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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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「オルクスさん。武神アルマ様に叱られて、落ち込んでいたのではないのですか?」
シェリーは獣人という者はすぐに目先のことに囚われると、オルクスをジト目でみる。先程まで項垂れていたようには全く見えないオルクスは、解き放たれた弓矢の如くシェリーの方に向かっていくが、オルクスがシェリーに触れる寸前に目の前から消えた。
「カイルてめぇ!」
キッチンから出てきたカイルにシェリーは抱えられていた。オルクスはカイルを睨みつけているが、そのカイルはオルクスに何か怒っているような視線を向けている。
「オルクス。さっきから、わがままが過ぎるのではないのか」
わがまま。確かにわがままと言われれば、自分勝手なことを口にしているオルクスだが、獣人とは些か本能が勝るときがある。だから、この国の国王であるイーリスクロムも苦労しているのだが。
「ルーク。ルークの夕食は用意できているから先に食べているといい。貴殿はどうされる?」
いつもなら、シェリーが言うセリフをカイルが言った。どうしたのだろうか。そして、ルークの前だからだろうか。炎王の名を伏せて炎王に夕食を食べるのかと尋ねた。
「俺はリオンを連れてきただけだから、帰るよ。長居すると怒られるからな」
炎王は元々リオンを送り届けただけなので、夕食は食べないと断る。そして、長居して怒るのはもちろん陽子だ。
しかし、その炎王を引き止める者がいた。
「え?エンさん。この剣の使い方を教えて欲しいのだけど」
炎王から火が出ると言われていたけれども、全く持って火が出ない剣の使い方を知りたいルークだ。
「ん?使い方?普通の剣と同じだけどなぁ」
炎王はルークの持っていた剣を手にとって、鞘から抜いて片手で下段に構える。すると赤い剣身に赤い炎が纏わりつくように現れた。そして、その赤い炎を消すように鞘に収めていく。
「ほら、使い方も何もないだろう?」
それはまるで剣を鞘から抜けば、剣身に赤い炎がまとうという感じに見えなくもない。だが、それは普通ではないのだ。チート過ぎる炎王だから息をするようにできるだけで、ルークには再現することができない。
「うっ!じゃ俺は用は済んだから帰る。佐…シェリーさん、良いお年を」
炎王はシェリーの返事をまたずに、さっさとダイニングから出ていった。恐らく陽子から早く出ていけというクレームが入ったのだろう。
ルークが居なければ、陽子が側に居て炎王によって引き起こされる不具合を最小限に押さえることができるが、ルークが居るのであれば、用が終わればさっさと出ていけと言われたと推測できた。
ルークは炎王から返された剣を抜いてみるものの、先程のような赤い炎が出ることもなく、鋭い赤い剣身が顕になっているだけだ。
「ルーク。その剣に認めてもらわなければ、扱い切ることはできない。基本的に実力が足りないのだ」
カイルは魔剣を扱うためには、ルークの実力ではまだ無理だと言った。そして、シェリーを下におろし、オルクスに視線を向け、その胸ぐらを掴んでそのまま引きずって行く。
「おい!カイル!離せ!」
オルクスが抵抗しているが、獣人と竜人の差は歴然の上に、レベルが倍程もあるカイルには敵うことはなく、なすがままに引きずられて行っている。そして、リビングの扉を開けたと思えば、その内側にオルクスを放り込んだ。
グチグチと文句があるのであれば、自ら獣王神に願い出でればいいということなのだろう。
そして、振り返ったカイルはいつものようにニコニコとした笑顔になり言った。
「シェリー。夕食にしようか」
と。元々は多めに用意をしている夕食の大半がオルクスの腹の中に収まってしまうため、オルクスがいないとなると、このまま食事を始められるとカイルは言っているのだ。
いつもはこのようなことはないのに、何かがカイルの琴線に触れて怒っているのだろう。
ルークを前にしたシェリーはニコニコと笑顔を浮かべて食事をしているが、カイルに実力不足と言われたルークは機嫌が悪そうにしている。
シェリーの隣ではニコニコと笑みを浮かべているものの、機嫌が悪い感じがありありとわかるカイルがおり、その向かい側にはチラチラとリビングの方に心配そうな視線を向けているグレイ。そして、グレイの隣にリオンが席につき、向かい側にスーウェンがいる。
スーウェンはというと、何があったのか理解出来ていないので、若干カイルから距離を取るように椅子の位置が少しズレていた。
「あの?何があったのか説明してもらえないのですか?」
この異様な空気に我慢ができなくなったスーウェンが誰とは名指しせずに尋ねる。感覚的にはカイルの聞くのが一番よさそうなのだが、あまり触れたくないというのが、態度的にありありと見て取れたのだった。
_______________
その頃炎国に帰ってきた炎王。
「あ?」
「どうされました?エン様」
「いや、おかしな称号が増えていると思ってな」
「なになに?何がおかしいのー?エン!」
「『アルマちゃんの酔拳』ってなんだ?俺は酔拳なんて使ったことないぞ!」
「まぁまぁ、エンさん。武神アルマ様に気に入られたのですね」
「俺は酒を渡しただけだ!それで酔拳はないだろう!」
「エン。お酒飲んでみる?」
「ヴィーネ。酔拳なんて使わないぞ」
_______________
いつも読んでいただきましてありがとうございます。
ななな……なんと!この話で25章が200話に!!!おかしい。冬休みが一年経っても終わらなかった。
多分25章のサブタイトル分けをもう一つ作ると思います。もうすぐ25章も終わるといいながら、全く終わらない。いつまで経っても正月を迎えられない。いい加減に建国祭の話に行きたいです(¯―¯٥)
