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22章 獣人たちの騒がしい大祭
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「長年の愁いが解決できるのですか!」
扉が開くと同時にそう言いながら入ってきたのは、ネールが面会許可を伺いに行った人物である。灰色の髪に丸みの帯びた耳が生え、赤い目の下には黒い入れ墨の様な隈が印象的で、背後に揺れている尻尾は太く灰色と黒の斑の縞模様が入っている虎獣人の大柄な男性だ。
シド総帥と同じく20代にしか見えないフェクトス総統閣下その人である。
「フェクトス。わざわざ来たのか」
シド総帥から呆れるような声が聞こえてきた。一国を治める人物が面会を希望する者に会いに来るなんて、普通はありえないことだ。
「今、話を聞かずに、いつ聞くというのですか」
そう言いながら、フェクトス総統はシド総帥の隣の椅子に座る。そして、目の前にいるシェリーを見た。
「お久しぶりですね。シェリーさん。少し容姿が変わりましたか?」
口調は丁寧だが、その顔は獰猛に歪み笑っている。シェリーはその笑顔にも怯む事なくいつも通り無表情で答えた。
「お久しぶり。フェクトス総統閣下。お時間を作っていただきましてありがとうございます。この姿は色々あったので放置してください」
「そうですか。時間が惜しいので早速ですが、要件をお聞きしましょう」
・・・明日の祭りの準備でもあるのだろうか、いや、一国を治めるフェクトス総統自身が足を運んできたのだ。さっさと報告だけして帰ろうとシェリーは思い、口を開ける。
「今回、眠り病の治療薬の増産と無料配布が可能になりましたので、その報告をさせていただきます」
「ん?ちょっと待て」
フェクトス総統がシェリーの言葉を止めた。眉間にシワを寄せながら首を捻っている。
「もしかして、眠り病の本当の意味での治療薬は存在していました?」
そう、シェリーは増産と言った。そこにフェクトス総統が引っ掛かりを覚えた。
「ええ、存在はしていました。8年前の一時程。しかし、直ぐに元の薬もどきに戻されてしまいました」
「戻された?それはクソ帝国にか?」
何やら、フェクトス総統の素が漏れている。
「ええ」
「やっぱり、さっさと滅ぼした方が良いですね。ぶっ潰す算段は付いたという報告はないのですか?」
「潰す算段ですか」
シェリーは少し考えるように言葉を止め、南の方角を見ながら話の続きを言葉にする。
「そうですね。モルテ国は抑えました。モルテ王には帝国に手を出さないように交渉済です」
「「は?」」
フェクトス総統とシド総帥の声が重なった。二人共目を丸めて口を半開きのまま固まってしまっている。
「モルテ王!あの狂った王とまともに交渉ができたのか!」
シド総帥が立ち上がってテーブル越しにシェリーに詰め寄ってきた。
「ええ、正気に戻して置き土産も渡して来ましたから、快く契約してくださいました」
シェリーの言葉にシド総帥は何故か、後ろになでつけられた金髪を更にぐしゃぐしゃにして苛立ちを顕わにする。
「あー。前から思っていた事だが、お前、絶対におかしいよな。普通はあのモルテ王と交渉しようとは思わん。それに、以前まっ昼間から帝国の第19部隊を血祭りにして、あの後俺が凄く大変だったんだぞ」
無造作にはねた金髪姿になったシド総帥にシェリーは冷たい視線を投げつけ、感謝の言葉を口にする・・・が
「あのときは大変お世話になりました。が、どなたかの邪魔が入り、一人取り逃がしてしまったことが、未だに心残りです。とてもとても心残りです」
「2回も言うな。子供が次々に大人を襲っていたら、普通は止めるよな」
「はぁ。シド。その件は私も残念に思っていることなので、仕方がありません。工作部隊の者を生け捕りにできるいい機会だったのですから」
フェクトス総統はため息を吐きながらそのような事をいう。しかし、フェクトス総統はシド総帥と違いシェリーの行動を否定しているわけではなく、生死の有無と逃したことへの非難だっだ。
「しかし、モルテ王ですか。レガートス外交官とは幾度か会って話したことはありますが、彼の王とはまともに話すら成り立たなかったですね。では、これからモルテは動き出すと見ていいのでしょうか?」
モルテが動きだすか。そう、フェクトス総統が確認したいのはギラン共和国はモルテ国の北の位置にあるため、ある意味脅威となり得るモルテの動向が知りたいのだろう。しかし、シェリーは虚ろげな視線をフェクトス総統に向ける。
「そんなもの知りませんよ。私が契約したのは私が成す事に対して、帝国の下につかないで欲しいという事のみ。モルテ王が各国にどう接するかなんて、私は知ったことではありません」
「シーランはそのことで、どう動くか聞いていませんか?」
「知りません」
「はぁ。これは困りました。約千年、動かなかったモルテが私の代で動き出すとは」
