425 / 774
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気
413
しおりを挟む
「ただいま。姉さん」
ゴタゴタと色々あったがルークがニールの計らいで軍部の見学という名の強制的にシェリーから引き離されて、早一週間。約束の日の夕方にルークが屋敷に帰ってきた。
「ルーちゃん、お帰り。怪我はしてない?」
ルークが帰ってくる2刻前から玄関で待っていたシェリーが満面の笑みでルークを出迎える。
「怪我はしてないよ。広報の人はみんな優しかったし、色々教えてもらって楽しかったよ」
ルークも笑顔で答えるが、今までならルークが困るほどギュウギュウに抱きしめきたシェリーが言葉だけだと、少し寂しい気持ちになり、微笑苦を浮かべる。そろそろ姉離れをしないといけないと。
「そう、それは良かった。荷物を置いてきたら夕食にしようね。そのときに色々お話し聞かせてね」
シェリーはそう言って、ダイニングの方に向かって行く。その後からカイルが付いて行く姿をルークは眺めながら、なんとも言えない気持ちになる。
ルークには母親がいない。姉が母親代わりルークを育ててくれた。久しぶりに家に戻ってくれば、知っている人物が姉の番として、家族が住む家にいるということは、なんとも複雑な気持ちになると、ため息を吐きながら、二階に上がる階段をルークは上っていく。姉を取られてしまったと。
「ランフォンス殿下とも仲良くしてもらったんだ」
夕食を食べながら、ルークがこの一週間あったことを話している。シェリーはそれを笑顔でうんうんと聞いており、カイルはその笑顔のシェリーをニコニコと眺めている。
オリバーはルークの話を聞いているのか聞いていないのかわからないが、黙々と食事を取っている。
「それで、今日殿下と一緒にライターさんのところに行ってね。確か、リッター君だったかな?ウサギ獣人の彼とも仲良くして欲しいと言われたんだ」
ウサギ獣人のリッターとは第9師団長のファスシオンの息子のことだ。騎士養成学園の合格発表の時にルークに突っかかってきたリッターをシェリーがボコボコにして、ライターに預けて鍛えてもらっている少年だ。
「それで。ライターさんのところに行ったら、姉さんにそっくりな男の子がいたんだよ。すごく似ていてびっくりしちゃった」
その言葉にシェリーが笑顔のまま固まってしまい、オリバーは食事の手を止めてルークを見た。話しているルークはシェリーとオリバーの異変には気がついてはおらず、そのまま話を続けている。
「ユーマっていう子なんだけど、姉さんと同じ黒髪で、でも目は黒かったんだけど、姉さんに似ていて、気になったから話をしてみたら、来年騎士養成学園を受けるって」
黒髪。確かシェリーはユウマにシェリーが持っていたペンダントの予備を渡していたはずだった。だから、金髪の黒目の少年のはずだが、ライターはナオフミのお目付け役にされていた人物なので、外に出なければ、わざわざ姿を変える必要はなかったのだろう。
「それで、仲良くできたらいいなって思ったんだ」
ルークは楽しそうに話しているが、シェリーとオリバーはどうするかと、視線だけで会話をしてる。
ルークとユウマは異父兄弟だ。シェリーと似ていると思ったもの間違いではない。シェリー自身は認めたくはないが、ユウマと同じ父親の血を引いていることは確かなのだ。
しかし、ルークは仲良くしたいと言ってはいるが、ルークの事がユウマからナオフミの耳にでも入れば、ナオフミがどう動くかわからない。
ここは、事情を説明してユウマと距離を置くように言うべきか、それとも何も言わざるべきか。
「それで·····。どうかした?」
ルークはここでやっと二人がおかしいということに気がついた。何か変な話をしてしまっただろうかとルークは考えるも、この一週間のことを話していただけなので、おかしなことは何もないはず。
シェリーは困ったように笑い、首を横に振る。大丈夫だと。
しかし、オリバーはこのことに関しては、放置はできないとルークに言葉をかけた。
「ルーク。食事が終わったら、少し話をしよう」
珍しく父親であるオリバーから声をかけられたことに、ルークは驚きを隠せない。ルークにとってオリバーは父親ではあるが、魔導術を教えてもらう以外、コレと言って関わりがないと言ってよかった。
ルークの身の回りのことは全てシェリーが行ってきたし、一日一度顔を合わせればいいような関係だ。父親というより地下に籠もっている同居人のイメージの方が強かった。
そのオリバーが魔術のこと以外でルークに話をしようというのは、ルークにとってはとても驚くことだった。
_____________
補足
オリバーは父親らしいことはルークに対して行っていなかったのは、オリバー自身も父親がどういうものかわかっていないからです。ただ、師と仰ぐ人物がオリバーにとって唯一の家族であったがために、その師との生活が基準になっています。
シェリーもオリバーにそこまでの事を求めていなかったことも大きいです。
ゴタゴタと色々あったがルークがニールの計らいで軍部の見学という名の強制的にシェリーから引き離されて、早一週間。約束の日の夕方にルークが屋敷に帰ってきた。
