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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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「長々と話しましたが、まとめると今回のことはユーフィアさんに灰色の制御石を詳しく調べてもらって、今後の対策をして欲しいと言うことです」
シェリーは勝手に話を切り上げようとする。ユーフィアには国として依頼をしてもらい、自分自身といい加減に向き合ってほしいという狙いも含まれている。
国からの依頼となれば、あの過保護を通り越して、全ての悪意から目を逸らさせているクストも邪魔はできないだろう。
そして、召喚者が何を創り出し、何を行っているのかをエルフ族の女性から聞けば、否が応でも現実と向き合わなければならない。
シェリーはユーフィアを地獄の底にでも蹴る落とすように、現実を突きつけようとしているのだ。
いつまで逃げ続けているのだと。
「え?何で勝手に話を終わらせようとしているのかな?肝心な事を話してないよね?モルディールの街がどうのような状態で、どう解決したか聞いていないけど?」
「ちっ!」
イーリスクロムの最もな言葉にシェリーは舌打ちをする。そして、空中に視線を向け、再びイーリスクロムに視線をむけてから、早口で答えた。
「街の中には解決後にしか入ってないので、普通でしたとしかわかりません。どう解決しかかって、そんなもの浄化すれば済む話です」
と、シェリーが言い終えたと同時に部屋の扉が蹴破られた。
「おい!どういうことだ!」
蹴破って入って来たのは、黒狼クロードだった。それも目つきが悪く何処かの裏組織の幹部かという感じで、文句を口にし、左手には意識がなさそうなクストを引きずっているのだ。
「クスト!!」
その姿を見たユーフィアが床に投げ出されたクストに駆け寄っているが、ルジオーネはやはりそうなったかという感じでため息を吐き、マリアはというと憧れが人物に出会ったかのように目をキラキラさせていた。
そして、文句を言って入ってきたクロードはというと、イーリスクロムに詰め寄って胸ぐらを掴んでいる。
てっきりシェリーにクストが獣人の域を脱したといっても大したことがない、という文句が出るのかと思いきや、文句の矛先はイーリスクロムに向けられているようだ。
「さっき、そこのクソガキが言っていたことは本当なのか!この国の護りはどうなっている!」
どうやら、マルス帝国に影から浸食されているが如く、いいように国民を使われていることを言っているようだ。
しかし、どういう耳をしているのだろうか。シェリーがこの国の警備が甘いという言葉を言った瞬間、シェリーが常時展開していたマップスキルに異変が起こった。クロードを示すピンが点滅したかと思うと、クストを示すピンと一緒にすごい勢いでこちらに戻ってきたのだ。
だから、シェリーは話を切り上げようとした。クストの邪魔が入るとまともに話ができなくなるからだ。
そして、胸ぐらを掴まれたイーリスクロムは目を白黒させている。いきなり何を言っているのかと。
「おい!俺が作り上げた第0師団はどうした!帝国の怪しい動きを早急に察知して対処する専用の師団がいるだろうが!!」
まくし立てるようにクロードが言っているが、肝心のイーリスクロムは何を言われているのか、わかっていないようだ。
しかし、クロードはマルス帝国の異常性かつ脅威を理解していた。だから、この国の防御として、対帝国の専門師団を作っていたのだろう。師団ということは1万人規模だ。クロードがどれだけ帝国を危険視していたかがわかる規模だ。
ただ、この雰囲気だと現在は存在していないのだろう。
「第0師団?」
胸ぐらを掴まれながら、やっとイーリスクロムが呟くが、ただクロードの言葉を繰り返しただけだ。
「おい!ルジオーネ!第0師団はどうなっている!」
イーリスクロムが答えないので、今度は己の血族のルジオーネに矛先を向けた。イーリスクロムの胸ぐらを掴んだまま。
「存在しておりません。その名も初めて聞きました」
ルジオーネの答えにクロードは愕然とする。そして、呻くように『何が起こったのだ』と呟いた。
クロードが現役だったときは存在していた第0師団がイーリスクロムが王の座につき、ルジオーネが軍に所属する期間の間にだ。
それは勿論、魔王討伐戦しかない。
だから、シェリーは予想を口にする。
「討伐戦が10年も続けば、存在しない師団もあるのではないのですか?それから対帝国の師団ということは、ほとんど人族で構成されていたのでは?」
そう、獣人ではなく人族。帝国に入る込めるとすれば、人族しかできない。そして、獣人の悪い癖を排除するためにも人族ではなくてはならなかったはずだ。
「そうだ。·····10年もか。10年もあの戦いが続いたのか」
そう言って、クロードはイーリスクロムから手を離した。
やはり人族で構成された師団だったようだ。なら、10年にも及ぶ討伐戦を生き抜くことは難しいだろう。神の加護でもあれば別だが、魔導師のように魔術に特化しているわけでもなく、獣人族のように力に特化しているわけでもなく、帝国のように魔武器を使っているわけでもなく。ただの人が生き延びる事ができる可能性はほぼ0だ。帝国でさえ、最終戦の生き残りが3人というのが実情だった。
そして、クロードはイーリスクロムに向かって言う。
「第0師団を編成しろ。全て人族でだ。あー····フォルスミスは生き残っているか?まだ、生きているのなら、どういう役割があるかアイツから聞け。それから、「キングコングにそれは無理でしょ」ぶはっ!」
シェリーの突っ込みに真面目に語っていたクロードが吹き出す。
「キングコング?キングコング!!くっ。ぐふっ!」
