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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「え!じゃ俺はシェリーを守る!」

 そう言ってオルクスは料理をダイニングテーブルに並べ終わったシェリーに抱きつく。

「オルクスさん邪魔です。ご飯はいらないのですか?」

 抱きつかれたシェリーは怪訝そうな表情をしてオルクスを見る。しかし、それでも離れる様子はない。

「それに加護と言うものは簡単には与えられませんよ。獣化できるのはごく一部の人だけなのですから」

 恐らくただ守りたいという気持ちだけではだめなのだろう。女神ナディアが言っていたように獣王神フォルテは滅多に加護を与えないのだから。

「でも、ズルいじゃないか。元々グレイには女神の加護があったのだろう?それなのに獣王神の加護までもらうなんて、これは女神のえこ贔屓じゃないか」

 オルクスはシェリーに抱きついたままグレイに対する愚痴を言いだした。しかし、女神ナディアはこの世界でも白き神に次ぐ力をもっている。その女神の愛し子として生を受けたグレイは特別な存在となるのは仕方がない。

「言っておきますが。オルクスさんはモールニア神の加護を得ていますよ」

 確かにオルクスは加護を得ている。

 シェリーの言葉にオルクスは固まってしまった。己は本当に神の加護を受けたのかと、疑問に感じているのだろう。いや、そもそもモールニアとは何の神なのかと頭に疑問符が飛んでいるのかもしれない。


 そこにダイニングに駆け込んでくる足音が近づいてくる。そして、勢いよく扉が開いた。

「姉さん!ただいま!丁度そこでエンさんに会ったよ」

 顔を覗かせたのは、ライターのところに行っていたルークだ。それもルークの後ろには人の姿をした炎王が確認できる。

「ルーちゃん。おかえりなさい。着替えてきたら夕食にしましょうね」

 シェリーは思いっきり炎王のことは無視をしてルークに笑みを向ける。そして、ルークと言えば、オルクスに抱きつかれている姉の姿を確認できたが、それもまた綺麗にスルーをして、後ろに向かってまた後でと声をかけてルークの姿は消えていった。やはり姉弟というものの行動は、似るのだろうか。

 ルークが去った扉から炎王がダイニングに入ってきて、その後ろからリオンの姿も確認できる。どうやら、問題なく儀式というものを終えたらしいが、外見上は何も変わってはいなさそうだ。

「佐々木さん。約束通りリオンを連れて来た」

「誰も頼んではいませんが?」

 炎王の言葉にシェリーは笑顔から一転、無表情になり答える。しかし、そんなシェリーの態度を気にすることもなく、炎王は疑問に思った事を尋ねた。

「それで佐々木さん。なんだか、普通じゃない感じがするのは気の所為だろうか」

 凄く曖昧な言い方をされた。だから、シェリーは答える。

「気の所為ですよ」

「絶対にソレ嘘だろう!壁の向こう側から普通じゃあり得ない力の塊の存在を感じるじゃないか!」

 そんなシェリーに勿論炎王は突っ込む。この隣の部屋から感じる気配は尋常じゃないと。

「酔っ払いの獣王がいるだけなので、気にしない方がいいですよ。お酒をあるだけ出せと絡まれると思いますので」

「その言葉に凄く嫌な予感しかないな。まぁ、リオンを届けたから俺は帰ることにする」

 ここにはリオンを転移で送って来ただけで、用が終われば帰ろうする炎王に対しシェリーは待ったをかけた。

「炎王。待っていただけますか?」

「なにか他に用があるのか?」

 炎王はシェリーの言葉に首を傾げながら聞いてきた。特に言われることは何もないはずだと。

「オルクスさん。炎王はかなりの神々から加護を得ています。なので、その加護を得るコツというものでも学んでください」

 そう言ってシェリーはオルクス専用のスキルを使って引きはがす。そして、そのままシェリーはキッチンの方に消えていった。リオンが戻ってこようがお構いなしに、夕食の準備を続けるシェリー。
 ルークがダイニングに再び顔を出すまでに、夕食の準備を完璧にするためには、全く関係のない炎王まで利用するのだった。


 シェリーが消え去ったダイニングでは、シェリーに無視されたリオンは、戻ってきた早々色々シェリーに話をしようと思っていたのだが空振りし、意気消沈してしまっている。
 全く関係のない炎王は何を求められているのかさっぱりわからないと困惑の表情を浮かべてた。

「初代様!」

 そんな炎王にオルクスが声をかける。その表情は若干緊張しているようにも見受けられた。シェリーは炎王の事を気軽に利用するが、他の者たちから見れば、炎国を千年に渡って支えてきた偉大なる王だ。
それはいつも飄々としているオルクスも緊張するだろう。

「獣王神からの加護を得るにはどうしたらいいでしょうか?」

 オルクスは回りくどいことを言わずにズバッと聞きたい事を口にした。それを聞かれた炎王はため息を吐きながら答える。

「いや、俺は獣人じゃないからな。獣王神の加護は必要ない」

 最もな答えが返ってきたのだった。

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