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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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三人の否定する言葉が重なった。
一番トップである国王を殴るということは、国に対して敵意があるとみなされる。子供であれ、そのようなことをすれば始末をされる立場になるだろう。
「だからね。これでも僕は一国の王なんだよ」
どこかで聞いた言葉がイーリスクロムから出てきた。
「だから、なんです?これぐらいでくたばる王なら、居ないほうがいいのでは?」
「いい加減にしろよ!」
「ラースだから、こちらが手を出せないと思っているのですか!」
シェリーの言葉に二人の青狼獣人がいきり立つ。やはり、ラースであることで、シェリーに手を出すことをためらっていた部分はあるようだ。
「一国の王だろうが、間違った事には注意する者は必要ですよね。そう、今回の事は国で解決すべき事だったのではないのですか?裏でマルス帝国が動いていることぐらい掴んでいたのではないのですか?」
「間違っていた?適材適所だよね。この国で冒険者なんてしているのだから、僕が指示することも可能だって知っているはずだよね?」
イーリスクロムはニヤニヤと相変わらず笑って答える。間違ったことなどしていないと。
「第7師団の半分を失って、ビビっただけでは?」
「ああ、それは失敗したって認めるよ。僕の読みが甘かったってね。まさか、第7師団が住人を制圧できないなんて、思わなかったよ。彼は師団長としては未熟だったね」
やはりイーリスクロムは街がどのような状態であったかを知っていたのだ。
「ちっ!」
その言葉にシェリーは舌打ちをする。やはり今回の事は完璧にはめられたのだと。
「だからね。君たちに頼んだのだけど、うまくいったみたいだね。それで、詳しい情報を教えてもらえるかな?」
「その前に私のルーちゃんを解放してください」
「おや?」
イーリスクロムは心外だと、かたをすくめる。まるで人質でも取っているかのような言い方だと。
「ルーク君は今は広報部に行ってもらっているはずだよ?広報部は全師団と繋がりがあるからね。勉強になっているはずだよ。そうだよね?」
イーリスクロムはクストにも確認の意味を込めて尋ねる。それに対しクストも『そのようになっております』と肯定する。
ルークの事は真面目に研修の様な形で行なっていることにシェリーは少し安堵した。それに、広報部のサリーのところなら、悪い扱いはしないだろうと。
「なら、いいです。今回の原因はコレになります」
そう言ってシェリーはユーフィアに渡した同じ小瓶をテーブルの上に置く。灰色の液体が入った小瓶だ。
そして、青い光沢のある液体が入った小瓶を横に並べた。
三人の目が2つの小瓶に向けられる。こんなモノで今回の事件を引き起こせるのかと言う不信な目だ。
「この青い方は別の形で目にしていると思います。私よりユーフィアさんの方が詳しいので、説明をお願いします」
シェリーの言葉にユーフィアの肩が跳ね上がる。ユーフィアの挙動に隣にいるクストが気が付きシェリーを睨みつけた。
「おい。ユーフィアに何を言わす気だ。嬢ちゃんが説明しろ!」
シェリーを威圧するクストにユーフィアが慌てて止めに入る。クストの手を取って首を横に振った。
「クスト。いいの。この青い液体は奴隷の反抗心を押さえつける物なの。逆らうと痛みを伴う様に、主人となる者の血を混ぜて額に石の形として神経を侵食する魔道具なの」
「ユーフィア。こいつの質問になんて答えなくていい」
己の創り出した物をユーフィアが声を押し殺しながら言う姿に、クストは何も話さなくていいと抱きしめる。そして、シェリーに対し唸り声を混ぜながら威嚇する。
「またか!また、ユーフィアを苦しめようとするのか!」
シェリーも、またかと言いたかったが、言葉を飲み込み、代わりにため息がこぼれ出た。
「はぁ。だから、師団長さんの横やりが入らない状態で話したかったのですよ。今回の事はユーフィアさんは無関係というわけにはいきません」
そう今回の事件をイーリスクロムに説明するにはユーフィアが必要なのだ。シェリー自身どうしてあの様に街の住人が操られたか分からなかったが、ユーフィアは灰色の液体を見ただけで、これがどういう物か理解していた。
因みにシェリーの眼で見てみるとこういう感じだ。
【意思なき隷属の触媒】
主の指示を忠実に行動する。意思をなくし生きる屍とする。ただ、指示が無ければ生きることの最低限の行動を取ることができる。
このモノに対しての説明でしかない。ユーフィアは意思を奪うと言った。恐らくユーフィアには違う観点でこのモノを視ていたのだろう。
シェリーは灰色の液体を示して言った。
「コレを作った者はユーフィアさんが帝国に残していった魔道具に関する書物を参考に作っています」
「おい!嘘をつくな!ユーフィアがあの帝国に残している本に奴隷に関する事は無いはずだ!全てユーフィアの手元にある!」
クストは言い切った。帝国に残している書物に奴隷に関する物はないと。恐らく書物は無いのかもしれない。だからこそ、この様なモノが出来上がってしまったのだろう。
