327 / 774
24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
316
しおりを挟む
「ナヴァル公爵夫人。このバカをちょっと貸してください」
ユーフィアに許可を取っているようで、強制的に排除するようにグレイが青狼獣人の青年の首根っこを掴む。
「おい、俺はナヴァル公爵家の嫡男だぞ!わかっているのか!」
ヴァリー青年が偉そうに身分をひけらかしているが、その首根っこを掴んでいるグレイはというと
「俺はラース公国の公子だ」
身分的をひけらかす相手を間違えていた。まさか自分より身分が上の狼獣人は父親しか存在しないと思っていたヴァリー青年からすれば寝耳に水だったのだろう。口をパカリと開けてグレイを見ている。
「お手柔らかにお願いね」
ユーフィアは息子が侵入してきた窓から連行されている姿をニコニコしながら見送ったあと、シェリーの方に向き直って申しわけなさそうな表情をした。
「ごめんなさい。いつもは良い子なのだけど、クストから何か言われたみたいで」
「師団長さんよりましなので、別にかまいませんが、人が話しているときに邪魔されるのは腹立たしいので、マリアさんに再教育してもらってください」
シェリーの中のクストの評価はかなり低いようである。
「はぁ。それでですね。その魔武器の製作者は恐らく以前話した召喚者だと思われます。ユーフィアさんがマルス帝国で残された物を解読して性能の向上をしているのではないのでしょうか」
シェリーの話にユーフィアの顔色がだんだん悪くなってきた。
「なので、その魔武器に対抗する何かを作ってもらえませんか?キョウさんは置型がいいとおっしゃっていましたが」
「キョウさんが置型に?わかりました」
ユーフィアから了承を得たところで、応接室の外側の廊下から複数の足音が鳴り響いて来た。
と同時に入室の許可を得ることもなく扉が開き、人の姿が確認できたところで、シェリーはローテーブルの上に装飾品の様に置かれていた灰皿を手に取り、扉に向かって投げつけた。
「うぉっ」
重そうな灰皿がこめかみをかすめ、廊下を挟んだ先の壁にめり込んだ様を見せつけられた人物は扉を少し開けたまま固まってしまった。その人物の後ろから、シェリーが何度か見たことがある人物のあ然とした表情で壁を見ている横顔が確認できた。
「なんで第6師団の方々がここにいるのですか?職権乱用ですか?」
顔見知りの人物はシェリーが問題を起こすたびに連行、もとい保護をしていた第6師団の兵士の一人であり、その後ろにも知っている者達がいた。
恐らくユーフィアに何かあっても直ぐにクストが駆けつけられないため、第6師団の者が常駐か駆けつけるようになっているのだろう。
しかし、駆けつけてきた第6師団の者達は一言も発せず、第6師団に不満そうな声を上げたシェリーを注視していた。そして、その表情が徐々に変わっていく。
憧れの人物が目の前にいるような、若しくは一目惚れにおちてしまったかのような高揚した表情を···。
今、グレイはここにはいない。慌ててシェリーの隣にいるカイルが外套をシェリーにまとわし、オルクスがグレイを呼びに窓から外に出ていき、リオンが第6師団の者達を部屋から追い出し、スーウェンが結界を張った。
その様子をユーフィアは何が起こったのかとオロオロしなが見ている。
「ユーフィアさん。師団長さんは職権乱用をしてこのような事をしているのですか?普通は個人的に兵士を自宅警護につかすことはできないのでは?」
「ええーと、ごめんなさい。私、クストがヴァリーに留守を頼むと言っていたのは知っていたけど、師団の人たちに警護を頼んでいたなんて知らなかったわ。知っていたら流石に止めていたわよ」
ユーフィアでもその辺りの常識はわかっていたようだ。
「そうですか。師団長さんの暴走ですか。まぁ、用件はすみましたので帰ります。あと、これを差し上げます」
そう言ってシェリーはこぶし大の赤い鉱石をローテーブルの上に出した。
『アルテリカの火』だ。
「今回の報酬です。『アルテリカの火』と呼ばれる物理攻撃も魔術攻撃も防ぐ事ができるものです。通常は粉にしたものを円状にすることで結界を張ることできるのですが、ユーフィアさんなら、別の使用方法を見いだせるかと思います」
赤い鉱石をユーフィアは手に取り、鉱石を覗き込むように翳して見る。
「こ、これは、なんて素晴らしい鉱石なのでしょう。この世界には、まだまだこの様に興味深い物がたくさんあるのですね。シェリーさん、ありがとうございます」
「今回は採取許可が下りたので特別です」
そう、とても貴重であり、ギラン共和国が国を護るためにしか使用してこなかった物だ。それもフェクトス総統とダンジョンマスターの許可が得られて初めて採取ができる『アルテリカの火』。
これはユーフィアの番であるクストの行為を無にする代物だ。
_____________
補足
クストはシェリーからユーフィアが好きそうな鉱石がダンジョンにあると上手く乗せられて、鉱石採取に行っております。クストが手土産の鉱石を持って戻ってきたとき、ユーフィアの反応は·····。