シェリーは獣人という者はすぐに目先のことに囚われると、オルクスをジト目でみる。先程まで項垂れていたようには全く見えないオルクスは、解き放たれた弓矢の如くシェリーの方に向かっていくが、オルクスがシェリーに触れる寸前に目の前から消えた。
「カイルてめぇ!」
キッチンから出てきたカイルにシェリーは抱えられていた。オルクスはカイルを睨みつけているが、そのカイルはオルクスに何か怒っているような視線を向けている。
「オルクス。さっきから、わがままが過ぎるのではないのか」
わがまま。確かにわがままと言われれば、自分勝手なことを口にしているオルクスだが、獣人とは些か本能が勝るときがある。だから、この国の国王であるイーリスクロムも苦労しているのだが。
「ルーク。ルークの夕食は用意できているから先に食べているといい。貴殿はどうされる?」
いつもなら、シェリーが言うセリフをカイルが言った。どうしたのだろうか。そして、ルークの前だからだろうか。炎王の名を伏せて炎王に夕食を食べるのかと尋ねた。
「俺はリオンを連れてきただけだから、帰るよ。長居すると怒られるからな」
炎王は元々リオンを送り届けただけなので、夕食は食べないと断る。そして、長居して怒るのはもちろん陽子だ。
しかし、その炎王を引き止める者がいた。
「え?エンさん。この剣の使い方を教えて欲しいのだけど」
炎王から火が出ると言われていたけれども、全く持って火が出ない剣の使い方を知りたいルークだ。
「ん?使い方?普通の剣と同じだけどなぁ」
炎王はルークの持っていた剣を手にとって、鞘から抜いて片手で下段に構える。すると赤い剣身に赤い炎が纏わりつくように現れた。そして、その赤い炎を消すように鞘に収めていく。
「ほら、使い方も何もないだろう?」
それはまるで剣を鞘から抜けば、剣身に赤い炎がまとうという感じに見えなくもない。だが、それは普通ではないのだ。チート過ぎる炎王だから息をするようにできるだけで、ルークには再現することができない。
「うっ!じゃ俺は用は済んだから帰る。佐…シェリーさん、良いお年を」
炎王はシェリーの返事をまたずに、さっさとダイニングから出ていった。恐らく陽子から早く出ていけというクレームが入ったのだろう。
ルークが居なければ、陽子が側に居て炎王によって引き起こされる不具合を最小限に押さえることができるが、ルークが居るのであれば、用が終わればさっさと出ていけと言われたと推測できた。
ルークは炎王から返された剣を抜いてみるものの、先程のような赤い炎が出ることもなく、鋭い赤い剣身が顕になっているだけだ。
「ルーク。その剣に認めてもらわなければ、扱い切ることはできない。基本的に実力が足りないのだ」
カイルは魔剣を扱うためには、ルークの実力ではまだ無理だと言った。そして、シェリーを下におろし、オルクスに視線を向け、その胸ぐらを掴んでそのまま引きずって行く。
「おい!カイル!離せ!」
オルクスが抵抗しているが、獣人と竜人の差は歴然の上に、レベルが倍程もあるカイルには敵うことはなく、なすがままに引きずられて行っている。そして、リビングの扉を開けたと思えば、その内側にオルクスを放り込んだ。
グチグチと文句があるのであれば、自ら獣王神に願い出でればいいということなのだろう。
そして、振り返ったカイルはいつものようにニコニコとした笑顔になり言った。
「シェリー。夕食にしようか」
と。元々は多めに用意をしている夕食の大半がオルクスの腹の中に収まってしまうため、オルクスがいないとなると、このまま食事を始められるとカイルは言っているのだ。
いつもはこのようなことはないのに、何かがカイルの琴線に触れて怒っているのだろう。
ルークを前にしたシェリーはニコニコと笑顔を浮かべて食事をしているが、カイルに実力不足と言われたルークは機嫌が悪そうにしている。
シェリーの隣ではニコニコと笑みを浮かべているものの、機嫌が悪い感じがありありとわかるカイルがおり、その向かい側にはチラチラとリビングの方に心配そうな視線を向けているグレイ。そして、グレイの隣にリオンが席につき、向かい側にスーウェンがいる。
スーウェンはというと、何があったのか理解出来ていないので、若干カイルから距離を取るように椅子の位置が少しズレていた。
「あの?何があったのか説明してもらえないのですか?」
この異様な空気に我慢ができなくなったスーウェンが誰とは名指しせずに尋ねる。感覚的にはカイルの聞くのが一番よさそうなのだが、あまり触れたくないというのが、態度的にありありと見て取れたのだった。
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その頃炎国に帰ってきた炎王。
「あ?」
「どうされました?エン様」
「いや、おかしな称号が増えていると思ってな」
「なになに?何がおかしいのー?エン!」
「『アルマちゃんの酔拳』ってなんだ?俺は酔拳なんて使ったことないぞ!」
「まぁまぁ、エンさん。武神アルマ様に気に入られたのですね」
「俺は酒を渡しただけだ!それで酔拳はないだろう!」
「エン。お酒飲んでみる?」
「ヴィーネ。酔拳なんて使わないぞ」
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いつも読んでいただきましてありがとうございます。
ななな……なんと!この話で25章が200話に!!!おかしい。冬休みが一年経っても終わらなかった。
多分25章のサブタイトル分けをもう一つ作ると思います。もうすぐ25章も終わるといいながら、全く終わらない。いつまで経っても正月を迎えられない。いい加減に建国祭の話に行きたいです(¯―¯٥)
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