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25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気
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キラキラと空気が凍って輝いていた物はなくなり、ルークは部屋の温度が元通りに戻ったダイニングで一人呆然としていた。
そして、先程まで凍って食べられなかった朝食にノロノロと手をつけ始める。
当たり前だった。こうして朝ごはんが用意されていることも、姉であるシェリーが目の前でニコニコとルークが食べている姿を見ているのも当たり前だった。
今、思い出しても姉であるシェリーは自分の事よりも弟であるルークの他愛のない話を聞いており、自分自身の話をしたことは無かったと。いや、殆どの時間を屋敷の中で共有していたので、知らない事は冒険者ギルドで受けた依頼を遂行するために家を空けた時ぐらいだった。
父親のオリバーからは『なぜ、拗ねている?』と言われてしまった。
ルークは苦笑いを浮かべる。正にそうだったと。家族なのに自分に知らないことがあるのが許せなかったのだ。
そして、知らなかった時と同じではいられないとカイルから言われた。
ルークはカトラリーを置いて椅子の背もたれに体重をかけ、目を瞑る。考えてみても、自分の選択肢が間違っていたとは思えない。
ルークが自分自身に力をつけようと思ったきっかけは5歳の頃に起きた事件だった。今となっては殆ど覚えてはいない。ただ、思い出そうとすると恐怖で身がすくんでしまうが、姉であるシェリーが自分を助けてくれたことは、今でも鮮明に思い出される。
『ルーちゃん、もう大丈夫。おねぇちゃんが悪い人を、みんなみんな····全部やっつけてあげるからね』という弟を気遣う10歳のシェリーの言葉と優しく笑うシェリーの顔は思い出される。
それからだ、父親であるオリバーに教えを請い、強くなろうとしたのは。ただ、その父親は基礎を教えただけで、それ以上は教えてはくれなかった。
もっと教えて欲しいと、いくらルークが願ってもオリバーは『身に余る力はただの暴力に過ぎぬ。魔眼を封印の隙間を縫って使いこなせるぐらいになれば、考えてやらないでもない』と言われたのだった。
だから、同じく魔眼を持っている姉のシェリーにどうしているのかと聞いてみたのだが、返ってきた言葉が『ルーちゃん。普通に魔眼を開眼させるだけよ』と言われてしまった。ルークにはシェリーの言っている意味が分からなかった。封印をしていない状態であれば、自由に使うこともできたのだが、封印されてしまえば、使えなくなってしまったのだ。
なので、ルークはもう一人の姉に聞いてみた。いや、正確にはもうひとりの人格のシェリーにだ。
『魔眼の使い方?ルークは魔眼を使いこなせているのだから、大丈夫でしょ?』
『父さんの封印を解かずに使えるようにするにはどうすればいいの?っていうこと。シェリー姉ちゃんはどうしているのか教えて欲しい』
『それ、前も聞いて来たよね』
『シェリー姉ちゃんに聞いているの』
その言葉にシェリーは困ったような顔をしながら答えた。
『うーん。オリバーの言っている隙間っていう事も、わたしが言っていた魔眼を開眼するっていうのも間違いじゃないの。封印は鍵が付いた扉っていう感じ。封印の条件を満たせば鍵を開ける事ができるの』
『封印の鍵の条件って何?』
『私の場合は力の制御ができたことかな?多分ルークの封印の鍵の条件は私とは違うと思うよ。それはルーク自身が見つけないと駄目なことだと思うから』
シェリーは幼いルークの頭を撫でなから言った。
『ルークの未来は無限の選択肢があるからね。焦らず、ゆっくりと探すと良いと思うよ。ルークは将来の夢ってあるかな?その夢に向かう中で色々模索すればいいと思うの。私は、ルークの夢を全力で応援するからね』
そこから、ルークは自分の将来というモノを真剣に考えるようになった。選択肢として一番に挙がったのは冒険者になることだったが、それは姉であるシェリーに反対されてしまった。いや、切々と冒険者という不安定な職業を語られてしまったのだ。だから、ルークは冒険者になることは諦めた。
残りは、この国にある学校に通いながら力をつけることだった。
一つは騎士を育てる学校で、卒業後は騎士団か軍に所属する未来が約束された王立騎士養成学園だ。
もう一つが、魔術の才能があって授業料を払うことができれば、誰でも入学することができる王立エピドシス魔術学園。
魔導師としての適性のあるルークは魔術学園に入ろうかと当初思っていたのだが、一年でも早く独り立ちをしようと思い騎士養成学園に入ることを決めたのだった。
だから、この選択肢を後悔してるかと問われれば全くしていない。
後悔していない一番大きな理由は剣の師であるライターとの出会いだろう。彼のお陰で、ルークは魔導師という存在は完璧ではなく、剣術を併用してやっと一人で戦える存在になれるのだと教えこまれたのだった。
ただ、未だにルークはオリバーに施された魔眼の封印の鍵がわからないでいた。しかし、今回のことで、これではないかと思い当たる言葉に出逢った。
『剣にしろ魔術にしろ、レベル100からが極めどころだ。君はどこまで到達できる?レベル90で挫折するか、レベル100まで達し術を極めるか。若しくは超越者まで達するか。まぁ、せめて英雄クラスにならないと話にならないという事は覚えておくといいよ』
剣聖と紹介された黒髪の人物の言葉だ。
