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22章 獣人たちの騒がしい大祭
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「今日はどこもかしこも開店休業状態なのですよ」
「首都のお店がですか?」
受付けの女性の言葉にシェリーは首を傾けながら尋ねる。冒険者ギルドがこの状態だということは、他の店もそうあり得ることではある。
「かわゆい……あ、いいえ、ギラン中です」
……おかしな事を言われた。一つの祭りで国中が?ああ、各地で一斉に祭りをするという事なのだろう。
「流石にミレーテでは10か所ほどありますけど、一般的には公園などの広場に集まって観戦していますから、よっぽどの事が無い限り、席は立たないですね」
余計に言われている意味が分からなくなった。
「本当は私も見に行きたかったのですけど、流石にキルドを閉めるわけには行きませんからね。うふふふ、でもラース様とこうしてご一緒にお茶をすることが出来て幸せですぅ」
凄くキラキラした目を向けられている。しかし、先程の言葉からすると、モニターか何かが全国各地にあって、今回の祭りを中継していると捉えられる。この世界にそのような物がるのは見たことはない。
いや、もしかして、この国には在るのかもしれない。このパリの旧市街のような街並みの首都ミレーテを作り上げた天津ならそれらを作り上げることができたのかもしれない。
「祭りの様子が映し出される何かがあるのですか?」
シェリーは聞いてみる。もしそのような物があるとなれば、色々使えそうだ。
「ええ、水晶球です。あ、このような物は他国にありませんでしたね。水晶球は英雄様の遺産になります」
やはりそうだった。そうなれば、フェクト総統があのように言ったことは大げさではなかったのだろう。国の危機的状況とは言い難いが、国民の意を損なわないためには必要だったのだろう。
「今からご一緒に会場へ行きましょうか?ええ、そうしましょう。ご案内します。マスターから会場の席は確保してあると聞いていますので大丈夫です」
受付けの女性は段々前のめりになりながら、シェリーに詰め寄ってきた。
案内はどちらでもいいのだが、ここの受付けの人が居なくなるのは問題があるのではないのだろうか。
「行くのは明日だと言っていたはずだ」
声のする方に視線を向ければ、女性の背後に女性の肩に手を置き、これ以上シェリーに近づかないように引き止めているオルクスがいた。
「この祝福って誰でもこうなるのか?」
オルクスはシェリーと女性を交互に見て言葉を漏らす。その問いに答える前に女性が立ち上がり、頭を下げた。
「『王の嘆き』ダンジョンの攻略おめでとうございます。ギルドマスターから今回の報酬と明日の会場の座席券を渡すように言われておりますので、少々お待ち下さい」
そう言って女性は席を離れ、2階受付けの席へと戻って行っている。オルクスの背後には女性に睨みつけるような視線を向けているリオンと、ニコニコとしながらシェリーの側に近寄って来るスーウェンと、とてつもなく疲れた様子のグレイがいた。
どうやら、シェリーのツガイである5人が揃ったことで、祝福の効力が切れたようだ。
「で、この祝福どうにかならないのか?なんか凄く腹が立つなぁ」
オルクスがシェリーの目の前に座りながら聞いてきた。
「神の祝福ですからね。我々では干渉のしようがありませんね」
スーウェンがシェリーの隣に座りながら答える。正確にはカイルの横になるのだが。
「何か抜け道があるんじゃないのか?」
オルクスは諦めきれないようだ。タダでさえ己の番には4人のツガイがいるのだ。他の者にも好意を持たれるのが我慢ならないらしい。
「オリバーさんは精神干渉に対する耐性があれば祝福の影響は受けないのではないのかと言っていたけど」
カイルは以前オリバーが言っていた事を思い出し、口に出す。しかし、その答えにリオンがカイルの隣にドカリと座り、愚痴を吐く。
「そんなものを持っている奴がどれぐらいいるんだ?殆ど居ないだろう。あと、なんで50階層攻略したそっちの方が俺たちより早いんだ?」
リオンは何かと己にはできないことを簡単にしてしまうカイルが気に入らないようだ。
「それはシェリーが攻略した時と同じ様にひたすら進んで、邪魔な目の前の魔物をだけを倒して行ったからかな?」
まるで、普通に攻略したような言い方だ。それには疲れて項垂れているグレイが疑問に思いカイルに尋ねる。
「それって、無理じゃないのか?四方八方から魔物は来るし、罠が発動するし対処が追いつかったぞ」
「あれ知らなかったのか?それじゃ、時間がかかるのも頷ける。ここのダンジョンの罠がある道は間違っている道だと。正解の道を通ると罠はないと。有名だと聞いたんだけどなぁ?」
「「「「は?」」」」
当たり前のように言うカイルに4人の疑問の声が同時に発せられた。
