番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「行けばいいだろ!この前、第6師団にいたよな。だったら問題無い」

 クロードは以前、第6師団の詰め所でシェリーに召喚されたので、シェリーが軍に出入りしていることは知っている。だったら、軍本部に行くぐらい問題ないだろうと。
 確かにシェリーは軍本部に一般人とは思えないぐらいに出入りしているし、第6師団の詰め所に連行されたことなど、両手で足りるかというぐらいだ。

「さっきクロードさんが言っていたではないですか。『死人の言葉に意味がない』と。死人が突然現れたら、ゾンビのように討伐されますよ」

「ゾンビ···討伐···いや、だが向かってくる奴らをぶちのめせば!!」

 獣人らしい、脳筋な答えが返ってきた。しかし、シェリーはその言葉を否定する。

「あんまりおいたが過ぎると、世界からの強制解除の横槍が入ります」

 そう、天津のときのように、シェリーの負担が増え、強制的に世界の記憶に戻されることになるのだ。

 クロードは『世界』という言葉に冷静になり、先程座っていたソファに腰を下ろした。そして、クストの方に視線を向ける。シェリーの言葉に怒っていたクストだが、クロードの怒りを向けられないように、今は鳴りを潜めるようにユーフィアの横で微動だにしていない。若干、三角の耳が伏せられているように見える。

「クスト」

 名前を呼ばれたクストはビクッと身体を震わせ、クロードの方を向いて立ち上がった。

「はい!爺様!」

 クストはよく躾けられた子犬のように、クロードの機嫌を伺っている。今は師団長という地位にいるクストがクロードの前では子犬同然のようだ。絶対的な強者には従わなければならないという教育でもされていたのだろうか。

「あの若王とその第3師団の師団長と副師団長と今は誰がその地位にいるか知らないが、統括師団長をここに連れてこい」

「····」

 クロードは無理難題を言ってきた。一師団長でしかないクロードに4人を引っ張ってこいと言ったのだ。第3師団長と副師団長ぐらいなら呼べるかもしれないが、イーリスクロム国王陛下と統括師団長閣下を連れて来いというのは些か難しいのではないのだろうか。

「爺様。俺は第6師団長でしかないのです。第3師団長に命令を出す権限もありませんし、ましてや、国王陛下や統括師団長閣下に声をかけて、今すぐに来てもらうというのは難しいと思います」

 正論だ。時間がかかっても良いのであれば、現実的に可能かもしれないが、今すぐというのは非現実的である。
 そこでシェリーは応接室の隅に控えているセーラに視線を向けた。

「セーラさん。クソ狐を連れて来てください」

「了解しました~」

 この屋敷の主はクストであるはずが、セーラはシェリーの言葉に頷いて、近くにある窓から外に飛び出していった。
 そして、シェリーは鞄から便箋を取り出して、何かを書き始める。それを白い飾り気のない封筒に入れ、表に第3師団長宛を明記してクストに差し出す。

「第3師団長さんに渡して貰えれば、快く来てもらえると思います。統括師団長閣下は来てもらえれば、それでいいですが、無理に来てもらわなくても、現状報告だけでもしておけばよろしいのではないのでしょうか?どちらかと言うと、王都の人の出入りを管理する変態に来てもらった方がいいでしょうね」

 第3師団長が快く···それは第3師団長が奇っ怪な行動をとる原因物で釣るつもりなのだろう。そして、軍のトップである統括師団長閣下を動かすというのは無理があるとわかっているので、第5師団長のロリコンを連れてこいとシェリーは言ったのだ。しかし、普通であれば、国王陛下であるイーリスクロムを連れてくることの方が難しいはずなのだが、セーラという人材のおかけで····いや、イーリスクロムが仕事に飽きてフラフラしていることが問題であり、そこをセーラに確保して貰おうということだった。

 そして、シェリーは人を集めるのに、公爵であるクストを顎で使っている。クストはシェリーから差し出された白い封筒を受け取るが、クロードからの命令だから仕方がなくというイヤイヤな雰囲気が見て取れる。

「爺様、少し時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」

「それぐらいわかっているから、さっさと言ってこい」

「わかりました。その間、ルジオーネを呼び寄せておきますので、何か用がありましたらルジオーネに命じてください」

「そこまで、しなくていい。あいつも仕事をかかえているんだろう?俺はここで菓子でも食って待ってるから行って来い」

 クロードは虫でも払うように手を振ってクストを追い出した。そして、室内には新しいローテーブルを用意しているマリアと、なんだか大事になってしまっていると困惑気味のユーフィアと無表情のまま両脇にツガイの二人を侍らせている·····いや、ツガイに挟まれているシェリーが残され、クロードは確保していたポテチの袋を抱え込みバリバリと食べているのだった。


_______________

いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。
500話です!恐ろしく話が進まないのにも関わらず、500話まで来てしまいました!!


たまに手が止まることもあるかと思いますが、コツコツ書いて行きますので、よろしくお願いいたします。


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