番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

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「コジマさん。子供たちにきちんとお話をされた方が宜しいのではないのでしょうか?」

 番が番を守る行動は、シェリーが散々目にしてきた光景だ。ナオフミの行動がとある隠れ家の情景と重なってしまい、シェリー自身もイラつきが酷くなる。

「何をや?」

 わかっているはずなのに、とぼけた返答をするナオフミの癖もシェリーを苛つかせる原因でもある。

「エリーさんはお勉強が嫌だそうです。確認してみると、一般常識も備わっていないと、コマツさん基準の常識は通じないところも出てきますよね。そういうところです」

 一般常識がないと指摘されたナオフミは心当たりがあるのか『ああ』と言葉を漏らす。

「あと、私は散々目にしてきましたが、子供を放置して番しか見ない親は嫌いです」

「え?」

 シェリーのこの言葉に反応するとすれば、ナオフミかビアンカぐらいかと思えば、思っていないところから声が聞こえてきた。

 ミゲルロディアだ。

 シェリーが視線を向けると、片手で口元を押さえ、何か焦った感じにソワソワしていた。

「あ、いや。娘が嫁に行くときに、育ててもらったことには感謝はしてるが、それだけだと言われたと思い出してな。そうか、嫌われていたのか」

 ミゲルロディアのその言葉を聞いたナオフミはいきなり立ち上がって、涙目で睨んでいるエリーを抱き上げた。

「エリー。家もええけど、外には楽しいところがたくさんあるんやで!明日はみんなで遊びに行こかぁ」

 その言葉に遠巻きで見ていた4人の子供たちもナオフミの側に寄って来た。

「それじゃ、子供たちを休ませなあかんから部屋に戻るわ」

 ナオフミはビアンカを促して、子供たちを部屋の外に出した。そして、エリーを抱えたナオフミが振り返りシェリーを見る。

「なぁ。佐々木さん、俺は佐々木さんに感謝してるんや。俺はこの理不尽な世界で一人じゃなかったと思うことができたんや。だから、中途半端になってしもたけど、壊すのをやめたんや。おおきに佐々木さん」

 そう言ってナオフミは扉を閉めた。

 壊すのを止めた。
 世界を壊すのを止めた。

 ナオフミなら世界を壊すことは出来たかもしれない。シェリーの破壊者の称号の元になった頽壊たいかい者。あのオリバーの魔力を歪め、扱うことをできなくさせた勇者。

 シェリーは大きくため息を吐く。あのナオフミは軽口を叩いて軽い感じだが、愚かではない。召喚した者達の言うことを従順に聞いている仕草を示しながら、虎視眈々と復讐の時を狙っていたのだ。

「やはり、あの者は壊したかったのか」

 ナオフミの最後の言葉にミゲルロディアはやはりと言った。ビアンカを攫った者を探しすという行動を示しながらも、グローリアとラースの破壊具合ではグローリア国の方が断然に破壊されているのだ。
 ラース公国は人が住む町や村は今でも残骸として形は残っている。ただ、焦土化が酷く、そこに住み続けられないから、小さな町や村は打ち捨てられているのだ。
 だが、グローリア国では執念深さが見られるほど全てのモノが破壊され、正に焦土化と言って有り様だ。一度、白き神が言っていた『魔女の家が残っていれば』と。赤き魔女がグローリアに居を移して少なくとも1500年は経っているはずだ。その歳月を何事もなく存在していた建物でさえ壊すほどの徹底的に破壊していた。

「あの者はシェリーミディアの事をササキと呼んでいたが、そなたも「閣下」」

 シェリーはミゲルロディアの言葉を遮る。これ以上話さないで欲しいと首を横に振る。

「閣下。世界は定期的にこの世界の為に異質な者を存在させています。一人ではありません。今現在私を含めて世界が世界の為に存在させている者は5人おります。」

 そう、この世界に転生してきた者はシェリーが知っているだけで、陽子、ユーフィア、エン、アイラが存在してる。

「だが、あの者はシェリーミディアがいる事で破壊を止めたと言った。我々が今ここに存在しているのはそなたのお陰ということだ。13年前、幼いそなたはあの者に声を掛けて破壊を止めてくれたことに感謝を」

 そう言って、ミゲルロディアはシェリーに頭を下げた。一国の国主であり、一族の長でもあるミゲルロディアが、一族の小娘に頭を下げたのだ。そこまですることはないと、シェリーは止めようと立ち上がろうとしても、カイルがシェリーの腰を抱えており、立ち上がれない。

「シェリーちゃん。ありがとう」

 オーウィルディアまで頭を下げてしまった。これにシェリーは慌てて声を上げる。

「私に頭を下げないでください。あの時はただ、生まれたばかりの弟を殺されてはたまらないと追い出すのに必死だっただけなのです」

 思ったよりも声が部屋に響いてしまった。これは絶対にナオフミに知られてはいけないことだったと、口を塞ぎ部屋の扉を見るが、扉が開く様子がないと、ホッとため息が出たのだった。
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