「当分の目標はレベル100か。学生の間に達成できるかな。やっぱり、休みの間ライターさんのところで、鍛えてもらおうかな」
シェリーが聞けば再び悲鳴を上げそうな言葉をルークは口にしたのだった。
そして、先程まで凍って食べられなかった朝食にノロノロと手をつけ始める。
当たり前だった。こうして朝ごはんが用意されていることも、姉であるシェリーが目の前でニコニコとルークが食べている姿を見ているのも当たり前だった。
今、思い出しても姉であるシェリーは自分の事よりも弟であるルークの他愛のない話を聞いており、自分自身の話をしたことは無かったと。いや、殆どの時間を屋敷の中で共有していたので、知らない事は冒険者ギルドで受けた依頼を遂行するために家を空けた時ぐらいだった。
父親のオリバーからは『なぜ、拗ねている?』と言われてしまった。
ルークは苦笑いを浮かべる。正にそうだったと。家族なのに自分に知らないことがあるのが許せなかったのだ。
そして、知らなかった時と同じではいられないとカイルから言われた。
ルークはカトラリーを置いて椅子の背もたれに体重をかけ、目を瞑る。考えてみても、自分の選択肢が間違っていたとは思えない。
ルークが自分自身に力をつけようと思ったきっかけは5歳の頃に起きた事件だった。今となっては殆ど覚えてはいない。ただ、思い出そうとすると恐怖で身がすくんでしまうが、姉であるシェリーが自分を助けてくれたことは、今でも鮮明に思い出される。
『ルーちゃん、もう大丈夫。おねぇちゃんが悪い人を、みんなみんな····全部やっつけてあげるからね』という弟を気遣う10歳のシェリーの言葉と優しく笑うシェリーの顔は思い出される。
それからだ、父親であるオリバーに教えを請い、強くなろうとしたのは。ただ、その父親は基礎を教えただけで、それ以上は教えてはくれなかった。
もっと教えて欲しいと、いくらルークが願ってもオリバーは『身に余る力はただの暴力に過ぎぬ。魔眼を封印の隙間を縫って使いこなせるぐらいになれば、考えてやらないでもない』と言われたのだった。
だから、同じく魔眼を持っている姉のシェリーにどうしているのかと聞いてみたのだが、返ってきた言葉が『ルーちゃん。普通に魔眼を開眼させるだけよ』と言われてしまった。ルークにはシェリーの言っている意味が分からなかった。封印をしていない状態であれば、自由に使うこともできたのだが、封印されてしまえば、使えなくなってしまったのだ。
なので、ルークはもう一人の姉に聞いてみた。いや、正確にはもうひとりの人格のシェリーにだ。
『魔眼の使い方?ルークは魔眼を使いこなせているのだから、大丈夫でしょ?』
『父さんの封印を解かずに使えるようにするにはどうすればいいの?っていうこと。シェリー姉ちゃんはどうしているのか教えて欲しい』
『それ、前も聞いて来たよね』
『シェリー姉ちゃんに聞いているの』
その言葉にシェリーは困ったような顔をしながら答えた。
『うーん。オリバーの言っている隙間っていう事も、わたしが言っていた魔眼を開眼するっていうのも間違いじゃないの。封印は鍵が付いた扉っていう感じ。封印の条件を満たせば鍵を開ける事ができるの』
『封印の鍵の条件って何?』
『私の場合は力の制御ができたことかな?多分ルークの封印の鍵の条件は私とは違うと思うよ。それはルーク自身が見つけないと駄目なことだと思うから』
シェリーは幼いルークの頭を撫でなから言った。
『ルークの未来は無限の選択肢があるからね。焦らず、ゆっくりと探すと良いと思うよ。ルークは将来の夢ってあるかな?その夢に向かう中で色々模索すればいいと思うの。私は、ルークの夢を全力で応援するからね』
そこから、ルークは自分の将来というモノを真剣に考えるようになった。選択肢として一番に挙がったのは冒険者になることだったが、それは姉であるシェリーに反対されてしまった。いや、切々と冒険者という不安定な職業を語られてしまったのだ。だから、ルークは冒険者になることは諦めた。
残りは、この国にある学校に通いながら力をつけることだった。
一つは騎士を育てる学校で、卒業後は騎士団か軍に所属する未来が約束された王立騎士養成学園だ。
もう一つが、魔術の才能があって授業料を払うことができれば、誰でも入学することができる王立エピドシス魔術学園。
魔導師としての適性のあるルークは魔術学園に入ろうかと当初思っていたのだが、一年でも早く独り立ちをしようと思い騎士養成学園に入ることを決めたのだった。
だから、この選択肢を後悔してるかと問われれば全くしていない。
後悔していない一番大きな理由は剣の師であるライターとの出会いだろう。彼のお陰で、ルークは魔導師という存在は完璧ではなく、剣術を併用してやっと一人で戦える存在になれるのだと教えこまれたのだった。
ただ、未だにルークはオリバーに施された魔眼の封印の鍵がわからないでいた。しかし、今回のことで、これではないかと思い当たる言葉に出逢った。
『剣にしろ魔術にしろ、レベル100からが極めどころだ。君はどこまで到達できる?レベル90で挫折するか、レベル100まで達し術を極めるか。若しくは超越者まで達するか。まぁ、せめて英雄クラスにならないと話にならないという事は覚えておくといいよ』
剣聖と紹介された黒髪の人物の言葉だ。
「当分の目標はレベル100か。学生の間に達成できるかな。やっぱり、休みの間ライターさんのところで、鍛えてもらおうかな」
シェリーが聞けば再び悲鳴を上げそうな言葉をルークは口にしたのだった。
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