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23章 孤独な世界と絆された世界
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『ここが入り口だよー』
黒い鳥は翼を大きく広げ、指し示したところはダンジョンらしく洞窟が口を開けていた。シェリーがその洞窟に進もうとすれば、黒い鳥はバタバタとしてシェリーを引き止める。
『あ、この大きな入口じゃなくて、こっちの隙間』
洞窟のような入り口の横には人が一人分通れる隙間が開いていた。
『こっちは裏に通じている道だよー』
そう言ってこの隙間に入るように言って来た。これは陽子のダンジョンの裏道と同じところなのだろう。シェリーが一歩踏み出そうとすれば、グレイが先に行くと言って前を歩き始めた。
黒い鳥は先頭を歩き始めたグレイの肩に飛び移り、道を案内をしているが、はっきり言って脇道もない一本道だ。案内は必要なのだろうか。シェリーがそんな疑問を思っているとダンジョンマスターがいきなり笑い出した。
『ははは、普通はこうだよねー。うんうん』
笑い出したかと思えば、何か一人で納得している。
「何が普通なんだ?」
肩に乗っている黒い鳥がいきなり笑い出したので、びっくりしたグレイが思わず聞いた。
『いやー。エンを案内したときと比べて普通だと思ったんだよー』
その言葉を聞いたシェリーはため息を吐く。彼も炎王の被害者だったようだ。
『エンって酷いんだよー。僕が裏ダンジョンの最下層まで道を作ったのに変えてしまったんだー』
その言い方だと完全に炎王が悪いという印象しか残らない。炎王とは仲がいいようだが、時々この黒い鳥は棘のある言い方をする。ダンジョンを変えられたことがとても嫌だったのだろう。
「それ、不可抗力ですよね?」
シェリーは炎王を擁護しておく。
『だったとしても僕のダンジョンに干渉してくるのって腹が立つよー』
「初代様がダンジョンに干渉したとはどういうことだ?」
リオンの疑問はもっともである。ダンジョンに干渉できるのはダンジョンマスターのみ、それ以外にはありえない。
『え?言葉そのままだよー。水龍も酷かったけど、エンは僕のダンジョンの理を変えちゃうぐらいだったからねー』
「それはあなたの力不足なだけでは?」
炎王が悪いと言う黒い鳥にシェリーはダンジョンマスターが弱いからだとぶった切る。
『は?ち、力不足····』
「炎王と付き合いのある他のダンジョンマスターは炎王の力の干渉は受けていませんよ。あなたが弱いだけでは?」
『よ、よわい····ぼくよわい?』
黒い鳥はシェリーの言葉にフラフラしている。
「シェリー。炎王がダンジョンに干渉するってどういうこと?」
リオンの質問にダンジョンマスターは答えているようで、明確な答えでは無かったので、知っていそうなシェリーにカイルは尋ねた。
「龍人の特性だと聞いています。正確にはダンジョンの干渉ではなく世界への干渉です。それに炎王の意思は反映しません。ただ、ダンジョンは確立した小さな世界だと認識されるようで、影響が大きく出るようです。ですから、炎王がダンジョンに来たときは陽子さんは炎王から離れないでいるそうです」
これは陽子から聞いた話だ。炎王が来ると陽子のこだわりのギミックが誤作動をおこすらしいと。だから、陽子はその被害を最小限に抑えるために、炎王の側で干渉を抑え込んでいると。
「え?龍人ってそんな事ができるのか?」
龍人は数が少ない故に一般的にはそのようなことは知られてはいない。
「初代様が世界に干渉?」
『ぼく、よわいのかー。はぁ、ここを出て右だよー。はぁ』
完璧にシェリーの言葉で凹んでしまったダンジョンマスターは右の翼を広げ、指し示した。細い道から広い場所に出てみればそこは薄暗く淡い光がゆらゆらと、どこからか差し込んでいた。
