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24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
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「まぁまぁ、ようこそいらっしゃいました」
ナヴァル公爵家の玄関でシェリーとそのツガイたちはユーフィアに迎え入れられていた。
陽子から第6師団長のクストがダンジョンに入ったと連絡を受けた為、早速シェリーはユーフィアに訪問の手続きをして、シェリーはナヴァル公爵家の門を叩くこととなったのだ。
しかし、そこにはユーフィア以外の人物もいた。金狼獣人のマリアがいることは想定内だ。彼女はユーフィアの侍女なのだから、この場にいるのは何もおかしくはない。
問題は第6師団長を小さくしたような人物だ。その人物からなぜかシェリーは威嚇されている。
きっと己の番から数日離れなければならないので、息子を家に呼び寄せたのだろう。確か上の子供はシェリーと同じぐらいの歳だったと記憶している。
「ヴァリー、お客様の前で何をしているの?」
ユーフィアからヴァリーと呼ばれた人物は玄関先で剣を抜いていた。訪問者に対して絶対にその態度はしてはいけないということをわかっていないのだろうか。
「母上!この者達は危険です!中にお入りください」
それも危険人物認定をされているようだ。ヴゥーと威嚇の声まで聞こえてくる。
「ヴァリー様。公爵家の者として、その態度はいただけません」
後ろから金狼獣人のマリアがヴァリーと呼んだ者の首根っこを押さえ、屋敷の中に引きずりこんで行った。
「シェリーさん。ごめんなさい。クストが少し家を空けるからと言って息子を軍から呼び寄せたのよ。留守番を頼むって、私がいるのにおかしな事を言うのよ」
ユーフィアはシェリーに謝って、邸宅の中に入るように勧めながら、こういう事になった経緯を口にした。
「まぁ、昔からあのような態度でしたので、今更です」
シェリーとユーフィアがクストの目を盗んでお互いが会っていれば、必然的に二人の子供にも会うことになるのだが、なぜか彼らから敵対意識をシェリーは持たれていた。いや、ただ単に母親を取られたような気分になっていただけかもしれない。
ユーフィアから応接室に案内され、座るように促され、シェリーはソファに座る。
今日はいつもの草臥れた装いではなく、訪問用のドレスを身に着けていた。仮にも公爵家を訪ねるのだシェリーにも最低限のマナーというものは理解している。国王に呼び出されても草臥れた服のままだったが····。
シェリーの装いにツガイ達が朝から騒がしかったがそれは置いといて、ここに来た用件をシェリーは話し出す。
「今回のお願いはフィーディス商会の商船の事でお願いに来ました」
「あのザックさんの船のこと?」
「ええ、最近ドドール国の船に偽装してマルス帝国が商船を襲撃しているそうです」
そう、シェリーが言うと、ユーフィアは何か慌てたように腰を上げ
「もしかして、光の巫女様になにかありましたか?」
と言った。ユーフィアはこの事に関してなにか知っているようだ。
「何かご存知で?」
「ええ、シェリーさんに炎国に行くように勧められて行った時、私、炎国の光の巫女様に間違われて攫われたのです」
「は?」
思ってもいない告白だった。光の巫女に間違われて攫われた?このユーフィアが?確かにシェリーは炎国の話をユーフィアから聞いてはいたが、誘拐されていたとは初耳だった。
「それも炎国から奴隷船に転移されて、自力で逃げましたけど、まだ、サウザール公爵は諦めていなかったのですか?」
「それ誰かに話しました?」
「クストに話しましたし、ザックさんもご存知のはず。あ、でもサウザール公爵の名は出していませんよ。危険ですから。」
それを聞いたシェリーは思わず天井を仰ぎ見る。なぜ、その事が炎王の耳に入っていない。炎国で転移が使われたのなら問題に上がっていそうな話だ。
「ユーフィアさん。その話を炎国の誰かに話していただけたのなら····いえ、それは今更ですね」
リリーナがあの呪もどきの病に罹らなくて済んだのではと言いそうになったが、炎国で転移を使われて大事になっていなかったと言うことは、この話がどこかで握り潰されたか、職務怠慢だったかのどちらかだ。現にシェリーが横目でリオンを確認してみると初耳だと言う表情をしている。
「すまないが、それはいつの話だ?」
案の定、リオンが疑問を口にした。
「5年前でしょうか」
かなり前の話だった。リオンは小言で『そんな話は聞いていない』と頭を抱えている。
「ユーフィアさん、それで本題なのですが、その商船の襲撃に魔武器が使われているそうなのです。それもかなり高性能な物のようです。以前お話をしましたが、それを作った者は恐らくs「いい加減に出ていけ!」」
シェリーの話を遮るように、先程マリアに連れて行かれたヴァリーと呼ばれた青狼獣人の青年が窓から侵入してきた。
