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25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気
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ルークは思ってもみない話を聞かされ、項垂れていた。父親であるオリバーが犯罪者だったとは。それは外に出ることは滅多にないはずだと、納得する部分でもあったが、姉はそんなオリバーと共にいることに何も思わなかったのだろうかと、横目で姉であるシェリーを伺うも、心配そうな視線をルークに向けてくるだけだ。
「姉さんは。姉さんはここに居ていいの?」
「私の居場所はここよ。あの勇者とあの母親のところじゃない」
「あの母親?」
ここでルークは今まで避けていた疑問にぶつかる。
「僕と姉さんの母親は生きている?」
「死んだと言った覚えは無いが?」
「キメラを一撃で倒す母親が簡単には死なないと思うけど?」
ルークの疑問を二人はぶった切る。その言葉にルークは目を白黒させる。姉はどうやら本当の両親の事を嫌っているらしい。言葉の端々に感じる嫌悪感がそれを物語っている。
「なんで、姉さんは本当の父さんと母さんと暮らさないの?」
そのルークの言葉にシェリーの表情が無くなる。ルークの前ではニコニコとしていることが多いシェリーが能面の様に表情がなくなったのだ。この顔にルークは覚えがあるグローリア国の話をした時と同じだと。
シェリーはナオフミとビアンカと共になぜ暮らさないのかと問われた瞬間に想像してしまい、思わず肌が粟立った。あの家族の中に自分が入っている姿を。
そして、ビアンカとオリバーとマルゴとの暮らしを思い出してしまい、あれ以上ビアンカと共に暮らすのは無理だったと再認識する。
「あ、ごめんなさい」
これは聞いてはいけないことだったのかとルークは認識し思わず謝る。
「謝ることじゃないのよ。ただ、私が受け入れられないだけ」
シェリーはオリバーに視線を向ける。世界の楔から解放されたオリバー。しかし、番というものに囚われてたオリバーはビアンカしか視界に捉えてはいなかった。
「ルーク。貴方の前にも必ずツガイという存在は現れる。覚えておきなさいツガイとは世界が定めた己の楔だと。その者だけに囚われては駄目。子供にもきちんと目を向けること、姉さんが言えるのはそれだけ」
そう、ルークの番は恐ろしい呪i····祝福をもっているアフィーリアだ。シェリーがいくら阻止をしようとも世界の思惑が働けば、必ずルークとアフィーリアは出逢ってしまうだろう。
しかし、そう言われたルークだが、目の前には姉とその番だと言ったカイルがいる。本人がいる前で番が楔だと言ってしまうのはどうなのかと、カイルを伺い見るもカイルはシェリーの言葉など気になどせずに、ニコニコとシェリーを愛でている。
「楔。良い例えだね。シェリーの楔は5本ということだね」
「うるさい。オリバー」
ルークはオリバーが言っている意味がわからずその言葉をただ繰り返した。
「楔が5本?」
「シェリーの番は5人だという意味だ」
オリバーの言葉にルークは声も無く横の席でカイルの膝の上に座っているシェリーを見る。
そのシェリーはというと、不快感を現すようにオリバーを睨みつけている。シェリーとしてはルークに知られたくなかったのが本音だが、いつかはバレてしまうことだ。
ついでと言わんばかりに言葉にしたオリバーに文句を言いたいが、文句を言ったとしても今か先延ばししかないと言葉を返されて終わると思われるので、ただシェリーはオリバーを睨みつけるのみにとどめる。
「姉さん、もしかして学園に来た時の『カンカンカン』····」
ルークの言葉は訪問客が鳴らすドアノッカーの音によって遮られてしまった。このように日が暮れてしまってからの訪問は失礼にあたるため、普通はありえないし、この屋敷に訪問客など滅多にはない。
「珍しい客が来たようだ」
オリバーはそう言って、席を立ちダイニングを出ていく。
そのオリバーの姿を気にしながらルークはシェリーとカイルの姿を見る。姉とその番。
「姉さん」
ルークが先程の言葉の続きを話そうとしたところで、廊下の方からドタドタと足音を立ててこのダイニングに近づいてくる者の存在に、またしても遮られてしまった。
そして、勢いよく扉が開け放たれた。
「黒の六番目!遊びに来たよ!」
開け放たれた扉から姿を現したのは、黒いワンピースを身にまとい、シェリーと同じような年頃の少女だ。髪は黒く人族に見えるが、その目は黒いタールを流し込んだように淀んだ目をしている。そして、少女の様な姿をしている存在からは異常なほどの威圧が発せられている。これは人ではない。
