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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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しおりを挟む「エンさんの学生生活って、どうだったのですか?」
応接室ではなく、普通にダイニングでお茶をだされ、手土産のように装った何かしらの手段で手に入れた異世界の菓子を目の前に出した炎王にルークは興味津々で聞いている。
そのルークの言葉に炎王は一瞬困ったような表情をした。そして、少し考える素振りをみせ、口を開いく。
「俺は孤児だから、学校には行っていない。ルークの歳ぐらいの時は見習いとして商会で働いていたかな」
「え?」
炎王の言葉に反応したのはルークではなく、オルクスである。炎王は英雄アマツと英雄グラシアールの子であることはギラン共和国では有名で覆しようのない事実だ。その炎王が孤児とはどういうことなのかとオルクスは疑問に思ったのだろう。
「学校に行っていないのに、色々知っていて凄いですね。ん?学園に行く意味ってある?」
ルークがポソリと最後に呟いた。そう、姉シェリーも学校というものには行っていなかった。そして、目の前にいるエンという人物も学校に行っていない。学園の内容は自分にとって簡単過ぎて、つまらないと思っていたのだ。
ならば、そもそも学園に通う意味があるのかという疑問が出てくる。
「いや、行けるのであれば、行っておいた方が良いだろう。人間関係というか、人族と獣人の種族の考えの違いには色々戸惑ったからな。そういうことも学園で学ぶことじゃないのか?」
炎王はルークにそう諭すが、4つの視線が『龍人のくせに何を言っているんだ』と無言の圧力を掛けていた。
「でも、学園にいる人たちって、なんていうか子供っぽいていうか、話が通じないというか。面倒くさい」
ルークの本音が漏れ出ていた。恐らくこれは同じ歳の友達という者が学園に通うまで存在しなかった弊害だろう。ルークの家族は子供らしくない姉シェリーに偏屈な父オリバー。そして、知り合う人はシェリーに連れられて行く冒険者ギルドの大人たちか、シェリーが問題を起こして連行される第6師団の者たちだ。そう、全て分別をわきまえた大人たちだったのだ。
直ぐに感情をむき出しにしたり、手を出してきたりはしない。
これもまた、シェリーがルークを可愛がりすぎた弊害なのかもしれない。
「それは働いていても変わらない」
そう言って懐かしそうに目を細めて笑みを浮かべる炎王は、千年に渡る長き時に思いを馳せているのかもしれない。普通のエンとして存在していた時を。
「そういうものですか」
「そういうものだ」
人間関係という物はいつの時代も変わらず難しいものだ。そして、おもむろにルークは今一番興味があることを炎王に聞いてみた。
「エンさんは神様からの加護って持っていますか?」
そう、神からの加護だ。その質問には流石の炎王も虚をつかれたのか驚いた顔をルークに向け、『加護?』と呟いている。これには炎王は困ったとシェリーに視線を向けた。
未だにカイルに抱えられ、カイルの膝の上に無表情で鎮座しているシェリーにだ。だが、シェリーは口を開く様子はない。
「うーん?加護って言われてもなぁ。普通は称号が増えるだけで、それが神からの加護かどうかなんてわからないものだ」
そう炎王自身のステータスには数々の称号が表示されているが、それが神からの加護であるかは、わからないのだ。
「神っていうものはそういう存在だろう?ルークは神という存在に何を期待しているのかわからないが、飛躍的に強くなる力を与えてくれるわけじゃなく、いくら神に願おうが死んだ人を生き返らせてくれるわけじゃない」
炎王は誰か生き返らせたい人物でもいたのだろうか。
炎王の言葉にルークは残念そうな表情をする。神という存在から与えられる加護が必要だという人たちと、神の加護は期待するほどではないという人たちの2つの意見がある中、炎王は後者の方だったのかという落胆の表情だ。
だが、炎国で崇める光の神ルーチェはただ炎国を見守る立場を貫いている。与えるのは言葉のみ。人が力に溺れる過度な加護を与えることはないのだ。
「なんだ?ルークは神からの加護を得たいのか?」
シェリーから言われた言葉を炎王からも言われたルーク。ルークの表情があまりにも不満げだったからだろう。
昨晩、星の女神ステルラから加護を得たというのに、やはりルークにとって努力をすれば力が得られるという当たり前の加護なんて意味がないということなのだろう。
炎王の言葉にルークは首を縦に振る。すると炎王は何かを思い出すように、首をひねりながら、斜め上に視線を向けている。
「うーん。確かスキルが得られるダンジョンの話を聞いたことがある。中には神が管理しているダンジョンがあるらしい。俺はダンジョンにもぐれない·····あっ。悪い時間切れだ」
「え?もう帰るのですか?」
「クレームが入った」
そう言って炎王は立ち上がった。クレームとは、炎王が理事をしているフィーディス商会から連絡が入ったのだろうか。
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