番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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 シェリーはニコニコとルークが食事を食べる姿を見て、機嫌よく相槌を打ってルークの話を聞いている。
 その向かい側では珍しくオリバーが一緒に食事を取っているが、これはルークが騎士養成学園に行くまでの食事風景である。一日の内の一食は共に食事を取ることをシェリーはオリバーに課していた。

 ただ、そこにカイルが混じっているが、シェリーの横で機嫌のいいシェリーを見て、カイルもご機嫌である。

「ルーちゃんが楽しそうで良かった。お姉ちゃん心配していたけど、安心したよ」

「うん。それで、明日から友達と一緒に一週間泊まりに····あっ」

 ルークがシェリーに爆弾発言をした。ずっと、休みの間はルークが家に居るものだと思い込んでいたシェリーにとっては寝耳に水だ。

 そのシェリーはというと笑顔のまま固まってしまった。

「姉さん?」

 ルークは固まってしまったシェリーの目の前で手を振ってみるが、反応がない。

「えっと····」

 ルークはどうしたらいいかと、自分の父親を見るが黙々と食事を続けているだけで、当てにできそうにない。
 そのシェリーの隣にいるカイルに助けの視線を向けても、カイルもニコニコとシェリーを見ているだけだ。

「姉さん、心配しなくてもいいよ。あの見学に来ていたランフォンス殿下が声を掛けてくださって、友達3人と軍の見学を兼ねて王宮に····」

 ルークは言葉を続けられなかった。姉であるシェリーがとてつもなく怒っていることがわかったからだ。

「クソ狐の指示?」

「く··くそぎつね?」

 ルークは誰のことを指しているのかわからず、首を傾げてしまう。
 そこにカイルがシェリーの言いたいことを代弁した。

「シェリーは多分、国王の指示で王宮に来るように言われたのかって聞きたいのだと思うよ?」

 その言葉にルークは驚く、ランフォンス殿下の名前しか出していないのに、どうして国王陛下に繋がってしまうのかと。

「ね、姉さん。ランフォンス殿下はあの結果発表の時に僕に突っかかってきた子を取り巻きにしているんだって、その子が変わるきっかけになった僕が気になったって言ってきただけで、国王陛下は関係ないよ」

 その言葉にシェリーは立ち上がり

「筋肉ウサギ共をしばいてくればいいってことね」

 と、にこやかにルークに言った。顔と言葉が全く合っていない。その言葉にルークは慌ててシェリーの手を握って座るように促し

「あ、あのね。軍の人と繋がりを作るのも大切だって聞いたし、いい機会だと思うんだけど?」

 その言葉を聞いてシェリーはハッとする。確かにルークの将来のことを考えると、大切なことだと。

「い、一週間後には帰ってくる?迎えに行った方がいい?」

 まるで出張に行く恋人に戻ってくる日を確認しているようだ。しかし、シェリーは本気で一週間後に軍部の方に迎えにいこうという算段を頭の中で考えていた。

「大丈夫だよ。姉さんも忙しいでしょ?帰りはライターさんの所に寄ってから帰ろうかと思っているんだ。ライターさんにも話したいこといっぱいあるし」

 ライター。ルークに騎士の剣を教えてもらうために、わざわざギラン共和国まで探しに行った人物であり、あの勇者ナオフミの保護者的な役割をしていた人物でもある。
 シェリーもルークからそのように言われてしまったら、引かざるおえない。

「そ、そうね。ライターさんにはお世話になったものね。一週間後には必ず戻って来てね」

 シェリーはルークの手を取って懇願した。傍からみれば、その姿は恋人同士のようである。

 そんな姿をオリバーは呆れた目で見ており、カイルはニコニコと変わらない笑顔だ。
 そして、カイルは視線を西側の方に向ける。ここからは壁しか見えない西側に。

 そう、この采配は全てニールが裏で糸を引いてやった事だ。


______________

リビング side


 シェリーが落ち込みながら、キッチンで片付けをしている隣の部屋で、カイルとルークが向かい合って座っている。
 オリバーはというと、彼にとって寝る時間なので、地下の自分の部屋に戻っていったのでこの場にはいない。

「よく、ここまで話を持って行けたものだな」

 カイルはニールの根回しに関心しながら言った。それはそうだろう。一介のギルドの補佐官でしかないニールが軍に学生を預かるように口を出したのだ。
 それもこの国の王子であるランフォンス第二王子を引っ張り出してだ。

「今回、姉さんとカイルさんに頼みたいことは、国としても重く受け止めているらしいのですが、今の現状では手が足りないようで、この件に回せる人が居ないようです」

「ということは、これは国からギルドに依頼をしたということか」

「ええ、なんでも第7師団の半分が消息を絶ったと聞きました」

 師団の半分。これは大事おおごとだ。この国の一個師団は約1万。その半分といえば、5千人との連絡が取れなくなったということだ。

 かなりの問題が起こっているようだ。

 南。

 カイルは何処ともなく声を掛ける。

「ヨーコさん。何か知っているか?」

 陽子の愚者の常闇ダンジョンは王都の南50キロメルkmの位置にある。何かしら情報を持っているかもしれない。

『えー?なんでも陽子さんが知っていると思わないで欲しいなぁ』

 突然の声にルークの肩がビクリと反応する。そして、リビングの室内を見渡していた。
 もしかして、ルークは陽子の存在を知らないのだろうか。

『でも、マルス帝国の奴らが南の方から頻繁に来るよ。陽子さんがわかるのはこれぐらい』

 その陽子の言葉にカイルは頷く。もしかしたら、マルス帝国が裏にいるかもしれないと、心に刻んだ。

「カイルさん、さっきのは?」

「ん?シェリーの友達だよ」

 その言葉にルークは納得した。あの姉の友達というなら、あれぐらい普通なのだろうと。

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