目の前に広がる光景は洞窟のような岩の壁が広がり、光の光源を探してみれば洞窟の上の方に青白く光る魚のような物が空間を泳いでおり、水が波打つような光が洞窟の天井の方に漂っている。
「光る魚?」
いろんなダンジョンに潜ったシェリーでも不思議な光景だった。まるで、海の底から上を見上げたような光景だ。
『光魚だよ。光魚がいるところは魔物が出ないようにしているんだよー。はぁ。魚人たちが安心して漁をしてもらわなければならないからねー。はぁ』
黒い鳥のため息が酷い。
『ここだよー。ここ一帯は好きに落書きしていいって言ったんだけど、本当にギッシリと落書きされたよ』
黒い鳥は突き当りの壁を翼で示した。
光る魚が空間を泳ぐ一角に一面文字が刻まれた壁が存在していた。それもこの世界の文字ではなく、日本語だ。
確かに日本語がわからないと落書きにしか見えない。それも無尽蔵に書き殴ったかのように見えるから余計に落書きにみえる。上から下までその一角の壁一面にだ。異様にしか映らない。いや、狂気沙汰と言ってもいいだろう。アリスの狂い具合がわかるというものだ。
その壁の落書きと言わしめた未来視は各個人に宛てたものだ。
シェリーは壁一面に書かれた文字を目で追う。
『紅玉の君へ』だったり『夢惑いし君へ』だったり、その人物宛に書かれていた。個人の名が指し示されてはいないので、アリスにどう呼ばれているかしかわからない。
その中で水龍の文字を見つけた。ダンジョンマスターが言っていたように天津もここにたどり着いようだ。
──暁の者との戦いはどうだった?──
という文言から始まっている。
──水龍がここに来たって言うことは、覚悟が決まったということでいいんだよね──
どうやら、アリスは天津に未来の選択を迫っていたようだ。シェリーはその文字を追い、ため息を吐いて目線を外す。これは終わったこと。きっと炎王もこれを読んだのだろう。アリスの未来視は時として残酷だ。
──これは新たな龍を護るのに必要だから──
天津への未来視はそんな言葉で締めくくられていた。天津の死は新たな龍の為に捧げられていた。
黒い鳥は翼を大きく広げ、指し示したところはダンジョンらしく洞窟が口を開けていた。シェリーがその洞窟に進もうとすれば、黒い鳥はバタバタとしてシェリーを引き止める。
『あ、この大きな入口じゃなくて、こっちの隙間』
洞窟のような入り口の横には人が一人分通れる隙間が開いていた。
『こっちは裏に通じている道だよー』
そう言ってこの隙間に入るように言って来た。これは陽子のダンジョンの裏道と同じところなのだろう。シェリーが一歩踏み出そうとすれば、グレイが先に行くと言って前を歩き始めた。
黒い鳥は先頭を歩き始めたグレイの肩に飛び移り、道を案内をしているが、はっきり言って脇道もない一本道だ。案内は必要なのだろうか。シェリーがそんな疑問を思っているとダンジョンマスターがいきなり笑い出した。
『ははは、普通はこうだよねー。うんうん』
笑い出したかと思えば、何か一人で納得している。
「何が普通なんだ?」
肩に乗っている黒い鳥がいきなり笑い出したので、びっくりしたグレイが思わず聞いた。
『いやー。エンを案内したときと比べて普通だと思ったんだよー』
その言葉を聞いたシェリーはため息を吐く。彼も炎王の被害者だったようだ。
『エンって酷いんだよー。僕が裏ダンジョンの最下層まで道を作ったのに変えてしまったんだー』
その言い方だと完全に炎王が悪いという印象しか残らない。炎王とは仲がいいようだが、時々この黒い鳥は棘のある言い方をする。ダンジョンを変えられたことがとても嫌だったのだろう。
「それ、不可抗力ですよね?」
シェリーは炎王を擁護しておく。
『だったとしても僕のダンジョンに干渉してくるのって腹が立つよー』
「初代様がダンジョンに干渉したとはどういうことだ?」
リオンの疑問はもっともである。ダンジョンに干渉できるのはダンジョンマスターのみ、それ以外にはありえない。