本能が少女の全てを否定するかのようだ。
そして、人の形をした脅威的な存在の右側には黒い髪に薄い青い瞳の青年が立っていた。その人物は穏やかに笑ってはいるが、立っている姿を見ただけで、後退りをして脱兎の如く逃げ出したい衝動に駆られる雰囲気をまとっていたのだった。
「姉さんは。姉さんはここに居ていいの?」
「私の居場所はここよ。あの勇者とあの母親のところじゃない」
「あの母親?」
ここでルークは今まで避けていた疑問にぶつかる。
「僕と姉さんの母親は生きている?」
「死んだと言った覚えは無いが?」
「キメラを一撃で倒す母親が簡単には死なないと思うけど?」
ルークの疑問を二人はぶった切る。その言葉にルークは目を白黒させる。姉はどうやら本当の両親の事を嫌っているらしい。言葉の端々に感じる嫌悪感がそれを物語っている。
「なんで、姉さんは本当の父さんと母さんと暮らさないの?」
そのルークの言葉にシェリーの表情が無くなる。ルークの前ではニコニコとしていることが多いシェリーが能面の様に表情がなくなったのだ。この顔にルークは覚えがあるグローリア国の話をした時と同じだと。
シェリーはナオフミとビアンカと共になぜ暮らさないのかと問われた瞬間に想像してしまい、思わず肌が粟立った。あの家族の中に自分が入っている姿を。
そして、ビアンカとオリバーとマルゴとの暮らしを思い出してしまい、あれ以上ビアンカと共に暮らすのは無理だったと再認識する。
「あ、ごめんなさい」
これは聞いてはいけないことだったのかとルークは認識し思わず謝る。
「謝ることじゃないのよ。ただ、私が受け入れられないだけ」
シェリーはオリバーに視線を向ける。世界の楔から解放されたオリバー。しかし、番というものに囚われてたオリバーはビアンカしか視界に捉えてはいなかった。
「ルーク。貴方の前にも必ずツガイという存在は現れる。覚えておきなさいツガイとは世界が定めた己の楔だと。その者だけに囚われては駄目。子供にもきちんと目を向けること、姉さんが言えるのはそれだけ」
そう、ルークの番は恐ろしい呪i····祝福をもっているアフィーリアだ。シェリーがいくら阻止をしようとも世界の思惑が働けば、必ずルークとアフィーリアは出逢ってしまうだろう。
しかし、そう言われたルークだが、目の前には姉とその番だと言ったカイルがいる。本人がいる前で番が楔だと言ってしまうのはどうなのかと、カイルを伺い見るもカイルはシェリーの言葉など気になどせずに、ニコニコとシェリーを愛でている。
「楔。良い例えだね。シェリーの楔は5本ということだね」
「うるさい。オリバー」
ルークはオリバーが言っている意味がわからずその言葉をただ繰り返した。
「楔が5本?」
「シェリーの番は5人だという意味だ」
オリバーの言葉にルークは声も無く横の席でカイルの膝の上に座っているシェリーを見る。
そのシェリーはというと、不快感を現すようにオリバーを睨みつけている。シェリーとしてはルークに知られたくなかったのが本音だが、いつかはバレてしまうことだ。
ついでと言わんばかりに言葉にしたオリバーに文句を言いたいが、文句を言ったとしても今か先延ばししかないと言葉を返されて終わると思われるので、ただシェリーはオリバーを睨みつけるのみにとどめる。
「姉さん、もしかして学園に来た時の『カンカンカン』····」
ルークの言葉は訪問客が鳴らすドアノッカーの音によって遮られてしまった。このように日が暮れてしまってからの訪問は失礼にあたるため、普通はありえないし、この屋敷に訪問客など滅多にはない。
「珍しい客が来たようだ」
オリバーはそう言って、席を立ちダイニングを出ていく。
そのオリバーの姿を気にしながらルークはシェリーとカイルの姿を見る。姉とその番。
「姉さん」
ルークが先程の言葉の続きを話そうとしたところで、廊下の方からドタドタと足音を立ててこのダイニングに近づいてくる者の存在に、またしても遮られてしまった。
そして、勢いよく扉が開け放たれた。
「黒の六番目!遊びに来たよ!」
開け放たれた扉から姿を現したのは、黒いワンピースを身にまとい、シェリーと同じような年頃の少女だ。髪は黒く人族に見えるが、その目は黒いタールを流し込んだように淀んだ目をしている。そして、少女の様な姿をしている存在からは異常なほどの威圧が発せられている。これは人ではない。
本能が少女の全てを否定するかのようだ。
そして、人の形をした脅威的な存在の右側には黒い髪に薄い青い瞳の青年が立っていた。その人物は穏やかに笑ってはいるが、立っている姿を見ただけで、後退りをして脱兎の如く逃げ出したい衝動に駆られる雰囲気をまとっていたのだった。
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