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25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「だから、神頼みをして魔力の上限をあげようということですか?」

「まぁ、そういう事だ。軍部は獣人の領分だと言う馬鹿もいたが、物事には適材適所というものがある。暴れていればいいっていうもんじゃねぇ」

 この言葉にクロードの長年の苦労という物が垣間見える。獣人であるが、異世界で人であった記憶を持つクロードだからこそ、この獣人の国と言われるシーラン王国で、獣人も人族も分け隔てなく職にありつけるようになったのかもしれない。

 クロードのその言葉にシェリーはため息を吐く。それならば、第3師団の半分を引き抜くことで、師団長と副師団長の間で諍いが起こるはずだ。師団の半分では人々の生活がままらなくなるのだ。

「と、言うことらしいのですが、如何されますか?魔神ましんリブロ様」

 シェリーは何処ともなく声を掛けた。魔神ましんリブロがまるでこの話し合いを聞きに来て、その場にいるように声をかけたのだ。

『如何と言われてものぅ』

 ユーフィアの背後から声が聞こえてきた。いや、鈍色の長いローブにフードを深く被った者が存在していた。

「という割には素直にこっちに出てきているではないですか」

 シェリーは向かい側のユーフィアの背後に現れてきた存在に呆れたような声で言った。素直に姿を表して何を言っているのだと。
 そして、いきなり背後から声が聞こえたことで振り返ろうとしたユーフィアはその頭に手を置かれ振り返れないでいた。

『テロスのように引きずり出されるのはかなわんからのぅ』

 どうやらテロス神がシェリーの手によって神界から引きずり出されたことを耳にしたらしい。だから、素直に出てきたと。

「え?あ··あの?誰?」

 頭の上に神の手が置かれたユーフィアは誰が背後にいるのかわからず戸惑っている。今の状況が理解出来ないでいるようだ。

『まぁ、強いて言うなら、この者であるなら、加護を与えてやってもよいのぅ』

 この者というのは頭上に手を置いているユーフィアのことだ。加護を与えても良いということは別に与えなくてもいいということだ。この言葉が示す意味はなんだ?

「今更ユーフィアさんにリブロ様の加護は必要ですか?」

 そう、ユーフィアの魔力はかなり高い、そしてユーフィアの魔術はオリジナルが高すぎてリブロ神が加護を与えるほどではない。そもそもだが、ユーフィアは魔術というより魔道具の作成者であるため、リブロ神も『まぁ与えてもよいかなぁ』という感じなのだろう。

『だから、与えてやってもよいと言っている。基本的に我らは我ら自身で手をくだすことはない』

 リブロ神は何かを語りだした。鈍色のローブのフードの奥に隠れ、どのような表情をしているか伺い知ることができないが、何かを押し殺したような低い声で話しだした。

『あの御方が何故異物と呼んだモノを始末せぬのかと思うことがある。我らを請う者が如何ほどいる?我の力などそなたが言った様に必要されるものなどではない』

 これは勇者ナオフミのグローリア国の破壊行動を言っているのだろう。そのことで、己を崇める者が減り、所詮己の加護なの求められないものだと。シェリーの口の悪さが追い打ちをかけてしまったようだ。

「信仰心を得られないからと言ってここで拗ねられても困ります」

 いや、シェリーは更に追い打ちをかける。その言葉にクロードが慌てて腰を浮かした。

「いや、神の加護は凄いからな。俺は魔術ってヤツは細かい作業が苦手であまりに使わなかったが、獣王神とは酒飲み友達だぞ!」

 擁護しようとしているクロードだが、何気に魔神ましんリブロ神の力を必要としていないと言っている。それに何故か神と酒飲み友達だなんて言葉も出てきている。神を友だち呼ばわりするのは如何なものなのだろうか。
 徐々に頭が下がっていくリブロ神。

「あの~?先程からの話からすると、後ろにいらっしゃるのは、神様なのでしょうか?もし、魔脈の強化をしていただけると助かるのですけど?」

 後ろを振り向けないユーフィアが魔脈の強化をして欲しいと言ってきた。魔脈の強化とはどういうことなのだろうか。

「ほら、大量の魔力を巡らして一気に放出すると身体が強制的に制御をして、魔力を抑えようとしますよね。魔脈を焼き切らないようにしている為だと思うのですが、それだと作りたい物が作れない時があるのです。もう少し魔脈を丈夫にしていただけると助かるのですけど?あ、お祈りが必要ならしますよ。なむなむで大丈夫です?」

「ユーフィアさん。それはとても適当な南無阿弥陀佛ですね」

 ユーフィアの適当な仏教の文言をシェリーは訂正する。そういうシェリーも神になど祈ったことがないので、詳しい神の祈りの捧げ方など知らない。そう、シェリーの中で一番に神として浮かぶ顔が何もかも真っ白な姿のモノだからだ。

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