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23章 孤独な世界と絆された世界
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「エレウスさん。箱ごと貰っていっていいですか?」
出入り口で立ち止まってしまった鬼族の男性にシェリーは声をかける。
「あ?誰だ。お前」
黒髪の人族に覚えがないエレウスは眉を潜めながらシェリーを見る。
そんなエレウスにシェリーは亜空間収納から小瓶を取り出し、差し出した。
「焔の闇です」
誰かと問われたにも関わらず無視をして、用件のみを済まそうとするシェリーの姿を見て、ますますエレウスの眉間のシワが深くなる。
「エレウスさん。その人族はシェリーですよ」
エレウスの後ろからベンの声が聞こえてきた。出入り口に箱とともにエレウスが陣取っているため、ベンは外に出てこられないようだ。
ベンに目の前の人物がシェリーだと言われ、納得したのかしていないのか、わからないが眉間にシワを寄せたままのエレウスはシェリーから小瓶を受け取り、箱に巻き付けてある鎖の端をシェリーに渡しながら言う。
「開けるまで絶対に鎖を外すな」
その渡された鎖には、みっちりと何かの言葉が刻まれていた。恐らく箱の中身を封じるものだろう。それだけを言うとエレウスは箱を飛び越え、建物の中に戻っていった。
鎖を持たされたシェリーはと言うと、ジッと大きな箱を眺めていた。その姿にグレイが早くしまわないのかと声をかけようとしたところで、箱がガタンと動く。
建物の奥から『ギャ!』とベンの叫び声が聞こえてきた。
ベンが持ってくることを嫌がったのはこの事だったのだろう。箱がガタガタと勝手に動くのはホラーでしかない。しかし、シェリーは鎖を持ったまま一言放つ。
「うるさい」
シェリーの膨大な魔力を鎖に流しながら言い放った。するとどうだろう。箱はピタリと動くのをやめた。
元々シェリーが倒してきたブラックドラゴンだ。シェリーに敵わないことは肉体を失ってもなお刻みつけられているのだろう。
「ハハハッ。流石、嬢ちゃんだ」
ファブロが笑いながらこちらにやってきた。リオンとオルクスの剣の具合を見ていたはずだが、もう良くなったのだろうか。シェリーは大人しくなった箱を亜空間収納のカバンにしまい、広場の方に目を向ける。すると一番に目がいったのは地面に倒れているオルクスだ。
リオンはというと、炎王に刀を見せているところだった。
「ファブロさん。鎧もらって帰ります」
ベンの了承しか得ていないにも関わらずカバンの中に入れてしまって、ファブロには決定事項だと言わんばかりにシェリーは言った。そんなシェリーにファブロは笑いながら
「それは助かる。そいつは外に出せないものだからな。あと、豹獣人の兄ちゃんはギリギリ及第点ってところか」
どうやらオルクスはファブロの剣に認められることはできたらしい。だが、ギリギリということは、危うかったという意味にも捉えられる。しかし、シェリーはオルクスにちらりと視線を向け、生きている事を確認し、炎王の方に向かって行く。
「炎王。エルトへの転移お願いできますか?」
「佐々木さん、オルクスくんが行き倒れているけど?」
そんなシェリーに呆れるように炎王が倒れているオルクスに視線を向けて言う。
「ちっ」
シェリーは舌打ちをして、オルクスの方に歩いて行って、うつ伏せに倒れているオルクスに冷たい視線を向けながら、足蹴にして術を放つ。
「『聖女の慈愛』」
シェリーはそのままオルクスを足蹴にして仰向けにする。全く聖女らしくない行いだ。
しかし、治癒の魔術を掛けられたオルクスはムクリと起き上がり、抜身のままだった剣をしまいシェリーに抱きつく。
「シェリー!元気になった。ありがとう」
オルクスは目を細めゴロゴロと喉を鳴らさんばかりの様子だが、シェリーはというとオルクスから距離を取ろうとシェリーに抱きついているオルクスの腕を掴んでいた。
「炎王。転移お願いします」
凄く嫌そうな顔をしているシェリーと番のシェリーに構ってもらえて喜んでいるオルスクに炎王はなんとも言えない表情をしている。
「ああ。じゃ、こっちに来てくれ」
呆れるような声で呼びかける炎王。
「炎王も中々だったが、嬢ちゃんも酷いな。まぁ、気をつけてな」
ファブロも呆れるようにシェリーに声をかけた。シェリーは炎王を同じにされたことで更に不機嫌な表情をしながらファブロにお礼を言う。
「ファブロさん。鎧、ありがとうございました」
お礼を言う事柄が違うような気がするが、シェリーとしては、今回鎧が手に入った事が一番の収穫だったようだ。なんだかんだ言って、家族であるオリバーの喜んでもらえそうな物が手に入ったことは、シェリーにとって満足できることだったのだろう。
「ファブロ。いきなり来て刀を頼んで悪かったな。とても助かった」
新しい刀を慈しむように撫でるリオン。
「なんか、ついでみたいに剣をいただいてしまって、ありがとうございました」
珍しく、丁寧な言葉でお礼を言うグレイ。シェリーが作ったばかりの双剣をくれと言ったことで、今はグレイは腰に収まっているレッドドラゴンの双剣。
「この剣、シデンだったか?もっと自由に扱えるようになるからな」
言葉からオルクスは剣の暴走に振り回されたことが伺える。
「ハハハ。手入れが必要になったら、また来るといい」
ファブロはそう言って笑いながら建物の方に向かって行く。きっとファブロ自身も満足出来る物だったのだろう。
