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19章 神の威
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『そ、そんなことは、な、無いと思うよ。』
ウエール神はビクビク怯えながらシェリーに答える。そんなウエール神にシェリーは近づいて行く。近づくほどにウエール神の怯えは酷くなり、目の前に来たときにはガタガタ震えるまでになっていた。
別に虐めてはないが、第三者からの目からみれば、弱い者いじめをしているように見えているのではないのだろうか。
「干渉しすぎです。ナディア様ならわかりますが、ウエール様は関係ないですよね。」
『ひっ!そんなこと無いよー。ふぃぃぃー。だって、だって。僕、エン君にお礼がしたいだけなのにー。』
泣きながらそんなことをシェリーに言っている。エン君・・・炎王にお礼がしたいなら本人にすればいいことだ。しかし、神とあろうものが人の前で泣くとは駄目なんじゃないのだろうか。
「本人にしてください。私は関係ないです。迷惑です。」
シェリーは神であるウエール神に対してもいつもどおりの対応で、きっぱりと断る。それも迷惑だという言葉も付けて
『め、迷惑・・・エン君の側にはいつもルーチェがいるから近づけないし、ひゅぅっ。』
シェリーが一歩近づいたところで息を詰まらせ、言葉を止めてしまった。
「それはそうでしょうね。だから、彼はあのようにあることができるのです。テロス様もお戻りになられたことですし、ウエール様もお戻りになられたらいかがですか?」
『あれはイヴェールがテロスを引きずって凍らせて・・・あ、ちょっと待って・・・ひっ!』
今度はウエール神がシェリーではない方向を見ながら怯えている。そして、慌てたように早口で言葉を紡いだ。
『春を司るウエールが贈る。君達に悪意に対する穏やかなる守りの祝福を・・・うっぐ。』
言葉の途中でテロス神を空間に引きずりこんだ同じ赤い爪の手がウエール神の首根っこを掴んだ。そのことにより、言の葉が途切れてしまったが、ウエール神は空間にのまれる瞬間に
『与える!』
という言葉を残して消えていった。
ウエール神が消えていった空間を見ながらシェリーはため息が漏れてしまった。また、勝手な神というものの祝福のゴリ押しをされてしまった。
きっと彼は良いことをしていると思っているのだろうが、神の祝福は必ずしも人に対していい結果をもたらすとは限らないのだ。
今頃、女神イヴェールにお仕置きをされていることだろう。
「『心蝕の穏守』?」
グレイが与えられた祝福を呟いた。シェリーは自分のステータスを視てみるがそのような言葉は見当たらない。
どうやら彼らのみが与えられたものなのだろう。シェリーは耐性を持っているので必要ないだろうと思われたのか、それとも必要ないことをすれば何かされると思われたのだろうか。
「先程のはなんだ?圧倒的な力の存在だった。」
シェリーは後ろを振り返り、疑問を呈したリオンを見る。シェリーの後ろには跪いた5人の姿があった。
「特に手だけが空間から顕れた存在はそれだけで、恐怖を掻き立てられましたね。」
スーウェンがヨタリと立ち上がりながら、呟いた。恐怖?まぁ。かなりお怒りだったようなので、そう感じるのも仕方がないのかもしれない。
「シェリー、あれはどういうことだったんだ?」
オルクスがシェリーに近づきながら、尋ねてくる。
「何がです?」
あれとはどれの事を指しているのだろうか。
「シェリーが空間から赤い神の男を引きずり出したことだ。テロス神といったか?神界空間干渉をしたと言っていなかったか?」
確かに言っていたし空間からテロス神を引きずり出したのも確かなことだ。その問いにシェリーはどうでもいいと言わんばかりに
「大したことではありません。オリバーもできることです。」
淡々と答える。しかし、神でもないシェリーが神界に干渉することは普通はできないことだ。それはオリバーも同じと言えよう。
「それから、ドルロール遺跡に行くのはどうぞご勝手に行ってください。私には必要のないことですから。」
シェリーは朝食の続きを取ろうと席につことするが、グレイに抱えられて、グレイの膝の上に座らされてしまった。
「チッ。」
「でもさ、戴いた祝福があれば行く必要のないじゃないのか?」
「祝福は所詮祝福です。それに頼ると痛い目を見るのはグレイさんですよ。」
「え?痛い目?」
シェリーの言葉にグレイは思わず聞き返してしまった。
「ナディア様の加護がグレイさんに良い事をもたらしましたか?まぁ、危機感知能力の上昇という意味では、使えるかもしれませんが、それは結局ナディア様の威が示すもののみ。」
シェリーにそう指摘され、グレイは納得したように頷き
「なるほど」