フェクトス総統がため息を吐きながら、こめかみをグリグリしている。これから吸血鬼の国との付き合いが頭痛の種となることがわかっているからなのだろう。
扉が開くと同時にそう言いながら入ってきたのは、ネールが面会許可を伺いに行った人物である。灰色の髪に丸みの帯びた耳が生え、赤い目の下には黒い入れ墨の様な隈が印象的で、背後に揺れている尻尾は太く灰色と黒の斑の縞模様が入っている虎獣人の大柄な男性だ。
シド総帥と同じく20代にしか見えないフェクトス総統閣下その人である。
「フェクトス。わざわざ来たのか」
シド総帥から呆れるような声が聞こえてきた。一国を治める人物が面会を希望する者に会いに来るなんて、普通はありえないことだ。
「今、話を聞かずに、いつ聞くというのですか」
そう言いながら、フェクトス総統はシド総帥の隣の椅子に座る。そして、目の前にいるシェリーを見た。
「お久しぶりですね。シェリーさん。少し容姿が変わりましたか?」
口調は丁寧だが、その顔は獰猛に歪み笑っている。シェリーはその笑顔にも怯む事なくいつも通り無表情で答えた。
「お久しぶり。フェクトス総統閣下。お時間を作っていただきましてありがとうございます。この姿は色々あったので放置してください」
「そうですか。時間が惜しいので早速ですが、要件をお聞きしましょう」
・・・明日の祭りの準備でもあるのだろうか、いや、一国を治めるフェクトス総統自身が足を運んできたのだ。さっさと報告だけして帰ろうとシェリーは思い、口を開ける。
「今回、眠り病の治療薬の増産と無料配布が可能になりましたので、その報告をさせていただきます」
「ん?ちょっと待て」
フェクトス総統がシェリーの言葉を止めた。眉間にシワを寄せながら首を捻っている。
「もしかして、眠り病の本当の意味での治療薬は存在していました?」
そう、シェリーは増産と言った。そこにフェクトス総統が引っ掛かりを覚えた。
「ええ、存在はしていました。8年前の一時程。しかし、直ぐに元の薬もどきに戻されてしまいました」
「戻された?それはクソ帝国にか?」
何やら、フェクトス総統の素が漏れている。
「ええ」
「やっぱり、さっさと滅ぼした方が良いですね。ぶっ潰す算段は付いたという報告はないのですか?」
「潰す算段ですか」
シェリーは少し考えるように言葉を止め、南の方角を見ながら話の続きを言葉にする。
「そうですね。モルテ国は抑えました。モルテ王には帝国に手を出さないように交渉済です」
「「は?」」
フェクトス総統とシド総帥の声が重なった。二人共目を丸めて口を半開きのまま固まってしまっている。
「モルテ王!あの狂った王とまともに交渉ができたのか!」
シド総帥が立ち上がってテーブル越しにシェリーに詰め寄ってきた。
「ええ、正気に戻して置き土産も渡して来ましたから、快く契約してくださいました」
シェリーの言葉にシド総帥は何故か、後ろになでつけられた金髪を更にぐしゃぐしゃにして苛立ちを顕わにする。
「あー。前から思っていた事だが、お前、絶対におかしいよな。普通はあのモルテ王と交渉しようとは思わん。それに、以前まっ昼間から帝国の第19部隊を血祭りにして、あの後俺が凄く大変だったんだぞ」
無造作にはねた金髪姿になったシド総帥にシェリーは冷たい視線を投げつけ、感謝の言葉を口にする・・・が
「あのときは大変お世話になりました。が、どなたかの邪魔が入り、一人取り逃がしてしまったことが、未だに心残りです。とてもとても心残りです」
「2回も言うな。子供が次々に大人を襲っていたら、普通は止めるよな」
「はぁ。シド。その件は私も残念に思っていることなので、仕方がありません。工作部隊の者を生け捕りにできるいい機会だったのですから」
フェクトス総統はため息を吐きながらそのような事をいう。しかし、フェクトス総統はシド総帥と違いシェリーの行動を否定しているわけではなく、生死の有無と逃したことへの非難だっだ。
「しかし、モルテ王ですか。レガートス外交官とは幾度か会って話したことはありますが、彼の王とはまともに話すら成り立たなかったですね。では、これからモルテは動き出すと見ていいのでしょうか?」
モルテが動きだすか。そう、フェクトス総統が確認したいのはギラン共和国はモルテ国の北の位置にあるため、ある意味脅威となり得るモルテの動向が知りたいのだろう。しかし、シェリーは虚ろげな視線をフェクトス総統に向ける。
「そんなもの知りませんよ。私が契約したのは私が成す事に対して、帝国の下につかないで欲しいという事のみ。モルテ王が各国にどう接するかなんて、私は知ったことではありません」
「シーランはそのことで、どう動くか聞いていませんか?」
「知りません」
「はぁ。これは困りました。約千年、動かなかったモルテが私の代で動き出すとは」
フェクトス総統がため息を吐きながら、こめかみをグリグリしている。これから吸血鬼の国との付き合いが頭痛の種となることがわかっているからなのだろう。
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