笑いが漏れ出してしまっている。己の友人を貶めるあだ名を笑うのは如何なものかと、我慢をしているようだが、ツボに嵌ってしまったのだろう。
ハハハハハハハハハハハハハ······
と、部屋中にクロードの笑い声が響き渡った。
シェリーは勝手に話を切り上げようとする。ユーフィアには国として依頼をしてもらい、自分自身といい加減に向き合ってほしいという狙いも含まれている。
国からの依頼となれば、あの過保護を通り越して、全ての悪意から目を逸らさせているクストも邪魔はできないだろう。
そして、召喚者が何を創り出し、何を行っているのかをエルフ族の女性から聞けば、否が応でも現実と向き合わなければならない。
シェリーはユーフィアを地獄の底にでも蹴る落とすように、現実を突きつけようとしているのだ。
いつまで逃げ続けているのだと。
「え?何で勝手に話を終わらせようとしているのかな?肝心な事を話してないよね?モルディールの街がどうのような状態で、どう解決したか聞いていないけど?」
「ちっ!」
イーリスクロムの最もな言葉にシェリーは舌打ちをする。そして、空中に視線を向け、再びイーリスクロムに視線をむけてから、早口で答えた。
「街の中には解決後にしか入ってないので、普通でしたとしかわかりません。どう解決しかかって、そんなもの浄化すれば済む話です」
と、シェリーが言い終えたと同時に部屋の扉が蹴破られた。
「おい!どういうことだ!」
蹴破って入って来たのは、黒狼クロードだった。それも目つきが悪く何処かの裏組織の幹部かという感じで、文句を口にし、左手には意識がなさそうなクストを引きずっているのだ。
「クスト!!」
その姿を見たユーフィアが床に投げ出されたクストに駆け寄っているが、ルジオーネはやはりそうなったかという感じでため息を吐き、マリアはというと憧れが人物に出会ったかのように目をキラキラさせていた。
そして、文句を言って入ってきたクロードはというと、イーリスクロムに詰め寄って胸ぐらを掴んでいる。
てっきりシェリーにクストが獣人の域を脱したといっても大したことがない、という文句が出るのかと思いきや、文句の矛先はイーリスクロムに向けられているようだ。
「さっき、そこのクソガキが言っていたことは本当なのか!この国の護りはどうなっている!」
どうやら、マルス帝国に影から浸食されているが如く、いいように国民を使われていることを言っているようだ。
しかし、どういう耳をしているのだろうか。シェリーがこの国の警備が甘いという言葉を言った瞬間、シェリーが常時展開していたマップスキルに異変が起こった。クロードを示すピンが点滅したかと思うと、クストを示すピンと一緒にすごい勢いでこちらに戻ってきたのだ。
だから、シェリーは話を切り上げようとした。クストの邪魔が入るとまともに話ができなくなるからだ。
そして、胸ぐらを掴まれたイーリスクロムは目を白黒させている。いきなり何を言っているのかと。
「おい!俺が作り上げた第0師団はどうした!帝国の怪しい動きを早急に察知して対処する専用の師団がいるだろうが!!」
まくし立てるようにクロードが言っているが、肝心のイーリスクロムは何を言われているのか、わかっていないようだ。
しかし、クロードはマルス帝国の異常性かつ脅威を理解していた。だから、この国の防御として、対帝国の専門師団を作っていたのだろう。師団ということは1万人規模だ。クロードがどれだけ帝国を危険視していたかがわかる規模だ。
ただ、この雰囲気だと現在は存在していないのだろう。
「第0師団?」
胸ぐらを掴まれながら、やっとイーリスクロムが呟くが、ただクロードの言葉を繰り返しただけだ。
「おい!ルジオーネ!第0師団はどうなっている!」
イーリスクロムが答えないので、今度は己の血族のルジオーネに矛先を向けた。イーリスクロムの胸ぐらを掴んだまま。
「存在しておりません。その名も初めて聞きました」
ルジオーネの答えにクロードは愕然とする。そして、呻くように『何が起こったのだ』と呟いた。
クロードが現役だったときは存在していた第0師団がイーリスクロムが王の座につき、ルジオーネが軍に所属する期間の間にだ。
それは勿論、魔王討伐戦しかない。
だから、シェリーは予想を口にする。
「討伐戦が10年も続けば、存在しない師団もあるのではないのですか?それから対帝国の師団ということは、ほとんど人族で構成されていたのでは?」
そう、獣人ではなく人族。帝国に入る込めるとすれば、人族しかできない。そして、獣人の悪い癖を排除するためにも人族ではなくてはならなかったはずだ。
「そうだ。·····10年もか。10年もあの戦いが続いたのか」
そう言って、クロードはイーリスクロムから手を離した。
やはり人族で構成された師団だったようだ。なら、10年にも及ぶ討伐戦を生き抜くことは難しいだろう。神の加護でもあれば別だが、魔導師のように魔術に特化しているわけでもなく、獣人族のように力に特化しているわけでもなく、帝国のように魔武器を使っているわけでもなく。ただの人が生き延びる事ができる可能性はほぼ0だ。帝国でさえ、最終戦の生き残りが3人というのが実情だった。
そして、クロードはイーリスクロムに向かって言う。
「第0師団を編成しろ。全て人族でだ。あー····フォルスミスは生き残っているか?まだ、生きているのなら、どういう役割があるかアイツから聞け。それから、「キングコングにそれは無理でしょ」ぶはっ!」
シェリーの突っ込みに真面目に語っていたクロードが吹き出す。
「キングコング?キングコング!!くっ。ぐふっ!」
笑いが漏れ出してしまっている。己の友人を貶めるあだ名を笑うのは如何なものかと、我慢をしているようだが、ツボに嵌ってしまったのだろう。
ハハハハハハハハハハハハハ······
と、部屋中にクロードの笑い声が響き渡った。
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