と言葉を漏らした。『女神の寵愛』の加護を持つグレイには何か心当たりがあるようだった。
ウエール神はビクビク怯えながらシェリーに答える。そんなウエール神にシェリーは近づいて行く。近づくほどにウエール神の怯えは酷くなり、目の前に来たときにはガタガタ震えるまでになっていた。
別に虐めてはないが、第三者からの目からみれば、弱い者いじめをしているように見えているのではないのだろうか。
「干渉しすぎです。ナディア様ならわかりますが、ウエール様は関係ないですよね。」
『ひっ!そんなこと無いよー。ふぃぃぃー。だって、だって。僕、エン君にお礼がしたいだけなのにー。』
泣きながらそんなことをシェリーに言っている。エン君・・・炎王にお礼がしたいなら本人にすればいいことだ。しかし、神とあろうものが人の前で泣くとは駄目なんじゃないのだろうか。
「本人にしてください。私は関係ないです。迷惑です。」
シェリーは神であるウエール神に対してもいつもどおりの対応で、きっぱりと断る。それも迷惑だという言葉も付けて
『め、迷惑・・・エン君の側にはいつもルーチェがいるから近づけないし、ひゅぅっ。』
シェリーが一歩近づいたところで息を詰まらせ、言葉を止めてしまった。
「それはそうでしょうね。だから、彼はあのようにあることができるのです。テロス様もお戻りになられたことですし、ウエール様もお戻りになられたらいかがですか?」
『あれはイヴェールがテロスを引きずって凍らせて・・・あ、ちょっと待って・・・ひっ!』
今度はウエール神がシェリーではない方向を見ながら怯えている。そして、慌てたように早口で言葉を紡いだ。
『春を司るウエールが贈る。君達に悪意に対する穏やかなる守りの祝福を・・・うっぐ。』
言葉の途中でテロス神を空間に引きずりこんだ同じ赤い爪の手がウエール神の首根っこを掴んだ。そのことにより、言の葉が途切れてしまったが、ウエール神は空間にのまれる瞬間に
『与える!』
という言葉を残して消えていった。
ウエール神が消えていった空間を見ながらシェリーはため息が漏れてしまった。また、勝手な神というものの祝福のゴリ押しをされてしまった。
きっと彼は良いことをしていると思っているのだろうが、神の祝福は必ずしも人に対していい結果をもたらすとは限らないのだ。
今頃、女神イヴェールにお仕置きをされていることだろう。
「『心蝕の穏守』?」
グレイが与えられた祝福を呟いた。シェリーは自分のステータスを視てみるがそのような言葉は見当たらない。
どうやら彼らのみが与えられたものなのだろう。シェリーは耐性を持っているので必要ないだろうと思われたのか、それとも必要ないことをすれば何かされると思われたのだろうか。
「先程のはなんだ?圧倒的な力の存在だった。」
シェリーは後ろを振り返り、疑問を呈したリオンを見る。シェリーの後ろには跪いた5人の姿があった。
「特に手だけが空間から顕れた存在はそれだけで、恐怖を掻き立てられましたね。」
スーウェンがヨタリと立ち上がりながら、呟いた。恐怖?まぁ。かなりお怒りだったようなので、そう感じるのも仕方がないのかもしれない。
「シェリー、あれはどういうことだったんだ?」
オルクスがシェリーに近づきながら、尋ねてくる。
「何がです?」
あれとはどれの事を指しているのだろうか。
「シェリーが空間から赤い神の男を引きずり出したことだ。テロス神といったか?神界空間干渉をしたと言っていなかったか?」
確かに言っていたし空間からテロス神を引きずり出したのも確かなことだ。その問いにシェリーはどうでもいいと言わんばかりに
「大したことではありません。オリバーもできることです。」
淡々と答える。しかし、神でもないシェリーが神界に干渉することは普通はできないことだ。それはオリバーも同じと言えよう。
「それから、ドルロール遺跡に行くのはどうぞご勝手に行ってください。私には必要のないことですから。」
シェリーは朝食の続きを取ろうと席につことするが、グレイに抱えられて、グレイの膝の上に座らされてしまった。
「チッ。」
「でもさ、戴いた祝福があれば行く必要のないじゃないのか?」
「祝福は所詮祝福です。それに頼ると痛い目を見るのはグレイさんですよ。」
「え?痛い目?」
シェリーの言葉にグレイは思わず聞き返してしまった。
「ナディア様の加護がグレイさんに良い事をもたらしましたか?まぁ、危機感知能力の上昇という意味では、使えるかもしれませんが、それは結局ナディア様の威が示すもののみ。」
シェリーにそう指摘され、グレイは納得したように頷き
「なるほど」
と言葉を漏らした。『女神の寵愛』の加護を持つグレイには何か心当たりがあるようだった。
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