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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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しおりを挟む『聖女の君が浄化して欲しいんだよ』
白き神は言った。
『放置すると魔物も増えて、魔王が発現しちゃうからさ』
次の聖女と成るものに言ったのだ。これは浄化することにより、魔の物が減り、魔王の出現を防げることを意味するように聞こえる。
だが、シェリーは人為的に作られたものだと言った。これは白き神が虚偽を言ったということだろうか。
「ですから、魔王とは誰ですか?」
シェリーは戻ってきて、食べそこねた夕食を食べ終わって、お茶を飲みながら、オリバーに同じことを再度聞いていた。
「二番目の兄だね」
今度はあっさりと教えたオリバー。それも二番目の兄ということは、グローリア国の王族ということだ。
「言っておくが、それは皆の力によって倒されたので、存在はせぬよ」
そう魔王という存在は勇者ナオフミやオリバーや討伐戦を共に戦った者たちの力によって倒されたのだ。
だとしても、魔王という存在があまりにも不可解すぎる。オリバーは魔王の正体は2番目の兄と言ったことは人であったということだ。しかし、神は魔の者と同等の扱いの言い方をしたのだ。いったいどう言うことなのだろうか。
「オリバー。魔王とは世界の悪しき闇を集めたモノということで合っている?」
シェリーはオリバーに聞いているもの確信を得たように言っている。
「大まかに言えばそうなるだろうね」
「誰もが魔王になる可能性がある?」
「そのとおりだ」
「え?!」
オリバーの答えに驚く声が響く。声の発したものは、シェリーの夕食を食べて、そのまま食後のお茶まで一緒に飲んでいる陽子だった。
「どういうこと?何でそんな恐ろしいことになっているの?」
陽子の疑問は最もだ。誰もが魔王に成り得るということは、どこに突然魔王という存在が出現してもおかしくはないということだ。
「悪意の種がばら撒かれているからだね。シェリーはその鱗片を知っているであろう?」
悪意の種。オリバーはそう言うがシェリーは別の名前のモノを一度発見していた『蠱毒の源』というものを。
「ただ、それは当たり外れがあるようでね。いくつかは潰し回ったが、全てカスだった」
「カス?」
陽子が首を傾げて聞いている。
「ああ、人が歪な存在として殺しあっていた」
その言葉にシェリーはハッと顔をオリバーの方に向ける。
「まさか、あのドーム状のモノが次元の悪魔に成り得る術だったってこと?」
そう『蠱毒の壷』とあり、黒い怪しいドーム状のモノが存在していた。それはシェリーが中身を確認せずに浄化してしまった。だから、シェリーはその黒い怪しいドームの中で何が存在していたか確認はしていなかったのだ。
「そうだが、それは初期型だ」
「初期型?」
「あちらもそれは非効率だと感じていたのだろう。次第に別の方法に置き換わっていった」
「方法が変わる?実験を繰り返している?」
「ものはいいようだね、シェリー。恐らく今はもっと効率のいい方法を作っているであろう」
オリバーの言葉にシェリーは片手で額を覆う。今になってなぜこの情報を出してきたのだと。
「あー。陽子さん、陽子さんのダンジョンに何で悪魔がいたのか知りたくて、ここに居るのに、いらないこと聞いちゃっている感が半端ないのだけど!」
陽子がこの場にいるのは、なぜ自分のダンジョンに悪魔の揺り籠があったのか知りたかっただけらしい。
「だったら……帝国の人から次元の悪魔と同じ匂いがしたと言われたのは、人でも次元の悪魔でもない中途半端な存在が、その実験によって出来上がっていること?」
「ほぅ。今度は帝国が目をつけられたのか。これはこれはやっかいな」
オリバーはシェリーの言葉に帝国が目をつけられたという。これは次元の悪魔を操ってギラン共和国に送っている一連の元凶の裏には別の存在がいると言っているのだ。
これは敵は帝国ではないと言うことか?
「人という種族は己の欲のためなら、どのような存在でも魂を売ってしまう傾向にあるのでな。面倒なことになっておらぬといいな」
グローリア国でも何かあったということを示唆しているのだろう。
「ねぇ、オリバー。知っているのなら何で今まで教えてくれなかったわけ?」
シェリーはオリバーを責めるような口調でいう。そうすれば、もっと違う行動が取れたかもしれない。
「あのモノ達の真意など俺にはわからぬ。いや、予想はつくがそれは所詮卓上の空論でしかあるまい?作りあげられる方法も変化しているとなれば、先入観なく物事を見定める目は持っておかねばならないだろう?」
オリバーの言うことは間違っていない。事前に与えられた情報に気を取られてしまえば、肝心なものを見逃すことになりかねない。
そして、シェリーは真実の鱗片にたどり着いた。
次元の悪魔とは。
完全体の悪魔とは。
魔王とは。
全て人為的に作られた存在だったと。
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