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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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グレイは両手に持った双剣を逆手に握り込む。そして、浮遊する不完全なモノのところまで駆けていった。だが、地を駆けるグレイでは到底空中を浮遊するモノに剣など届かない。
そこで、グレイは大きく一歩を踏み出した。その踏み出した足に力を込め空を蹴り上げる。そして、また一歩踏み出す。
するとどうだろう。まるで、空を駆けるように、空中に浮遊するモノに向かっていっているではないか。
これはシェリーの結界のような物を足場にしているのだろうか。いや、違う。ただ単に足の裏に魔力を集め、それを足場として地面ではない空を駆けているのだ。
確かにクストが言っていた。
『俺たち獣人は空を駆けるだけだ』
と。その言葉を見せつけるように、グレイは空を飛ぶモノに向かって駆けていく。そして、双剣を構え斬りかかる。だが、所詮付け焼き刃の行動だ。
空に住まい、空を生きる場所と決めたアーク族の成れの果てに空中戦を挑もうなど愚の骨頂。軽く避けられ、背後から一撃の蹴りを入れられ、地面に落ちていくグレイ。
落ちながらも体勢を整え、空を滑るように惰性を殺し、空中で止まった。そして、再び空を蹴り上げ、出来損ないの悪魔に向かって行く。
別にグレイはがむしゃらに向かって行っているわけではない。勝てる見込めがあると確信して向かっていっているのだ。
確信。なぜそのような物がもてるのか。
グレイはシェリーの番の中では一番弱い存在のため、周りを観察する能力には長けていた。
ギラン共和国で次元の悪魔に対して、手を出さなかったのは、その所為だ。
このモノたちには敵わないと。
だが、今回はグレイは剣を抜き、不完全な悪魔に向かって剣を奮るっているのだ。いや、女神ナディアの神託があったからというものあるかもしれない。
しかし、グレイは本能で理解していた。目の前のモノに己は勝つことができる存在だと。ただ、戦う場が地上ではなく、空であるということだ。一番やっかいなことだが、これが女神ナディアの神威だと言われればどうだろう?
聖女の番として共に戦う存在としては、これからの戦いは場所も相手も選ぶことができないと言っていい。
だからシェリーは聖女として、どのようなモノが目の前に立ち塞がろうとしても、叩き潰すために力を求めたのだ。
悪魔としては不完全な存在。空を自由に飛ぶアーク族に毛が生えたぐらいの存在だ。
これが女神ナディアの神託たとすれば、なんて愛子に優しい戦いの場を与えたのだろう。
空を駆け、剣を振るうグレイ。空を自由に飛び剣を避け拳を振るい、足を振り上げグレイに攻撃をしてくる不完全な存在。
このままでは、グレイはただ体力が消耗されるだけで、決定打は何一つ与えることもなく。グレイは地に落ちていくしかない。
「ゔ~」
苦し紛れなのか。グレイが唸りだす。いや、グレイの姿に変化がみられた。
炎のような赤い魔力の塊をその身にまとい、獣のような様相に変化していく。獣相は、頭の上にある三角の耳しか見られなかったが、金色が混じった赤い毛並みが全身を覆いだし、両手に持っていた双剣が物理的変化がみられた。それはグレイと一体化するように獣の赤い爪へを変化していく。
流石、剣神レピダがファブロに作らせた剣なだけのことはある。レッドドラゴンの牙で作られた双剣は全てを切り捨てる金狼の爪へと変貌を遂げた。
赤い毛並みをまとう狼が、空を飛ぶ黒と白の翼を持った歪な鳥の白い翼を爪で切り裂いた。
片翼を失った不完全な悪魔は驚いたように赤い獣を見つめ、赤い獣は地に落ちていくしかないモノの首に喰らいついた。
獣の牙は白い肌に突き刺さり、ぶつっという皮膚を貫いた。次いで、バキリと骨を断ち切る音が、グレイに伝わってくる。
「~~~~!!」
声無き不完全な物は、グレイに首を噛まれたまま地面に落ちていき、絶命した。
動かなくなった不完全な悪魔から、牙を抜き見下ろすグレイ。その姿は獣人とはかけ離れ、4足を地面につけ、金色が混じったキラキラと煌く毛並みは美しく。大きさは大人の人程度。
記憶にある黒狼クロードとは全く違っていた。
「グレイ!すごいじゃないか!」
オルクスが嬉しそうに近寄ってくる。
「まるで、飼い犬のような姿だよなぁ」
オルクスが機嫌よく言葉にする。飼い犬……大きさ的には正に大型犬といって差し支えない大きさだ。人を丸呑みできるほどの大きさであったクロードと比べれば雲泥の差だ。
飼い犬と言われたグレイは落ち込むように頭下げている。
「で、グレイいつになったら、戻るんだ?」
敵を倒し終わったとうのに、赤い獣の姿のままのグレイにオルクスは尋ねる。いつまで、そのような格好をしているのだ?と。