「ルーちゃん、お帰り。怪我はしてない?」
ルークが帰ってくる2刻前から玄関で待っていたシェリーが満面の笑みでルークを出迎える。
「怪我はしてないよ。広報の人はみんな優しかったし、色々教えてもらって楽しかったよ」
ルークも笑顔で答えるが、今までならルークが困るほどギュウギュウに抱きしめきたシェリーが言葉だけだと、少し寂しい気持ちになり、微笑苦を浮かべる。そろそろ姉離れをしないといけないと。
「そう、それは良かった。荷物を置いてきたら夕食にしようね。そのときに色々お話し聞かせてね」
シェリーはそう言って、ダイニングの方に向かって行く。その後からカイルが付いて行く姿をルークは眺めながら、なんとも言えない気持ちになる。
ルークには母親がいない。姉が母親代わりルークを育ててくれた。久しぶりに家に戻ってくれば、知っている人物が姉の番として、家族が住む家にいるということは、なんとも複雑な気持ちになると、ため息を吐きながら、二階に上がる階段をルークは上っていく。姉を取られてしまったと。
「ランフォンス殿下とも仲良くしてもらったんだ」
夕食を食べながら、ルークがこの一週間あったことを話している。シェリーはそれを笑顔でうんうんと聞いており、カイルはその笑顔のシェリーをニコニコと眺めている。
オリバーはルークの話を聞いているのか聞いていないのかわからないが、黙々と食事を取っている。
「それで、今日殿下と一緒にライターさんのところに行ってね。確か、リッター君だったかな?ウサギ獣人の彼とも仲良くして欲しいと言われたんだ」
ウサギ獣人のリッターとは第9師団長のファスシオンの息子のことだ。騎士養成学園の合格発表の時にルークに突っかかってきたリッターをシェリーがボコボコにして、ライターに預けて鍛えてもらっている少年だ。
「それで。ライターさんのところに行ったら、姉さんにそっくりな男の子がいたんだよ。すごく似ていてびっくりしちゃった」
その言葉にシェリーが笑顔のまま固まってしまい、オリバーは食事の手を止めてルークを見た。話しているルークはシェリーとオリバーの異変には気がついてはおらず、そのまま話を続けている。
「ユーマっていう子なんだけど、姉さんと同じ黒髪で、でも目は黒かったんだけど、姉さんに似ていて、気になったから話をしてみたら、来年騎士養成学園を受けるって」
黒髪。確かシェリーはユウマにシェリーが持っていたペンダントの予備を渡していたはずだった。だから、金髪の黒目の少年のはずだが、ライターはナオフミのお目付け役にされていた人物なので、外に出なければ、わざわざ姿を変える必要はなかったのだろう。
「それで、仲良くできたらいいなって思ったんだ」
ルークは楽しそうに話しているが、シェリーとオリバーはどうするかと、視線だけで会話をしてる。
ルークとユウマは異父兄弟だ。シェリーと似ていると思ったもの間違いではない。シェリー自身は認めたくはないが、ユウマと同じ父親の血を引いていることは確かなのだ。
しかし、ルークは仲良くしたいと言ってはいるが、ルークの事がユウマからナオフミの耳にでも入れば、ナオフミがどう動くかわからない。
ここは、事情を説明してユウマと距離を置くように言うべきか、それとも何も言わざるべきか。
「それで·····。どうかした?」
ルークはここでやっと二人がおかしいということに気がついた。何か変な話をしてしまっただろうかとルークは考えるも、この一週間のことを話していただけなので、おかしなことは何もないはず。
シェリーは困ったように笑い、首を横に振る。大丈夫だと。
しかし、オリバーはこのことに関しては、放置はできないとルークに言葉をかけた。
「ルーク。食事が終わったら、少し話をしよう」
珍しく父親であるオリバーから声をかけられたことに、ルークは驚きを隠せない。ルークにとってオリバーは父親ではあるが、魔導術を教えてもらう以外、コレと言って関わりがないと言ってよかった。
ルークの身の回りのことは全てシェリーが行ってきたし、一日一度顔を合わせればいいような関係だ。父親というより地下に籠もっている同居人のイメージの方が強かった。
そのオリバーが魔術のこと以外でルークに話をしようというのは、ルークにとってはとても驚くことだった。
_____________
補足
オリバーは父親らしいことはルークに対して行っていなかったのは、オリバー自身も父親がどういうものかわかっていないからです。ただ、師と仰ぐ人物がオリバーにとって唯一の家族であったがために、その師との生活が基準になっています。
シェリーもオリバーにそこまでの事を求めていなかったことも大きいです。
0
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!
杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!!
※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。
※タイトル変更しました。3/31
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる