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22章 獣人たちの騒がしい大祭
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青い空に割れんばかりの歓声が響き渡る。どうやら、オルクスの対戦相手が決まったようだ。
フェクトス総統も健闘したが、ベスト4止まりだった。国中の猛者が集まってこの祭りに参加した中で本戦に残る自体がそれなりの実力を持っているという証明になるだろう。
「それじゃ、行ってくるか」
そう言ってオルクスは膝の上に乗せていたシェリーを隣にいたスーウェンに渡す。
「絶対にフードをはずしたら駄目だぞ」
オルクスはシェリーの正面に向かって黒い外套のフードを深く引き下げる。シェリーの祝福対策として、外套で姿を見えなくして、スーウェンが結界を張るということで、オルクスが離れていても番であるシェリーに他の誰も近づかないようにしようとしているのだった。
ただの外套ごときで神である女神ステルラの祝福が回避されるとは思われないが、結界を併用することで、他の者との一定の距離を取る狙いだ。
オルクスはかがんでシェリーに口づけをして、金属製の階段の通路を降りて行く。そのまま、中央の広く開けられた空間に降り立った瞬間。耳が痛いほどの歓声が沸き起こる。この国でのオルクスの人気が分かるというものだ。
オルクスが中心にある一段高くなった舞台に立つと、一層歓声が大きくなる。耳がおかしくなりそうだ。
対戦者は、そのまま休憩を挟まずオルクスと対戦するのだろうか、中央の舞台上にそのままオルクスが現れるのを待っていた。その挑戦相手は狐獣人で、オルクスと知り合いなのだろうか、舞台の上にあがったオルクスと何か話をしている。
イーリスクロムのような九尾ではないが、珍しい二尾の獣人だった。
二人が向き合っている姿が、赤いモヤのようなもので包まれた。いや、アルテリカの火が発動されたのだ。観客席と中央舞台との空間に赤い炎のようなものが円状に高くそびえ、中心となる舞台を囲み覆った。
今まで空を映していたシェリーの目にも赤い炎がかすめた。アルテリカの火が発動している状態を初めてみたが、とても赤いゆらめきが神秘的に思えるほど美しいものだった。
この国を守った美しい結界。今まで歓声を上げていた観客もその結界を見入っていた。
開始の合図と共に中央にいる二人が剣をあわす。しかし、オルクスとの差は歴然。以前、シド総帥の息子であるリルラファールを相手にしているときと同じだ。オルクスは相手にしていない。ただ、相手の攻撃を剣で往なしているのみ。
一撃で終わらせられることだろうが、これも一種のパフォーマンスだ。長引かせて、盛り上げるための一役を買っているのだろう。
シェリーは見る気も無く、結界の観察が終われば再び視線は吸い込まれるような空をながめる。こんな澄んだ青い空の日は島がよく見える。
「今日はラフィエルとダリエルがよく見えますね」
ずーと空を見ていたシェリーにスーウェンが話し掛ける。スーウェンの視線も空に向けられていた。
「島の名前など知りません」
「そうですね。島が見える人は程んどいませんし、地上の者が行くことは叶いませんからね」
そう、アーク族が住まう空の島。モルテ国のレガートスが教えてくれたことだが、スーウェンは以前から島がどういうモノか知っていたような言い方だ。島に名があることなどシェリーは知らなかった。
シェリーはエルフ族だからこそ知り得ることがあるのか思っていると、再び歓声が耳を塞いだ。
どうやら決着が付いたようだ。結果など見なくてもわかる。オルクスの圧勝だったのだろう。
「あの結界に穴を開けることはできるか?」
リオンが立ち上がり、そんな事を言ってきた。あのアルテリカの火は物理攻撃も魔術も跳ね返すものだ。その結界を破った者がいるとは聞いたことはない。
アルテリカの火自体を今回初めて見たのでなんとも言えないが、オリバーなら喜々として解除する方法を見つけてしまいそうだ。
「できますよ」
そんなシェリーの思考を遮るようにスーウェンが答える。
「長年、エルフ族に辛酸を嘗めさせられていたモノですからね。解除ぐらいできますよ」
「いや、通れる穴を開ける程度でいい」
「それぐらいなら、時間を掛けずにできます。ご主人様失礼します」
そう言ってスーウェンはシェリーを抱え、カイルに渡し、リオンと共に階段を降りていった。
時間を掛けずにとスーウェンは言った。全てを解除するにはそれなりの時間が掛かるという事だろうか。もし、簡単に解除出来るとなれば、使用方法を見直さなければならない。
「リオンはなんだか苛ついているみたいだね」
カイルがシェリーにそんな事を言ってきた。苛ついている?何に苛つくことがあるのだ?シェリーからすれば、彼らの行動にこそ苛立ちを覚える。
本当に面倒くさい。苛立ちを表しているのは自分自身にだろう?何を焦っているのかと問いたくなるぐらいだ。
カイルもグレイもリオンも。本当にツガイというものは面倒でしかない。
──────────────
雑談
273話で表ダンジョン内での会話は本当はもう少し長かったのです。その時のスーウェンのセリフでシェリーの事を普通に『シェリーが』というセリフを書いていたところ、凄く違和感がありまして、理由がわからずその一帯全て削除しました。一日考えた結果。あっ!奴隷兼番だったと。最近ボケが酷いです。
