番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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23章 孤独な世界と絆された世界

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 5日後、シェリーは炎王に連れられ、とある場所にきていた。光の巫女と呼ばれる者達が暮らす場所だ。

 そこは鳥居が連なり、どこかの有名な稲荷大社を思わせる道を通ってきた。炎王曰く、この鳥居には結界が施してあり許可がない者以外立ち入れられないようになっているらしい。

 鳥居の道を通り抜けると小高い山の頂上に出た。そこには大木があり、この炎国では有名な魔樹が大きく枝を広げている。
 見た目は桜の木だ。いや、見た目も何も桜の木なのだが、あちらの苗木をこの世界で植えると魔力を吸い上げ、魔力を持つ木になってしまったそうだ。だから、春にこの国では桜の薄いピンクの花が満開になるのを観ることができるの。

 その奥には神社の社のような建物が存在している。しかし、炎王が向かっているのは、その建物の横にある建物に向かっていっている。

「ようこそお越しくださいました」

 その建物の入口に白い着物に赤い袴を来た女性が三人並んでいた。本当に巫女装束だった。シェリーは虚ろげな視線を炎王に向ける。ここ最近どこかの誰かが番にコスプレをさせていたと聞いたばかりだった。

「今日は頼むよって、佐々木さんその目は何だ?」

「いえ、何も。別にコスプレ好きだとは思っていませんよ」

 それを聞いた炎王は慌ててシェリーに近づき肩を掴んで否定する。

「違う!違うんだ!この装束は俺の趣味じゃない!カタログから選んで勝手に「初代様!」」

 炎王の掴んでいた手をリオンが払い除け、カイルがシェリーを引き寄せた。

「だから、シェリーに触らないでいただけますか?」

「悪かった。だが、これは俺の趣味じゃないからな!」

 そう言い切った炎王の後ろでは青い顔をしている三人の巫女たちがいる。自分たちの衣装を巫女としての装束をこの国の始祖である炎王に否定されているのだ。

 その三人の巫女の様子をシェリーに視線で指摘され、振り返った炎王は慌てて取り繕う姿はこの国の始祖というより、徒人と言った方が似合いそうだ。


 入り口を入るとそこは土間の先に一段上がった畳玄関だった。天井近くには魔除けだろうか槍が掲げられ、その奥には畳の間が広がっている。
 シェリーはその間取りに懐かしそうに目を細めた。田舎の祖母の家を思い出すと。


 そして、畳廊下を渡り、街が見渡せる一室通された。その部屋の奥に畳の上で頭を伏している銀髪の人物がいた。

「ようこそ、おいでくださいました。初代様」

「ああ、ハヅキ。今日は客を連れてきた。佐々·····いや、シェリーさんだ」

 炎王が頭を下げている女性にシェリーを紹介した。しかし、シェリーとしては炎王にシェリーとして呼ばれることにムズ痒さを感じる。

「はい、聞いております。お初にお目にかかります。巫女長を勤めておりますハヅキと申します」

 誰に聞いているのかそれは先日シェリーの邪魔をした女神ルーチェにだろう。シェリーも目の前の人物に習い、畳の上に正座をして手を膝の前に揃え、頭を下げる。

「シェリー・カークスと申します。この度はお時間をいただきましてありがとうございます」

 そして、シェリーは顔を上げ、同じ様に顔を上げた巫女長といった女性と目が合う。銀髪にどこかで見たことのある琥珀色の目だ。その女性の後ろには黒い毛皮を纏っていた。いや、呼吸をしているように上下に動いている。
 シェリーはその黒い毛皮を凝視する。どうも最近見たことあるモノに視える。

 斜め前にいる炎王に視線を向けた。何ていうものを作ったのだ。

「炎王」

 炎王に呼びかける声がいつもより低い声になってしまった。

「なんてモノを作ったのですか?」

「ん?何の事だ?」

 シェリーは黒い毛皮を指す。

「あれ、魔導生物ですよね」

「よく、知っているな」

 そう言って炎王はニヤリと笑った。その声に答えてか黒い毛皮が動いた。2メルほどの大きさはあろうかという黒い猫の姿をしたモノだった。

「ええ、最近屋敷に住み着きましたから、あれ、自我を持った生物ですよね」

「そうだ。アリスに言われて作ったものだ。今じゃ守護獣なんて言われている」

 炎王のその答えにシェリーはため息を吐く。

「アリスですか」

「そうだ」

「それは仕方がないですね」

 シェリーは再び視線を前に向ける。守護獣そう言われる程、巨大な魔力を纏った魔導生物だ。家に住み着いたモノと比べると····いや、オリバーが作ったあの四つ目の猫と比べるのは間違っている。こちらは炎王と共に千年生きた魔導生物なのだ。

 そして、その前にいる銀髪の女性に目を向ける。巫女長という女性。この女性が何か特別なのかと言われればそうではない。普通の人族だ。女神ルーチェの加護を持っているかと言われれば持っていない。
 何が特別なのかとシェリーは首を傾げてしまった。

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