_________
全然、間に合わなかった。日付を大いにまたいでしまった。すみません。
誤字脱字は後程直します。
そこで、グレイは大きく一歩を踏み出した。その踏み出した足に力を込め空を蹴り上げる。そして、また一歩踏み出す。
するとどうだろう。まるで、空を駆けるように、空中に浮遊するモノに向かっていっているではないか。
これはシェリーの結界のような物を足場にしているのだろうか。いや、違う。ただ単に足の裏に魔力を集め、それを足場として地面ではない空を駆けているのだ。
確かにクストが言っていた。
『俺たち獣人は空を駆けるだけだ』
と。その言葉を見せつけるように、グレイは空を飛ぶモノに向かって駆けていく。そして、双剣を構え斬りかかる。だが、所詮付け焼き刃の行動だ。
空に住まい、空を生きる場所と決めたアーク族の成れの果てに空中戦を挑もうなど愚の骨頂。軽く避けられ、背後から一撃の蹴りを入れられ、地面に落ちていくグレイ。
落ちながらも体勢を整え、空を滑るように惰性を殺し、空中で止まった。そして、再び空を蹴り上げ、出来損ないの悪魔に向かって行く。
別にグレイはがむしゃらに向かって行っているわけではない。勝てる見込めがあると確信して向かっていっているのだ。
確信。なぜそのような物がもてるのか。
グレイはシェリーの番の中では一番弱い存在のため、周りを観察する能力には長けていた。
ギラン共和国で次元の悪魔に対して、手を出さなかったのは、その所為だ。
このモノたちには敵わないと。
だが、今回はグレイは剣を抜き、不完全な悪魔に向かって剣を奮るっているのだ。いや、女神ナディアの神託があったからというものあるかもしれない。
しかし、グレイは本能で理解していた。目の前のモノに己は勝つことができる存在だと。ただ、戦う場が地上ではなく、空であるということだ。一番やっかいなことだが、これが女神ナディアの神威だと言われればどうだろう?
聖女の番として共に戦う存在としては、これからの戦いは場所も相手も選ぶことができないと言っていい。
だからシェリーは聖女として、どのようなモノが目の前に立ち塞がろうとしても、叩き潰すために力を求めたのだ。
悪魔としては不完全な存在。空を自由に飛ぶアーク族に毛が生えたぐらいの存在だ。
これが女神ナディアの神託たとすれば、なんて愛子に優しい戦いの場を与えたのだろう。
空を駆け、剣を振るうグレイ。空を自由に飛び剣を避け拳を振るい、足を振り上げグレイに攻撃をしてくる不完全な存在。
このままでは、グレイはただ体力が消耗されるだけで、決定打は何一つ与えることもなく。グレイは地に落ちていくしかない。
「ゔ~」
苦し紛れなのか。グレイが唸りだす。いや、グレイの姿に変化がみられた。
炎のような赤い魔力の塊をその身にまとい、獣のような様相に変化していく。獣相は、頭の上にある三角の耳しか見られなかったが、金色が混じった赤い毛並みが全身を覆いだし、両手に持っていた双剣が物理的変化がみられた。それはグレイと一体化するように獣の赤い爪へを変化していく。
流石、剣神レピダがファブロに作らせた剣なだけのことはある。レッドドラゴンの牙で作られた双剣は全てを切り捨てる金狼の爪へと変貌を遂げた。
赤い毛並みをまとう狼が、空を飛ぶ黒と白の翼を持った歪な鳥の白い翼を爪で切り裂いた。
片翼を失った不完全な悪魔は驚いたように赤い獣を見つめ、赤い獣は地に落ちていくしかないモノの首に喰らいついた。
獣の牙は白い肌に突き刺さり、ぶつっという皮膚を貫いた。次いで、バキリと骨を断ち切る音が、グレイに伝わってくる。
「~~~~!!」
声無き不完全な物は、グレイに首を噛まれたまま地面に落ちていき、絶命した。
動かなくなった不完全な悪魔から、牙を抜き見下ろすグレイ。その姿は獣人とはかけ離れ、4足を地面につけ、金色が混じったキラキラと煌く毛並みは美しく。大きさは大人の人程度。
記憶にある黒狼クロードとは全く違っていた。
「グレイ!すごいじゃないか!」
オルクスが嬉しそうに近寄ってくる。
「まるで、飼い犬のような姿だよなぁ」
オルクスが機嫌よく言葉にする。飼い犬……大きさ的には正に大型犬といって差し支えない大きさだ。人を丸呑みできるほどの大きさであったクロードと比べれば雲泥の差だ。
飼い犬と言われたグレイは落ち込むように頭下げている。
「で、グレイいつになったら、戻るんだ?」
敵を倒し終わったとうのに、赤い獣の姿のままのグレイにオルクスは尋ねる。いつまで、そのような格好をしているのだ?と。
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全然、間に合わなかった。日付を大いにまたいでしまった。すみません。
誤字脱字は後程直します。
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