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19章 神の威
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カイルがソファに座った状態でシェリーは抱えられてしまっている。それも機嫌の悪いカイルにだ。笑っているが、目が笑っていない。
「それで、シェリー。色々って何かな?」
「はぁ。女神様からの神言です。」
「女神?この前、降臨されたラースの女神様?」
普通はそう思うだろう。シェリーに啓示を行う女神なんて女神ナディアだと。
「いいえ。女神ステルラ様です。」
「誰?」
カイルは聞いたこともない女神の名前に戸惑ってしまった。
「天空に瞬く星の女神様です。人々に闇の中の導きを示す御方であり、人のささやかな願いを叶えてくださる御方でもあります。」
「なぜ、その女神がシェリーに?何か関係があるのかな?」
「直接関係があるかと言われればありません。ただの女神様のわがままです。」
「わがまま?」
「そう、わがままです。ステルラ様の髪は星を纏う美しい黒髪なのです。ですから、長年人々が持っている黒に対する偏見をなくしてもいいのではないのかと言ってきたのです。そして、私に祝福をくださいました。たぶん、強制的に人々から愛される祝福ではないかと思われます。」
女神ステルラは言っていた。『夜の闇は全ての者達に安らぎを与え、愛を包み込むように、穏やかな心を与えます。人の心が貴女を傷つけることはもうありません。』と。人の心がシェリーを傷つけることはない。逆に言えば人々がシェリーに対し無条件に好意を持ってしまうということだ。
そして、シェリーの称号に新たな項目が追加されていた。『愛される黒の聖女』と、これが祝福の影響だとすれば、最悪だと言ってもいい。
「人々から愛される?なんだそれは」
カイルの声が一段と低く聞こえた。
「神の考えは必ずしも人の考えと同じとは限らない、いい例ですね。」
「他人ごとのように言うね。」
「はぁ。神というものに振り回れされていますからね。わかっていることです。それをオリバーに相談したいので、いい加減に離してほしいのですが?」
「いやだ。」
そう言ったカイルに抱きしめられてしまった。
この祝福の影響を受けていない人達がいた。何か一定の条件があるのだろう。それをオリバーに調べて欲しいのに、この状態では無理のようだ。
カイルの気が早く収まってくれるのをシェリーは願うのであった。
「無理だね。」
夜に起きてくるオリバーに聞いた答えがこれだった。シェリーは未だにカイルの膝の上にいる。カイルが帰って来てから殆どの時間、シェリーを離してはくれなかった。
一体なんだと問いたかったが、カイルがシェリーを抱えたまま寝てしまったのだ。一日でラースまで行って戻ってきて、なぜだかあちらこちらが傷ついていたので、何かあって疲れているのだろうと思われた。
カイルが寝てしまったので、そろりと抜け出そうとシェリーが動くと痛いぐらい力が込められて、動けなくなり、結局カイルが目覚めるまでシェリーは動く事ができなかったのだ。
そして、遅い時間から夕食を作り始め、食べだす頃にオリバーが起きて来たのだった。
「そこをなんとかして欲しい。」
「無茶を言わないでくれ給え。神の力に干渉なんてできるはずないだろう。」
「でも、その祝福に影響されない人もいたから何か条件があるはず。」
「影響されない?確かに俺は何も感じない。それは面白いかもしれないね。因みに誰だね。影響を受けなかった人物とは」
「国王陛下。ディスタさん。第6師団長さんと副師団長さん。」
「ディスタ?なんで、まだこの大陸にいるのか。」
そう言ってオリバーはカイルを見る。そして、考えるように机を指でコツコツと叩きだす。
「まぁ、簡単に言えばレベル100以上の者たちだね。選ばれた者は祝福の影響は受けないという事か。それとも強制的な志向誘導に対する耐性か。どちらにしろ神の力に干渉することは無理だね。」
オリバーに無理だと言われてしまったら、対処のしようがない。敵意を向けられないのはいいかもしれないが、無条件で好意を持たれてしまうのは嫌なことだ。
「シェリー。珈琲のお代わり。」
オリバーがそう言って、シェリーに向けて珈琲カップを差し出してきたので、シェリーはカイルの膝から降りてキッチンに向かっていった。
カイルside
「ウィルの魔眼はきつかっただろ?」
何もかも見透かしたような目をしているオリバーに言われてしまった。
「ああ。」
「でも、それが正解だ。魔眼持ちは多種多様存在しているが、ラース魔眼が一番強力だったね。あの悪魔よりも。」
オリバーもディスタと同じことを言った。悪魔の魔眼よりもラース魔眼のほうが強いと
「何を焦っているか知らないが、君たちは些か足りないモノが多すぎるようだね。努力することは大切だが、間違った努力は良くない。シェリーに言ってはあるが、あの子は君たちに興味がないからね。君に渡しておくよ。君達に神から啓示を受けた。ここに行くといい。君たちとって足りないものが得ることができるところだ。」