フェクトス総統も健闘したが、ベスト4止まりだった。国中の猛者が集まってこの祭りに参加した中で本戦に残る自体がそれなりの実力を持っているという証明になるだろう。
「それじゃ、行ってくるか」
そう言ってオルクスは膝の上に乗せていたシェリーを隣にいたスーウェンに渡す。
「絶対にフードをはずしたら駄目だぞ」
オルクスはシェリーの正面に向かって黒い外套のフードを深く引き下げる。シェリーの祝福対策として、外套で姿を見えなくして、スーウェンが結界を張るということで、オルクスが離れていても番であるシェリーに他の誰も近づかないようにしようとしているのだった。
ただの外套ごときで神である女神ステルラの祝福が回避されるとは思われないが、結界を併用することで、他の者との一定の距離を取る狙いだ。
オルクスはかがんでシェリーに口づけをして、金属製の階段の通路を降りて行く。そのまま、中央の広く開けられた空間に降り立った瞬間。耳が痛いほどの歓声が沸き起こる。この国でのオルクスの人気が分かるというものだ。
オルクスが中心にある一段高くなった舞台に立つと、一層歓声が大きくなる。耳がおかしくなりそうだ。
対戦者は、そのまま休憩を挟まずオルクスと対戦するのだろうか、中央の舞台上にそのままオルクスが現れるのを待っていた。その挑戦相手は狐獣人で、オルクスと知り合いなのだろうか、舞台の上にあがったオルクスと何か話をしている。
イーリスクロムのような九尾ではないが、珍しい二尾の獣人だった。
二人が向き合っている姿が、赤いモヤのようなもので包まれた。いや、アルテリカの火が発動されたのだ。観客席と中央舞台との空間に赤い炎のようなものが円状に高くそびえ、中心となる舞台を囲み覆った。
今まで空を映していたシェリーの目にも赤い炎がかすめた。アルテリカの火が発動している状態を初めてみたが、とても赤いゆらめきが神秘的に思えるほど美しいものだった。
この国を守った美しい結界。今まで歓声を上げていた観客もその結界を見入っていた。
開始の合図と共に中央にいる二人が剣をあわす。しかし、オルクスとの差は歴然。以前、シド総帥の息子であるリルラファールを相手にしているときと同じだ。オルクスは相手にしていない。ただ、相手の攻撃を剣で往なしているのみ。
一撃で終わらせられることだろうが、これも一種のパフォーマンスだ。長引かせて、盛り上げるための一役を買っているのだろう。
シェリーは見る気も無く、結界の観察が終われば再び視線は吸い込まれるような空をながめる。こんな澄んだ青い空の日は島がよく見える。
「今日はラフィエルとダリエルがよく見えますね」
ずーと空を見ていたシェリーにスーウェンが話し掛ける。スーウェンの視線も空に向けられていた。
「島の名前など知りません」
「そうですね。島が見える人は程んどいませんし、地上の者が行くことは叶いませんからね」
そう、アーク族が住まう空の島。モルテ国のレガートスが教えてくれたことだが、スーウェンは以前から島がどういうモノか知っていたような言い方だ。島に名があることなどシェリーは知らなかった。
シェリーはエルフ族だからこそ知り得ることがあるのか思っていると、再び歓声が耳を塞いだ。
どうやら決着が付いたようだ。結果など見なくてもわかる。オルクスの圧勝だったのだろう。
「あの結界に穴を開けることはできるか?」
リオンが立ち上がり、そんな事を言ってきた。あのアルテリカの火は物理攻撃も魔術も跳ね返すものだ。その結界を破った者がいるとは聞いたことはない。
アルテリカの火自体を今回初めて見たのでなんとも言えないが、オリバーなら喜々として解除する方法を見つけてしまいそうだ。
「できますよ」
そんなシェリーの思考を遮るようにスーウェンが答える。
「長年、エルフ族に辛酸を嘗めさせられていたモノですからね。解除ぐらいできますよ」
「いや、通れる穴を開ける程度でいい」
「それぐらいなら、時間を掛けずにできます。ご主人様失礼します」
そう言ってスーウェンはシェリーを抱え、カイルに渡し、リオンと共に階段を降りていった。
時間を掛けずにとスーウェンは言った。全てを解除するにはそれなりの時間が掛かるという事だろうか。もし、簡単に解除出来るとなれば、使用方法を見直さなければならない。
「リオンはなんだか苛ついているみたいだね」
カイルがシェリーにそんな事を言ってきた。苛ついている?何に苛つくことがあるのだ?シェリーからすれば、彼らの行動にこそ苛立ちを覚える。
本当に面倒くさい。苛立ちを表しているのは自分自身にだろう?何を焦っているのかと問いたくなるぐらいだ。
カイルもグレイもリオンも。本当にツガイというものは面倒でしかない。
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雑談
273話で表ダンジョン内での会話は本当はもう少し長かったのです。その時のスーウェンのセリフでシェリーの事を普通に『シェリーが』というセリフを書いていたところ、凄く違和感がありまして、理由がわからずその一帯全て削除しました。一日考えた結果。あっ!奴隷兼番だったと。最近ボケが酷いです。
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