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24章-1 魔の大陸-魔女への依頼

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「ラフテリア様にも聞いた方がいいと?」

「まぁ。魔人の事は魔人に確認したほうが一番よいというのは確かだね」

 魔人の事は魔人に聞けか。正論ではある。これから、どうすべきかと思案しているシェリー。

「シェリーが気にしていることは、先日悪魔が出現したことかね」

「そう、流石に国土の半分が焦土化している上に、3体の悪魔の出現は厳しいと思う」

 3体の次元の悪魔。これはまだザコに過ぎない。しかし、討伐戦から20年は経ったが、再び次元の悪魔と。完全体の悪魔と戦う戦力があるかと問われればギラン共和国と同じく“ない”と答えるだろう。
 このシーラン王国でも厳しいだろう。未だに20年前の戦いの傷は各国に深く刻み込まれている。

 シェリーはオリバーの意見を聞いて魔の大陸に行くべきなのだろうと意を決めた。
 普通なら、ツガイである彼らと相談するのだろうが、シェリーは家族であるオリバーに話を持っていった。それは間違いではないが、番が居る者としては有り得ない行動だ。
 そんなシェリーは少し空間がある場所に移動して、一つの大きな箱を取り出す。鎖が厳重に巻かれた大きな箱だ。

 シェリーが何も説明をしていないにも関わらず、その箱を目にしたオリバーは立ちあり、カツカツと大きな箱に近づいて行く。
 そして、オリバーは厳重巻かれた鎖を手に取り、まるで蜘蛛の糸を払うが如く、手を払うだけで引きちぎり木の箱を開けた。

「ほぅ」

 中のモノを見たオリバーは思わず声を漏らす。

「これお土産。好きそうだと思ったから貰ってきた」

 箱の中身はギギギと箱の壁をこすりながら立ち上がった。黒々とした武者鎧。ブラックドラゴンの骨で出来た兜に、鱗でできた胸板に大袖。皮でできた喉輪。殆どがブラックドラゴンの素材で出来ており、繋に金属を用いているようだ。
 この場に一体のドラゴンが存在していると言っていい程の圧迫感を放っている。

「これはこれは興味深い。動力源はなんだ?魔石を使っている形跡はないな」

 オリバーの目が興味深そうに鎧を観察し始めた。シェリーはその姿を見て、ふっと微笑む。

「それ、最後にきちんと処分してくれれば、好きなようにしていいよ」

 そう言ってシェリーはオリバーの部屋を後にする。
 扉を閉めてシェリーは何もない空間に向けて声をかけた。

「陽子さん。第6師団長さんはダンジョンにきましたか?」

『ササっち、お帰り!わんこくんはまだ来てないよ。でも、愛するフィアちゃんの為にダンジョンに行きたいって駄々をこねて、副師団長さんは折れちゃったみたい。2日後にこっちに来る予定を立てているよ』

 きっとシェリーがダンジョンの話をしてから、副師団長であるルジオーネに言い続けていたのだろう。師団長が何日もその席を空けるわけにも行かないので、調節してやっとルジオーネから許可が出たようだ。
 この隙きにシェリーはユーフィアと交渉をしようと決めた。

「陽子さん。第6師団長さんがダンジョンに来たら教えてもらえますか?その間にユーフィアさんと話がしたいので」

『了解!それにしてもササっち、あれ魔導師様に渡して大丈夫?陽子さん心配だよ』

 あれとは鎧の事だろう。

「最終処分はしてもらうように言ってあるので大丈夫でしょう」

 シェリーはそう答え、階段を上っていった。シェリーが一階の玄関ホールに戻ると、そこにはカイルがいた。それもシェリーを見て驚いているようだ。

「シェリーが笑っている····」

 そうカイルに指摘され、シェリーは自分の頬に触れる。笑っている自覚はない。しかし、オリバーに喜んでもらえたのは嬉しいと思ったことは事実だ。
 笑っていた?シェリーは首を傾げる。

「可愛い可愛い。もっと笑って欲しい」

 カイルに笑って欲しいと言われても、笑えるものではないと、いつもの無表情に戻るシェリー。

「皆さんは?」

 ここにいるのはカイルだけだ。他のシェリーのツガイの姿は見られない。

「シェリーから貰った剣を扱えるように裏庭に行っているよ。スーウェンは結界を張るように頼まれて一緒に裏庭に行っている」

 別に剣はシェリーが与えた物ではない。

「そうですか」

 シェリーはそう言って夕飯の準備をしようとキッチンに向かう。その横をカイルが一緒に歩いていた。

「そうだ。シェリーから贈り物は笑顔がいいな」

「は?」

 思わず、シェリーは足を止めてカイルを仰ぎ見る。そもそも剣は材料の提供をしただけでシェリーから贈った物ではない。

「本当はシェリーを独り占めしてデートしたいけど、祝福があるから諦めるよ。シェリーに好意的な視線を向けてくるヤツはぶち殺したくなるからね」

 カイルから何やら物騒な言葉が出てきた。

「残念ながら笑えと言われても笑えるものではありません」

 シェリーはそう答え、ダイニングに入って行き、キッチンで夕飯の準備に取り掛かった。

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