そう言って、オリバーはメモ用紙を差し出してきた。そこには一行だけ書かれていた『ドルロール遺跡』と
「それで、シェリー。色々って何かな?」
「はぁ。女神様からの神言です。」
「女神?この前、降臨されたラースの女神様?」
普通はそう思うだろう。シェリーに啓示を行う女神なんて女神ナディアだと。
「いいえ。女神ステルラ様です。」
「誰?」
カイルは聞いたこともない女神の名前に戸惑ってしまった。
「天空に瞬く星の女神様です。人々に闇の中の導きを示す御方であり、人のささやかな願いを叶えてくださる御方でもあります。」
「なぜ、その女神がシェリーに?何か関係があるのかな?」
「直接関係があるかと言われればありません。ただの女神様のわがままです。」
「わがまま?」
「そう、わがままです。ステルラ様の髪は星を纏う美しい黒髪なのです。ですから、長年人々が持っている黒に対する偏見をなくしてもいいのではないのかと言ってきたのです。そして、私に祝福をくださいました。たぶん、強制的に人々から愛される祝福ではないかと思われます。」
女神ステルラは言っていた。『夜の闇は全ての者達に安らぎを与え、愛を包み込むように、穏やかな心を与えます。人の心が貴女を傷つけることはもうありません。』と。人の心がシェリーを傷つけることはない。逆に言えば人々がシェリーに対し無条件に好意を持ってしまうということだ。
そして、シェリーの称号に新たな項目が追加されていた。『愛される黒の聖女』と、これが祝福の影響だとすれば、最悪だと言ってもいい。
「人々から愛される?なんだそれは」
カイルの声が一段と低く聞こえた。
「神の考えは必ずしも人の考えと同じとは限らない、いい例ですね。」
「他人ごとのように言うね。」
「はぁ。神というものに振り回れされていますからね。わかっていることです。それをオリバーに相談したいので、いい加減に離してほしいのですが?」
「いやだ。」
そう言ったカイルに抱きしめられてしまった。
この祝福の影響を受けていない人達がいた。何か一定の条件があるのだろう。それをオリバーに調べて欲しいのに、この状態では無理のようだ。
カイルの気が早く収まってくれるのをシェリーは願うのであった。
「無理だね。」
夜に起きてくるオリバーに聞いた答えがこれだった。シェリーは未だにカイルの膝の上にいる。カイルが帰って来てから殆どの時間、シェリーを離してはくれなかった。
一体なんだと問いたかったが、カイルがシェリーを抱えたまま寝てしまったのだ。一日でラースまで行って戻ってきて、なぜだかあちらこちらが傷ついていたので、何かあって疲れているのだろうと思われた。
カイルが寝てしまったので、そろりと抜け出そうとシェリーが動くと痛いぐらい力が込められて、動けなくなり、結局カイルが目覚めるまでシェリーは動く事ができなかったのだ。
そして、遅い時間から夕食を作り始め、食べだす頃にオリバーが起きて来たのだった。
「そこをなんとかして欲しい。」
「無茶を言わないでくれ給え。神の力に干渉なんてできるはずないだろう。」
「でも、その祝福に影響されない人もいたから何か条件があるはず。」
「影響されない?確かに俺は何も感じない。それは面白いかもしれないね。因みに誰だね。影響を受けなかった人物とは」
「国王陛下。ディスタさん。第6師団長さんと副師団長さん。」
「ディスタ?なんで、まだこの大陸にいるのか。」
そう言ってオリバーはカイルを見る。そして、考えるように机を指でコツコツと叩きだす。
「まぁ、簡単に言えばレベル100以上の者たちだね。選ばれた者は祝福の影響は受けないという事か。それとも強制的な志向誘導に対する耐性か。どちらにしろ神の力に干渉することは無理だね。」
オリバーに無理だと言われてしまったら、対処のしようがない。敵意を向けられないのはいいかもしれないが、無条件で好意を持たれてしまうのは嫌なことだ。
「シェリー。珈琲のお代わり。」
オリバーがそう言って、シェリーに向けて珈琲カップを差し出してきたので、シェリーはカイルの膝から降りてキッチンに向かっていった。
カイルside
「ウィルの魔眼はきつかっただろ?」
何もかも見透かしたような目をしているオリバーに言われてしまった。
「ああ。」
「でも、それが正解だ。魔眼持ちは多種多様存在しているが、ラース魔眼が一番強力だったね。あの悪魔よりも。」
オリバーもディスタと同じことを言った。悪魔の魔眼よりもラース魔眼のほうが強いと
「何を焦っているか知らないが、君たちは些か足りないモノが多すぎるようだね。努力することは大切だが、間違った努力は良くない。シェリーに言ってはあるが、あの子は君たちに興味がないからね。君に渡しておくよ。君達に神から啓示を受けた。ここに行くといい。君たちとって足りないものが得ることができるところだ。」
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