人が大事な話をしているときに割り込んで来たことでシェリーは苛立ちを顕にし、立ち上がろうとしたところで、隣に座っていたカイルに引き止められた。
「シェリーが相手にすることはないよ」
すごくキラキラした笑顔でカイルから言われた。カイルも内心怒っているようだ。
ナヴァル公爵家の玄関でシェリーとそのツガイたちはユーフィアに迎え入れられていた。
陽子から第6師団長のクストがダンジョンに入ったと連絡を受けた為、早速シェリーはユーフィアに訪問の手続きをして、シェリーはナヴァル公爵家の門を叩くこととなったのだ。
しかし、そこにはユーフィア以外の人物もいた。金狼獣人のマリアがいることは想定内だ。彼女はユーフィアの侍女なのだから、この場にいるのは何もおかしくはない。
問題は第6師団長を小さくしたような人物だ。その人物からなぜかシェリーは威嚇されている。
きっと己の番から数日離れなければならないので、息子を家に呼び寄せたのだろう。確か上の子供はシェリーと同じぐらいの歳だったと記憶している。
「ヴァリー、お客様の前で何をしているの?」
ユーフィアからヴァリーと呼ばれた人物は玄関先で剣を抜いていた。訪問者に対して絶対にその態度はしてはいけないということをわかっていないのだろうか。
「母上!この者達は危険です!中にお入りください」
それも危険人物認定をされているようだ。ヴゥーと威嚇の声まで聞こえてくる。
「ヴァリー様。公爵家の者として、その態度はいただけません」
後ろから金狼獣人のマリアがヴァリーと呼んだ者の首根っこを押さえ、屋敷の中に引きずりこんで行った。
「シェリーさん。ごめんなさい。クストが少し家を空けるからと言って息子を軍から呼び寄せたのよ。留守番を頼むって、私がいるのにおかしな事を言うのよ」
ユーフィアはシェリーに謝って、邸宅の中に入るように勧めながら、こういう事になった経緯を口にした。
「まぁ、昔からあのような態度でしたので、今更です」
シェリーとユーフィアがクストの目を盗んでお互いが会っていれば、必然的に二人の子供にも会うことになるのだが、なぜか彼らから敵対意識をシェリーは持たれていた。いや、ただ単に母親を取られたような気分になっていただけかもしれない。
ユーフィアから応接室に案内され、座るように促され、シェリーはソファに座る。
今日はいつもの草臥れた装いではなく、訪問用のドレスを身に着けていた。仮にも公爵家を訪ねるのだシェリーにも最低限のマナーというものは理解している。国王に呼び出されても草臥れた服のままだったが····。
シェリーの装いにツガイ達が朝から騒がしかったがそれは置いといて、ここに来た用件をシェリーは話し出す。
「今回のお願いはフィーディス商会の商船の事でお願いに来ました」
「あのザックさんの船のこと?」
「ええ、最近ドドール国の船に偽装してマルス帝国が商船を襲撃しているそうです」
そう、シェリーが言うと、ユーフィアは何か慌てたように腰を上げ
「もしかして、光の巫女様になにかありましたか?」
と言った。ユーフィアはこの事に関してなにか知っているようだ。
「何かご存知で?」
「ええ、シェリーさんに炎国に行くように勧められて行った時、私、炎国の光の巫女様に間違われて攫われたのです」
「は?」
思ってもいない告白だった。光の巫女に間違われて攫われた?このユーフィアが?確かにシェリーは炎国の話をユーフィアから聞いてはいたが、誘拐されていたとは初耳だった。
「それも炎国から奴隷船に転移されて、自力で逃げましたけど、まだ、サウザール公爵は諦めていなかったのですか?」
「それ誰かに話しました?」
「クストに話しましたし、ザックさんもご存知のはず。あ、でもサウザール公爵の名は出していませんよ。危険ですから。」
それを聞いたシェリーは思わず天井を仰ぎ見る。なぜ、その事が炎王の耳に入っていない。炎国で転移が使われたのなら問題に上がっていそうな話だ。
「ユーフィアさん。その話を炎国の誰かに話していただけたのなら····いえ、それは今更ですね」
リリーナがあの呪もどきの病に罹らなくて済んだのではと言いそうになったが、炎国で転移を使われて大事になっていなかったと言うことは、この話がどこかで握り潰されたか、職務怠慢だったかのどちらかだ。現にシェリーが横目でリオンを確認してみると初耳だと言う表情をしている。
「すまないが、それはいつの話だ?」
案の定、リオンが疑問を口にした。
「5年前でしょうか」
かなり前の話だった。リオンは小言で『そんな話は聞いていない』と頭を抱えている。
「ユーフィアさん、それで本題なのですが、その商船の襲撃に魔武器が使われているそうなのです。それもかなり高性能な物のようです。以前お話をしましたが、それを作った者は恐らくs「いい加減に出ていけ!」」
シェリーの話を遮るように、先程マリアに連れて行かれたヴァリーと呼ばれた青狼獣人の青年が窓から侵入してきた。
人が大事な話をしているときに割り込んで来たことでシェリーは苛立ちを顕にし、立ち上がろうとしたところで、隣に座っていたカイルに引き止められた。
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