「規模が相当広いダンジョンだけど、一番短距離の道を選択すると罠がないから、素材採取の為に寄り道をしなければ楽だって耳にしたんだけど?」
「首都のお店がですか?」
受付けの女性の言葉にシェリーは首を傾けながら尋ねる。冒険者ギルドがこの状態だということは、他の店もそうあり得ることではある。
「かわゆい……あ、いいえ、ギラン中です」
……おかしな事を言われた。一つの祭りで国中が?ああ、各地で一斉に祭りをするという事なのだろう。
「流石にミレーテでは10か所ほどありますけど、一般的には公園などの広場に集まって観戦していますから、よっぽどの事が無い限り、席は立たないですね」
余計に言われている意味が分からなくなった。
「本当は私も見に行きたかったのですけど、流石にキルドを閉めるわけには行きませんからね。うふふふ、でもラース様とこうしてご一緒にお茶をすることが出来て幸せですぅ」
凄くキラキラした目を向けられている。しかし、先程の言葉からすると、モニターか何かが全国各地にあって、今回の祭りを中継していると捉えられる。この世界にそのような物がるのは見たことはない。
いや、もしかして、この国には在るのかもしれない。このパリの旧市街のような街並みの首都ミレーテを作り上げた天津ならそれらを作り上げることができたのかもしれない。
「祭りの様子が映し出される何かがあるのですか?」
シェリーは聞いてみる。もしそのような物があるとなれば、色々使えそうだ。
「ええ、水晶球です。あ、このような物は他国にありませんでしたね。水晶球は英雄様の遺産になります」
やはりそうだった。そうなれば、フェクト総統があのように言ったことは大げさではなかったのだろう。国の危機的状況とは言い難いが、国民の意を損なわないためには必要だったのだろう。
「今からご一緒に会場へ行きましょうか?ええ、そうしましょう。ご案内します。マスターから会場の席は確保してあると聞いていますので大丈夫です」
受付けの女性は段々前のめりになりながら、シェリーに詰め寄ってきた。
案内はどちらでもいいのだが、ここの受付けの人が居なくなるのは問題があるのではないのだろうか。
「行くのは明日だと言っていたはずだ」
声のする方に視線を向ければ、女性の背後に女性の肩に手を置き、これ以上シェリーに近づかないように引き止めているオルクスがいた。
「この祝福って誰でもこうなるのか?」
オルクスはシェリーと女性を交互に見て言葉を漏らす。その問いに答える前に女性が立ち上がり、頭を下げた。
「『王の嘆き』ダンジョンの攻略おめでとうございます。ギルドマスターから今回の報酬と明日の会場の座席券を渡すように言われておりますので、少々お待ち下さい」
そう言って女性は席を離れ、2階受付けの席へと戻って行っている。オルクスの背後には女性に睨みつけるような視線を向けているリオンと、ニコニコとしながらシェリーの側に近寄って来るスーウェンと、とてつもなく疲れた様子のグレイがいた。
どうやら、シェリーのツガイである5人が揃ったことで、祝福の効力が切れたようだ。
「で、この祝福どうにかならないのか?なんか凄く腹が立つなぁ」
オルクスがシェリーの目の前に座りながら聞いてきた。
「神の祝福ですからね。我々では干渉のしようがありませんね」
スーウェンがシェリーの隣に座りながら答える。正確にはカイルの横になるのだが。
「何か抜け道があるんじゃないのか?」
オルクスは諦めきれないようだ。タダでさえ己の番には4人のツガイがいるのだ。他の者にも好意を持たれるのが我慢ならないらしい。
「オリバーさんは精神干渉に対する耐性があれば祝福の影響は受けないのではないのかと言っていたけど」
カイルは以前オリバーが言っていた事を思い出し、口に出す。しかし、その答えにリオンがカイルの隣にドカリと座り、愚痴を吐く。
「そんなものを持っている奴がどれぐらいいるんだ?殆ど居ないだろう。あと、なんで50階層攻略したそっちの方が俺たちより早いんだ?」
リオンは何かと己にはできないことを簡単にしてしまうカイルが気に入らないようだ。
「それはシェリーが攻略した時と同じ様にひたすら進んで、邪魔な目の前の魔物をだけを倒して行ったからかな?」
まるで、普通に攻略したような言い方だ。それには疲れて項垂れているグレイが疑問に思いカイルに尋ねる。
「それって、無理じゃないのか?四方八方から魔物は来るし、罠が発動するし対処が追いつかったぞ」
「あれ知らなかったのか?それじゃ、時間がかかるのも頷ける。ここのダンジョンの罠がある道は間違っている道だと。正解の道を通ると罠はないと。有名だと聞いたんだけどなぁ?」
「「「「は?」」」」
当たり前のように言うカイルに4人の疑問の声が同時に発せられた。
「規模が相当広いダンジョンだけど、一番短距離の道を選択すると罠がないから、素材採取の為に寄り道をしなければ楽だって耳にしたんだけど?」
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