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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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しおりを挟む「人の心というものは脆いものであるが故に、直ぐに折れてしまう。そこから発する闇は心を蝕み、肉体を蝕むものだ。浄化すればよいのだが、ふとした瞬間に思い出し、また闇を発する。だから、食材として取り入れて、常に浄化をするようにしたのだよ」
これは、ルークが言っていたオリバーが大量にユニコーンを狩ってきた理由は己の素材集めではなく、息子のルークの為だったようだ。
そして、オリバーは己の背後を指し示す。
「見たまえ、あれほどギスギスしていた者たちが、いつも通り食事を取っているであろう?」
シェリーとオリバーの背後では先程までカイルに向けて不快感を顕わにしていた4人が、今はいつも通り日常の会話をしている。いや、魔眼に対して抵抗力をつけろというグレイに対して、気合だけでどうにかなるものではないでしょうと言うスーウェン。必要なのかと、魔眼をあまり重要視していないオルクス。次元の悪魔を倒した己には必要ないのではと言っているリオン。ただ一人、出されたスープをクルクルとかき混ぜながら、4人の変貌に首を傾げているカイル。
まさか、シェリーが自分たちに一服盛ったとは思っていないだろう。ただ、いつも通りの美味しい食事を食べているにすぎない。
「このような物が世界中で食べれるようになれば、世界は変ることができるであろうな」
オリバーが微笑みを浮かべ、シェリーの作ったスープを口にする。その姿を他人が見れば、頬を染めるほど絵になる美しさだが、その姿を見ているのは見慣れたシェリーとルークなので、ただの家族の団欒の一コマに過ぎなかった。
そこに割って入る声があった。
『あっ!それいいね』
その言葉にシェリーとオリバーが反応し、何もない天井を仰ぎ見る。突然の二人の同じ行動に目の前に座っていたルークも天井に何かあるのかと、見上げるが何もない。
「オリバー」
シェリーは天から降ってきた声に、オリバーを責めるような視線を向ける。あの存在が楽しそうに声を出すなんて、ろくなことがないと。
「まぁ、良いではないか。悪いことではあるまい」
「何かしでかすつもりだと思うけど?」
「くくくっ。神々は世界を憂いている。俺の言葉で世界が動くのであれば、それもまた一興ではないのかね」
オリバーは楽しそうに笑っている。いつもと違い、本当に楽しそうに笑っている。これもシェリーの作ったスープの所為なのだろうか。
「あの?姉さん。何かあったの?」
ルークが不思議そうに尋ねる。自分にはわからなかったが、二人は何かを感じ、それに対してシェリーは嫌そうな顔をして、オリバーはその何事かを楽しいと言ったのだ。目の前にいたはずのルークは何のことかさっぱりわからなかった。
「ルーちゃん。何も気にすることないのよ。オリバーがいらないことを言っただけだから」
「ルーク。ただの神の戯言だ。気にすることなど無い」
二人して気にすることはないと言っているが、オリバーはルークにとって気になる言葉を言った。
「神。神様がここにいる?」
そう、この長期休暇で帰ってきてからよく神という言葉を聞くようになった。剣聖という黒髪の男しかり、自分の師であるライターしかり。
ふと、ルークはライターの言葉を思い出した。オリバーは特異者だという言葉。
「神々はどこにでも存在している。全てのモノに神々が宿る。太陽の光にも、月の光にも、そよぐ風にも、流れる水にも、燃ゆる火にも、全てのモノに神々は宿る」
オリバーは謳うように言葉にした。その言葉にさえ神が宿るかのように。
「ルーク。お前の耳は何を聞いている?目は何を見ている?全ての五感を研ぎ澄ませ、世界は光に満ち満ちている。その光、全てが神々だ」
今日のオリバーは饒舌のようだ。いつもなら、このようなことは言わない。ただ、その横でシェリーが顔をしかめている。まるでオリバーの言葉がウザいと言いたいのだろうか。
「オリバー、鬱陶しいから呼び寄せないでもらえる?」
鬱陶しい。その言葉が表すようにシェリーの目には数々の神々が神界からこの場を伺っている姿が見えるのだ。神界からなので、この地上には何も影響はない。だた、シェリーは目に見るものが煩わしいと言っているのだ。
そして、ルークといえば、オリバーの言葉とシェリーの言葉から、この場に神という存在がいると確信した。ならばと、思い切って父親であるオリバーに聞いてみる。
「父さん。ライターさんから聞いたのだけど、特異者ってどうやったら成れるの?」
その言葉に上機嫌だったオリバーの機嫌が急降下していく。その隣のシェリーは初めて聞く言葉であったため、何のことだろうかと、ルークとオリバーを伺い見ていた。
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