「はぁ。私は参考にと言いました。記した書物が無くても、奴隷の制御石を作る原盤と言っていいものは帝国に残ってますよね。それを勇者と同じ召喚者に作らせているのです。魔術の基礎がない召喚者に」
一番トップである国王を殴るということは、国に対して敵意があるとみなされる。子供であれ、そのようなことをすれば始末をされる立場になるだろう。
「だからね。これでも僕は一国の王なんだよ」
どこかで聞いた言葉がイーリスクロムから出てきた。
「だから、なんです?これぐらいでくたばる王なら、居ないほうがいいのでは?」
「いい加減にしろよ!」
「ラースだから、こちらが手を出せないと思っているのですか!」
シェリーの言葉に二人の青狼獣人がいきり立つ。やはり、ラースであることで、シェリーに手を出すことをためらっていた部分はあるようだ。
「一国の王だろうが、間違った事には注意する者は必要ですよね。そう、今回の事は国で解決すべき事だったのではないのですか?裏でマルス帝国が動いていることぐらい掴んでいたのではないのですか?」
「間違っていた?適材適所だよね。この国で冒険者なんてしているのだから、僕が指示することも可能だって知っているはずだよね?」
イーリスクロムはニヤニヤと相変わらず笑って答える。間違ったことなどしていないと。
「第7師団の半分を失って、ビビっただけでは?」
「ああ、それは失敗したって認めるよ。僕の読みが甘かったってね。まさか、第7師団が住人を制圧できないなんて、思わなかったよ。彼は師団長としては未熟だったね」
やはりイーリスクロムは街がどのような状態であったかを知っていたのだ。
「ちっ!」
その言葉にシェリーは舌打ちをする。やはり今回の事は完璧にはめられたのだと。
「だからね。君たちに頼んだのだけど、うまくいったみたいだね。それで、詳しい情報を教えてもらえるかな?」
「その前に私のルーちゃんを解放してください」
「おや?」
イーリスクロムは心外だと、かたをすくめる。まるで人質でも取っているかのような言い方だと。
「ルーク君は今は広報部に行ってもらっているはずだよ?広報部は全師団と繋がりがあるからね。勉強になっているはずだよ。そうだよね?」
イーリスクロムはクストにも確認の意味を込めて尋ねる。それに対しクストも『そのようになっております』と肯定する。
ルークの事は真面目に研修の様な形で行なっていることにシェリーは少し安堵した。それに、広報部のサリーのところなら、悪い扱いはしないだろうと。
「なら、いいです。今回の原因はコレになります」
そう言ってシェリーはユーフィアに渡した同じ小瓶をテーブルの上に置く。灰色の液体が入った小瓶だ。
そして、青い光沢のある液体が入った小瓶を横に並べた。
三人の目が2つの小瓶に向けられる。こんなモノで今回の事件を引き起こせるのかと言う不信な目だ。
「この青い方は別の形で目にしていると思います。私よりユーフィアさんの方が詳しいので、説明をお願いします」
シェリーの言葉にユーフィアの肩が跳ね上がる。ユーフィアの挙動に隣にいるクストが気が付きシェリーを睨みつけた。
「おい。ユーフィアに何を言わす気だ。嬢ちゃんが説明しろ!」
シェリーを威圧するクストにユーフィアが慌てて止めに入る。クストの手を取って首を横に振った。
「クスト。いいの。この青い液体は奴隷の反抗心を押さえつける物なの。逆らうと痛みを伴う様に、主人となる者の血を混ぜて額に石の形として神経を侵食する魔道具なの」
「ユーフィア。こいつの質問になんて答えなくていい」
己の創り出した物をユーフィアが声を押し殺しながら言う姿に、クストは何も話さなくていいと抱きしめる。そして、シェリーに対し唸り声を混ぜながら威嚇する。
「またか!また、ユーフィアを苦しめようとするのか!」
シェリーも、またかと言いたかったが、言葉を飲み込み、代わりにため息がこぼれ出た。
「はぁ。だから、師団長さんの横やりが入らない状態で話したかったのですよ。今回の事はユーフィアさんは無関係というわけにはいきません」
そう今回の事件をイーリスクロムに説明するにはユーフィアが必要なのだ。シェリー自身どうしてあの様に街の住人が操られたか分からなかったが、ユーフィアは灰色の液体を見ただけで、これがどういう物か理解していた。
因みにシェリーの眼で見てみるとこういう感じだ。
【意思なき隷属の触媒】
主の指示を忠実に行動する。意思をなくし生きる屍とする。ただ、指示が無ければ生きることの最低限の行動を取ることができる。
このモノに対しての説明でしかない。ユーフィアは意思を奪うと言った。恐らくユーフィアには違う観点でこのモノを視ていたのだろう。
シェリーは灰色の液体を示して言った。
「コレを作った者はユーフィアさんが帝国に残していった魔道具に関する書物を参考に作っています」
「おい!嘘をつくな!ユーフィアがあの帝国に残している本に奴隷に関する事は無いはずだ!全てユーフィアの手元にある!」
クストは言い切った。帝国に残している書物に奴隷に関する物はないと。恐らく書物は無いのかもしれない。だからこそ、この様なモノが出来上がってしまったのだろう。
「はぁ。私は参考にと言いました。記した書物が無くても、奴隷の制御石を作る原盤と言っていいものは帝国に残ってますよね。それを勇者と同じ召喚者に作らせているのです。魔術の基礎がない召喚者に」
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