『え?言葉そのままだよー。水龍も酷かったけど、エンは僕のダンジョンの理を変えちゃうぐらいだったからねー』
「それはあなたの力不足なだけでは?」
炎王が悪いと言う黒い鳥にシェリーはダンジョンマスターが弱いからだとぶった切る。
『は?ち、力不足····』
「炎王と付き合いのある他のダンジョンマスターは炎王の力の干渉は受けていませんよ。あなたが弱いだけでは?」
『よ、よわい····ぼくよわい?』
黒い鳥はシェリーの言葉にフラフラしている。
「シェリー。炎王がダンジョンに干渉するってどういうこと?」
リオンの質問にダンジョンマスターは答えているようで、明確な答えでは無かったので、知っていそうなシェリーにカイルは尋ねた。
「龍人の特性だと聞いています。正確にはダンジョンの干渉ではなく世界への干渉です。それに炎王の意思は反映しません。ただ、ダンジョンは確立した小さな世界だと認識されるようで、影響が大きく出るようです。ですから、炎王がダンジョンに来たときは陽子さんは炎王から離れないでいるそうです」
これは陽子から聞いた話だ。炎王が来ると陽子のこだわりのギミックが誤作動をおこすらしいと。だから、陽子はその被害を最小限に抑えるために、炎王の側で干渉を抑え込んでいると。
「え?龍人ってそんな事ができるのか?」
龍人は数が少ない故に一般的にはそのようなことは知られてはいない。
「初代様が世界に干渉?」
『ぼく、よわいのかー。はぁ、ここを出て右だよー。はぁ』
完璧にシェリーの言葉で凹んでしまったダンジョンマスターは右の翼を広げ、指し示した。細い道から広い場所に出てみればそこは薄暗く淡い光がゆらゆらと、どこからか差し込んでいた。
目の前に広がる光景は洞窟のような岩の壁が広がり、光の光源を探してみれば洞窟の上の方に青白く光る魚のような物が空間を泳いでおり、水が波打つような光が洞窟の天井の方に漂っている。
「光る魚?」
いろんなダンジョンに潜ったシェリーでも不思議な光景だった。まるで、海の底から上を見上げたような光景だ。
『光魚だよ。光魚がいるところは魔物が出ないようにしているんだよー。はぁ。魚人たちが安心して漁をしてもらわなければならないからねー。はぁ』
黒い鳥のため息が酷い。
『ここだよー。ここ一帯は好きに落書きしていいって言ったんだけど、本当にギッシリと落書きされたよ』
黒い鳥は突き当りの壁を翼で示した。
光る魚が空間を泳ぐ一角に一面文字が刻まれた壁が存在していた。それもこの世界の文字ではなく、日本語だ。
確かに日本語がわからないと落書きにしか見えない。それも無尽蔵に書き殴ったかのように見えるから余計に落書きにみえる。上から下までその一角の壁一面にだ。異様にしか映らない。いや、狂気沙汰と言ってもいいだろう。アリスの狂い具合がわかるというものだ。
その壁の落書きと言わしめた未来視は各個人に宛てたものだ。
シェリーは壁一面に書かれた文字を目で追う。
『紅玉の君へ』だったり『夢惑いし君へ』だったり、その人物宛に書かれていた。個人の名が指し示されてはいないので、アリスにどう呼ばれているかしかわからない。
その中で水龍の文字を見つけた。ダンジョンマスターが言っていたように天津もここにたどり着いようだ。
──暁の者との戦いはどうだった?──
という文言から始まっている。
──水龍がここに来たって言うことは、覚悟が決まったということでいいんだよね──
どうやら、アリスは天津に未来の選択を迫っていたようだ。シェリーはその文字を追い、ため息を吐いて目線を外す。これは終わったこと。きっと炎王もこれを読んだのだろう。アリスの未来視は時として残酷だ。
──これは新たな龍を護るのに必要だから──
天津への未来視はそんな言葉で締めくくられていた。天津の死は新たな龍の為に捧げられていた。
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