動不能にさせていく。
そして、二人の目にはどう見ても避けようがない距離感に不可解な何かが迫って来ていると映る。
ルークはその初めて見る理解できない物に対して目を瞑って衝撃に耐えようとした。目を瞑って身を固くし暗くなった視界が更に何かに日を遮られるように暗くなり、ふわりと甘い匂いが鼻をかする。しかし、来るはずの衝撃がいくら経っても訪れない。
ルークは恐る恐る瞼を開け、ピンクの瞳が捉えたものは……
「ねえ……さ……ん」
黒髪が視界を占めていた。
「ねえさん!ねえさん!おねえちゃん!う……うでが‼」
ルークからはシェリーの背中しか見えないが確実にシェリーの右腕が肘から先が無く、足元に血溜まりが出来ていた。
「るーちゃん大丈夫?怪我は無かった?るーちゃんはおねえちゃんが守るから側にいるのよ?」
そう言って振り返るシェリーの顔は穏やかな笑顔だが、左目が閉じておりそこからは血の涙が流れていた。
そう足元の血溜まりは腕一本にすれば多い量の出血だった。ルークからは見えないが、かなりの傷を負っているようだ。
「シェリー!」
怒っているようで、動揺しているようなカイルの声が聞こえたかと思えば、シェリーの前にはカイルの姿が存在していた。
「早く治癒を!」
シェリーに自分の治癒をするように促すも、シェリーは首を横に振る。戦いの場で治療行為は相手に隙を見せる行為のため、シェリーは頑なに自分自身での治癒を拒んだ。そうここにはルークがいる。ならば抜いた剣を下ろすような行為はシェリーはしない。
「シェリー。腕を持ってきたから早く付けてくれ。頼む」
カイルの次にオルクスが現れ、切り離されたシェリーの肘から下の腕を探し出していた。そして、少年二人を睨みつける。
「おい!青狼のクソガキ。ルークを連れて頑丈な建物まで突っ走れ!それぐらい出来るだろ!」
殺気が混じった言葉にミュゼルは無言でコクコクと頷き、ルークの手を取る。しかし、ルークが動く様子はない。
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あまりの事にルークはシェリーの側を離れないとミュゼルの手を振り払った。しかし、そんなルークに冷たい声が降り注ぐ。
「ルーク。君がいるとシェリーが動けない。さっさと避難しろ。青狼。ルークを抱えて立ち去れ!」
カイルは怒りが混じった視線をルークに向け、その視線をそのままミュゼルに向けた。
カイルとオルクスから己を否定するような視線を向けられたミュゼルは暴れるルークを肩に担いで、駆け出した。獣人のミュゼルに力では敵わないルークはシェリーの血にまみれた姿を目に映しながら遠ざかっていく。
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