「それじゃ、エルトに向かうぞ『転移』」
シェリーたちは炎王の転移により炎国からエルトの地に向かった。
出入り口で立ち止まってしまった鬼族の男性にシェリーは声をかける。
「あ?誰だ。お前」
黒髪の人族に覚えがないエレウスは眉を潜めながらシェリーを見る。
そんなエレウスにシェリーは亜空間収納から小瓶を取り出し、差し出した。
「焔の闇です」
誰かと問われたにも関わらず無視をして、用件のみを済まそうとするシェリーの姿を見て、ますますエレウスの眉間のシワが深くなる。
「エレウスさん。その人族はシェリーですよ」
エレウスの後ろからベンの声が聞こえてきた。出入り口に箱とともにエレウスが陣取っているため、ベンは外に出てこられないようだ。
ベンに目の前の人物がシェリーだと言われ、納得したのかしていないのか、わからないが眉間にシワを寄せたままのエレウスはシェリーから小瓶を受け取り、箱に巻き付けてある鎖の端をシェリーに渡しながら言う。
「開けるまで絶対に鎖を外すな」
その渡された鎖には、みっちりと何かの言葉が刻まれていた。恐らく箱の中身を封じるものだろう。それだけを言うとエレウスは箱を飛び越え、建物の中に戻っていった。
鎖を持たされたシェリーはと言うと、ジッと大きな箱を眺めていた。その姿にグレイが早くしまわないのかと声をかけようとしたところで、箱がガタンと動く。
建物の奥から『ギャ!』とベンの叫び声が聞こえてきた。
ベンが持ってくることを嫌がったのはこの事だったのだろう。箱がガタガタと勝手に動くのはホラーでしかない。しかし、シェリーは鎖を持ったまま一言放つ。
「うるさい」
シェリーの膨大な魔力を鎖に流しながら言い放った。するとどうだろう。箱はピタリと動くのをやめた。
元々シェリーが倒してきたブラックドラゴンだ。シェリーに敵わないことは肉体を失ってもなお刻みつけられているのだろう。
「ハハハッ。流石、嬢ちゃんだ」
ファブロが笑いながらこちらにやってきた。リオンとオルクスの剣の具合を見ていたはずだが、もう良くなったのだろうか。シェリーは大人しくなった箱を亜空間収納のカバンにしまい、広場の方に目を向ける。すると一番に目がいったのは地面に倒れているオルクスだ。
リオンはというと、炎王に刀を見せているところだった。
「ファブロさん。鎧もらって帰ります」
ベンの了承しか得ていないにも関わらずカバンの中に入れてしまって、ファブロには決定事項だと言わんばかりにシェリーは言った。そんなシェリーにファブロは笑いながら
「それは助かる。そいつは外に出せないものだからな。あと、豹獣人の兄ちゃんはギリギリ及第点ってところか」
どうやらオルクスはファブロの剣に認められることはできたらしい。だが、ギリギリということは、危うかったという意味にも捉えられる。しかし、シェリーはオルクスにちらりと視線を向け、生きている事を確認し、炎王の方に向かって行く。
「炎王。エルトへの転移お願いできますか?」
「佐々木さん、オルクスくんが行き倒れているけど?」
そんなシェリーに呆れるように炎王が倒れているオルクスに視線を向けて言う。
「ちっ」
シェリーは舌打ちをして、オルクスの方に歩いて行って、うつ伏せに倒れているオルクスに冷たい視線を向けながら、足蹴にして術を放つ。
「『聖女の慈愛』」
シェリーはそのままオルクスを足蹴にして仰向けにする。全く聖女らしくない行いだ。
しかし、治癒の魔術を掛けられたオルクスはムクリと起き上がり、抜身のままだった剣をしまいシェリーに抱きつく。
「シェリー!元気になった。ありがとう」
オルクスは目を細めゴロゴロと喉を鳴らさんばかりの様子だが、シェリーはというとオルクスから距離を取ろうとシェリーに抱きついているオルクスの腕を掴んでいた。
「炎王。転移お願いします」
凄く嫌そうな顔をしているシェリーと番のシェリーに構ってもらえて喜んでいるオルスクに炎王はなんとも言えない表情をしている。
「ああ。じゃ、こっちに来てくれ」
呆れるような声で呼びかける炎王。
「炎王も中々だったが、嬢ちゃんも酷いな。まぁ、気をつけてな」
ファブロも呆れるようにシェリーに声をかけた。シェリーは炎王を同じにされたことで更に不機嫌な表情をしながらファブロにお礼を言う。
「ファブロさん。鎧、ありがとうございました」
お礼を言う事柄が違うような気がするが、シェリーとしては、今回鎧が手に入った事が一番の収穫だったようだ。なんだかんだ言って、家族であるオリバーの喜んでもらえそうな物が手に入ったことは、シェリーにとって満足できることだったのだろう。
「ファブロ。いきなり来て刀を頼んで悪かったな。とても助かった」
新しい刀を慈しむように撫でるリオン。
「なんか、ついでみたいに剣をいただいてしまって、ありがとうございました」
珍しく、丁寧な言葉でお礼を言うグレイ。シェリーが作ったばかりの双剣をくれと言ったことで、今はグレイは腰に収まっているレッドドラゴンの双剣。
「この剣、シデンだったか?もっと自由に扱えるようになるからな」
言葉からオルクスは剣の暴走に振り回されたことが伺える。
「ハハハ。手入れが必要になったら、また来るといい」
ファブロはそう言って笑いながら建物の方に向かって行く。きっとファブロ自身も満足出来る物だったのだろう。
「それじゃ、エルトに向かうぞ『転移』」
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