シェリーはさり気なく仕返しをした。
ユーフィアに許可を取っているようで、強制的に排除するようにグレイが青狼獣人の青年の首根っこを掴む。
「おい、俺はナヴァル公爵家の嫡男だぞ!わかっているのか!」
ヴァリー青年が偉そうに身分をひけらかしているが、その首根っこを掴んでいるグレイはというと
「俺はラース公国の公子だ」
身分的をひけらかす相手を間違えていた。まさか自分より身分が上の狼獣人は父親しか存在しないと思っていたヴァリー青年からすれば寝耳に水だったのだろう。口をパカリと開けてグレイを見ている。
「お手柔らかにお願いね」
ユーフィアは息子が侵入してきた窓から連行されている姿をニコニコしながら見送ったあと、シェリーの方に向き直って申しわけなさそうな表情をした。
「ごめんなさい。いつもは良い子なのだけど、クストから何か言われたみたいで」
「師団長さんよりましなので、別にかまいませんが、人が話しているときに邪魔されるのは腹立たしいので、マリアさんに再教育してもらってください」
シェリーの中のクストの評価はかなり低いようである。
「はぁ。それでですね。その魔武器の製作者は恐らく以前話した召喚者だと思われます。ユーフィアさんがマルス帝国で残された物を解読して性能の向上をしているのではないのでしょうか」
シェリーの話にユーフィアの顔色がだんだん悪くなってきた。
「なので、その魔武器に対抗する何かを作ってもらえませんか?キョウさんは置型がいいとおっしゃっていましたが」
「キョウさんが置型に?わかりました」
ユーフィアから了承を得たところで、応接室の外側の廊下から複数の足音が鳴り響いて来た。
と同時に入室の許可を得ることもなく扉が開き、人の姿が確認できたところで、シェリーはローテーブルの上に装飾品の様に置かれていた灰皿を手に取り、扉に向かって投げつけた。
「うぉっ」
重そうな灰皿がこめかみをかすめ、廊下を挟んだ先の壁にめり込んだ様を見せつけられた人物は扉を少し開けたまま固まってしまった。その人物の後ろから、シェリーが何度か見たことがある人物のあ然とした表情で壁を見ている横顔が確認できた。
「なんで第6師団の方々がここにいるのですか?職権乱用ですか?」
顔見知りの人物はシェリーが問題を起こすたびに連行、もとい保護をしていた第6師団の兵士の一人であり、その後ろにも知っている者達がいた。
恐らくユーフィアに何かあっても直ぐにクストが駆けつけられないため、第6師団の者が常駐か駆けつけるようになっているのだろう。
しかし、駆けつけてきた第6師団の者達は一言も発せず、第6師団に不満そうな声を上げたシェリーを注視していた。そして、その表情が徐々に変わっていく。
憧れの人物が目の前にいるような、若しくは一目惚れにおちてしまったかのような高揚した表情を···。
今、グレイはここにはいない。慌ててシェリーの隣にいるカイルが外套をシェリーにまとわし、オルクスがグレイを呼びに窓から外に出ていき、リオンが第6師団の者達を部屋から追い出し、スーウェンが結界を張った。
その様子をユーフィアは何が起こったのかとオロオロしなが見ている。
「ユーフィアさん。師団長さんは職権乱用をしてこのような事をしているのですか?普通は個人的に兵士を自宅警護につかすことはできないのでは?」
「ええーと、ごめんなさい。私、クストがヴァリーに留守を頼むと言っていたのは知っていたけど、師団の人たちに警護を頼んでいたなんて知らなかったわ。知っていたら流石に止めていたわよ」
ユーフィアでもその辺りの常識はわかっていたようだ。
「そうですか。師団長さんの暴走ですか。まぁ、用件はすみましたので帰ります。あと、これを差し上げます」
そう言ってシェリーはこぶし大の赤い鉱石をローテーブルの上に出した。
『アルテリカの火』だ。
「今回の報酬です。『アルテリカの火』と呼ばれる物理攻撃も魔術攻撃も防ぐ事ができるものです。通常は粉にしたものを円状にすることで結界を張ることできるのですが、ユーフィアさんなら、別の使用方法を見いだせるかと思います」
赤い鉱石をユーフィアは手に取り、鉱石を覗き込むように翳して見る。
「こ、これは、なんて素晴らしい鉱石なのでしょう。この世界には、まだまだこの様に興味深い物がたくさんあるのですね。シェリーさん、ありがとうございます」
「今回は採取許可が下りたので特別です」
そう、とても貴重であり、ギラン共和国が国を護るためにしか使用してこなかった物だ。それもフェクトス総統とダンジョンマスターの許可が得られて初めて採取ができる『アルテリカの火』。
これはユーフィアの番であるクストの行為を無にする代物だ。
_____________
補足
クストはシェリーからユーフィアが好きそうな鉱石がダンジョンにあると上手く乗せられて、鉱石採取に行っております。クストが手土産の鉱石を持って戻ってきたとき、ユーフィアの反応は·····。
シェリーはさり気なく仕返しをした。
0
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる