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19章 神の威
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シェリーの言葉を聞いてカイルは納得した。だから、あの高位なる存在の前で平然とした顔をしていたのか。しかし、それではなぜオリバーもシェリーと同じ様に居られたかがわからない。
「では、オリバーさんはなぜあの高位なる存在の前でも平然と居られたのかな?」
「それは本人に聞いてください。私が答えることではありません。」
「ということはシェリーはその理由を知っているのかな?」
シェリーは答えない。しかし、廊下へと続く扉に向かって声をかける。
「聞かれているけど?」
その扉が開き、金髪の美しい青年が姿を現した。・・・が、相変わらず目の下の隈が酷い。
「朝から千客万来だね。シェリー。騒がしくて仕方がない。」
「私のせいではありません。」
オリバーはカツカツとダイニングに入ってきて席につく。
「シェリー。ご飯。」
オリバーに言われ、シェリーはカイルから降りて、キッチンへと入っていった。
カイル side
「初めましてだね。5人目の鬼人くん。」
オリバーは初対面であるリオンに声を掛けた。
「あなたは?」
「そうだね。シェリーから見れば義理の父親であり、隷属だ。だから、俺の死はシェリーと共にある。」
オリバーはニヤリと笑って、そうリオンに答えた。俺たちに言ったように、番である俺たちの心を逆撫でる言い方をした。
その言葉にリオンも苛立ったように顔を歪めている。
「くくく。俺は世界の楔から解放された者だからね。心の臓を刺されようが、首をはねられようが死は訪れない。そんなに殺気を向けても無駄だね。あの聖剣と同じだ。」
「聖剣?」
そう言われてもリオンにはわからないだろう。彼は魔人ラフテリアに会ったことがないのだから。
「そうそう、俺が白き神の前で平然としていた理由だったね。」
オリバーは今度は俺に話しかけてきた。
「シェリーはラースが神人だと言った。なら貴方はなぜあの存在の前にしても平然としていられたんだ。」
「単純な話だ。俺も女神ナディアの血が入っている。ただそれだけなのだよ。」
女神ナディアの血が入っているだと?おかしな話だ。ラースの一族は体の何処かにナディアの加護が顕れるとシェリーが言っていた。グレイの様に女神ナディアと同じ赤い髪になることは滅多にないらしいが、以前ラースで会った男のように赤い痣が現れると。
「不可解な顔をしているね。大魔女エリザベート。彼女は4千年前の女神の愛し子であり、我らグローリアの王族の祖でもある。」
大魔女エリザベート!聞いたことはある。別名赤き魔女。あの時、シェリーがササキさんが喚び出した人物の中にいた一人だ。
大昔、俺たち竜人族と空の覇権を争った、あのアーク族を恐怖の底に陥れたという赤き魔女。その人物がグローリアの王族の祖?
それにしても不可解だ。グローリア国は4千年前に建国したと記憶している。しかし、赤き魔女が暴れていた時代は3千年前だったはずだ。その魔女が4千年前の女神の愛し子?人が千年生きることができるのか?確かモルテ国でも赤き魔女の名が出ていた。
「納得できないって感じだね。シェリー。君が大魔女を面白い表現で表していたね。」
オリバーの後ろにはトレイの上に朝食を乗せて運んできたシェリーがいた。
「2度死んで2度生き返った魔女。」
「そう、彼女も世界の楔から放たれた存在だったのだよ。彼女は3千年間生きた存在だった。そして、女神ナディアを嫌っていた魔女だった。だから、俺たちに女神ナディアの加護は表面化されない。だが、加護は存在している。」
オリバーはラースの一族の様に表面化していないが、加護はあると言っている。そう話すオリバーの横でシェリーは食事の続きを始めていた。自分には関係がないと言わんばかりに。
魔眼を持つラースが神人だとしたら、オリバーは一体何を持って聖人と至ったのだろう。
「あれ?じゃ、俺とオリバーさんは遠い親戚みたいなもの?」
グレイがそんなことを言った。
「そうだね。」
オリバーも答えながら食事を始めている。
「しかし、神々の思惑がそのようなことだったとは、いやはやなんとも。くくく。なんとも面白いことだね。シェリー。」
「面白い?不愉快しか言葉が出てこない。」
「危機感だよ。危機感。世界という存在。神という存在。この多種多様の存在する地界の存在。面白いという表現しかありえない。」
「やっぱり、殴っていいってことだね。」
時々、オリバーは何を言いたいのか分からないことがある。しかし、シェリーはそれに対して一定の理解を示していることに腹が立つ。
共にいる時が長かったからなのだろうか、それとも世界の楔から解放されれば、また世界も違って見えるのだろうか。
シェリーと同じものを見たいがために世界の楔から解放されたいと思うこともあるが、そうすれば全てが終わってしまう。
この番の繋がりも、きっとこの想いも変わってしまうのだろう。それが恐い。この想いが無くなってしまうことも、この番の存在を失ってしまうことも。
長い時をだた一人で生きていかなければならない恐怖は耐え難い。
「では、オリバーさんはなぜあの高位なる存在の前でも平然と居られたのかな?」
「それは本人に聞いてください。私が答えることではありません。」
「ということはシェリーはその理由を知っているのかな?」
シェリーは答えない。しかし、廊下へと続く扉に向かって声をかける。
「聞かれているけど?」
その扉が開き、金髪の美しい青年が姿を現した。・・・が、相変わらず目の下の隈が酷い。
「朝から千客万来だね。シェリー。騒がしくて仕方がない。」
「私のせいではありません。」
オリバーはカツカツとダイニングに入ってきて席につく。
「シェリー。ご飯。」
オリバーに言われ、シェリーはカイルから降りて、キッチンへと入っていった。
カイル side
「初めましてだね。5人目の鬼人くん。」
オリバーは初対面であるリオンに声を掛けた。
「あなたは?」
「そうだね。シェリーから見れば義理の父親であり、隷属だ。だから、俺の死はシェリーと共にある。」
オリバーはニヤリと笑って、そうリオンに答えた。俺たちに言ったように、番である俺たちの心を逆撫でる言い方をした。
その言葉にリオンも苛立ったように顔を歪めている。
「くくく。俺は世界の楔から解放された者だからね。心の臓を刺されようが、首をはねられようが死は訪れない。そんなに殺気を向けても無駄だね。あの聖剣と同じだ。」
「聖剣?」
そう言われてもリオンにはわからないだろう。彼は魔人ラフテリアに会ったことがないのだから。
「そうそう、俺が白き神の前で平然としていた理由だったね。」
オリバーは今度は俺に話しかけてきた。
「シェリーはラースが神人だと言った。なら貴方はなぜあの存在の前にしても平然としていられたんだ。」
「単純な話だ。俺も女神ナディアの血が入っている。ただそれだけなのだよ。」
女神ナディアの血が入っているだと?おかしな話だ。ラースの一族は体の何処かにナディアの加護が顕れるとシェリーが言っていた。グレイの様に女神ナディアと同じ赤い髪になることは滅多にないらしいが、以前ラースで会った男のように赤い痣が現れると。
「不可解な顔をしているね。大魔女エリザベート。彼女は4千年前の女神の愛し子であり、我らグローリアの王族の祖でもある。」
大魔女エリザベート!聞いたことはある。別名赤き魔女。あの時、シェリーがササキさんが喚び出した人物の中にいた一人だ。
大昔、俺たち竜人族と空の覇権を争った、あのアーク族を恐怖の底に陥れたという赤き魔女。その人物がグローリアの王族の祖?
それにしても不可解だ。グローリア国は4千年前に建国したと記憶している。しかし、赤き魔女が暴れていた時代は3千年前だったはずだ。その魔女が4千年前の女神の愛し子?人が千年生きることができるのか?確かモルテ国でも赤き魔女の名が出ていた。
「納得できないって感じだね。シェリー。君が大魔女を面白い表現で表していたね。」
オリバーの後ろにはトレイの上に朝食を乗せて運んできたシェリーがいた。
「2度死んで2度生き返った魔女。」
「そう、彼女も世界の楔から放たれた存在だったのだよ。彼女は3千年間生きた存在だった。そして、女神ナディアを嫌っていた魔女だった。だから、俺たちに女神ナディアの加護は表面化されない。だが、加護は存在している。」
オリバーはラースの一族の様に表面化していないが、加護はあると言っている。そう話すオリバーの横でシェリーは食事の続きを始めていた。自分には関係がないと言わんばかりに。
魔眼を持つラースが神人だとしたら、オリバーは一体何を持って聖人と至ったのだろう。
「あれ?じゃ、俺とオリバーさんは遠い親戚みたいなもの?」
グレイがそんなことを言った。
「そうだね。」
オリバーも答えながら食事を始めている。
「しかし、神々の思惑がそのようなことだったとは、いやはやなんとも。くくく。なんとも面白いことだね。シェリー。」
「面白い?不愉快しか言葉が出てこない。」
「危機感だよ。危機感。世界という存在。神という存在。この多種多様の存在する地界の存在。面白いという表現しかありえない。」
「やっぱり、殴っていいってことだね。」
時々、オリバーは何を言いたいのか分からないことがある。しかし、シェリーはそれに対して一定の理解を示していることに腹が立つ。
共にいる時が長かったからなのだろうか、それとも世界の楔から解放されれば、また世界も違って見えるのだろうか。
シェリーと同じものを見たいがために世界の楔から解放されたいと思うこともあるが、そうすれば全てが終わってしまう。
この番の繋がりも、きっとこの想いも変わってしまうのだろう。それが恐い。この想いが無くなってしまうことも、この番の存在を失ってしまうことも。
長い時をだた一人で生きていかなければならない恐怖は耐え難い。
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