225 / 796
18章 一人の有意義な時間は
214
しおりを挟む
ジャリっと砕けたガラスを踏み進んでくる足音と共に、殺気が辺りを支配する。
「俺がいない間に何があった。」
そう言いながらカイルがシェリーに近づいてくる。しかし、カイルの視線は未だにレイモンドに掴まれているシェリーの手に向けられていた。
「あったと言えばありましたが、それがどうしましたか?」
カイルは手刀でレイモンドの手を叩き落とし、シェリーを抱き寄せる。
「やはり、側を離れるんじゃなかった。」
抱き寄せたところでカイルはシェリーの首にいつもどおり青いペンダントが揺れていることに気がついた。
ペンダントがあるのにシェリーが本来の姿に戻っている。
「で、何があった。誰がこの様な状態にさせた。そこの近衛騎士隊長か。この国の王か。」
カイルはそう言いながら、シェリーの手を掴んでいたレイモンドを睨みつける。その時、廊下が騒がしくなり、部屋の扉が開け放たれ、十数人の騎士が剣を携え、なだれ込んできたのだ。
「ご無事ですか!」
そう言いながら、イーリスクロムを守るように囲った騎士たちはレイモンドと同じ様な軍服を纏っているので、近衛騎士の者達なのだろう。
「貴様等が侵入者か!この不届き者が!」
中央に陣取った大柄の熊獣人の男性にそのような事を言われたが、この言われようだとシェリーまで侵入者扱いにされてしまっている。侵入者はカイルのみなので、文句を言おうと壁になっているカイルから体をずらし、シェリーは口を開いた。
「私は国王陛下から呼ばれただけですので、侵入者ではありません。」
シェリーがそう言ったことで、多くの視線がシェリーに向けられたが、近衛騎士たちが黒髪のシェリーの姿を見て固まった。
やはり何も変わりないじゃないかと思ったが、何かおかしい。シェリーを見て視線を背けたり顔を真赤にしている。なんだ?この反応は?
シェリーが困惑しているとカイルが破壊した窓から新たな侵入者がやってきた。
「殿下ー。忘れものですよ。」
そう言いながら、ラースに居るはずのディスタがガラスを踏みながら入ってきた。
「速すぎです。剣を届けようとしても全然追いつけないじゃないですか。」
このなんとも言えない空気を壊してくれたのはありがたいが、侵入者が一人増えてしまったことに変わりはない。
カイルに大剣を渡しながら、ディスタの視線がシェリーに向けられた。
「え?これは・・・ナオフミが女装して・・・ぐっ。」
シェリーは思いっきりディスタの腹を殴った。
「何処がクソ勇者に似ていると?目が腐っているのでは?」
「その口の悪さは殿下の番か。全然違うじゃないか。うん。こっちの方がいい。」
そう言ってディスタはシェリーの頭を撫でるが、カイルにその手を叩き落とされる。
「さわるな。」
「はいはい。俺は帰りますよ。ウィルからの伝言で『続きはシェリーちゃんにお願いしてね。』だそうだ。」
別にオーウィルディアの口調を真似しなくてもいいと思うのだが、ディスタは用が終わったとばかりに踵を返して、入ってきた壊れた窓から出ていこうとしていた。しかし、それを引き止める声でディスタは足を止めた。
「ちょっと待て、その声はディスタ?」
近衛騎士たちに囲まれたイーリスクロムが引き止める。
「何か見えないけど、イーリスか?」
ディスタからそう言われ、イーリスクロムは近衛騎士たちに問題ないからと言って壁際で待機するように命令し、ディスタの方を向く。
「さっき気になることを言っていたが、殿下って誰のことかな?」
「誰ってカイザール殿下のことか?しかし、イーリスが本当に王なんてものをやっているなんてな。」
ディスタからカイルの名前を聞かされ、カイルを見て天井を見上げるイーリスクロムがいる。ため息を吐いてディスタにもう一つ気になっていた事柄をイーリスクロムは尋ねた。
「ディスタ。お前、国に帰るって言っていなかったか?なんでまだ、この大陸にいる?」
「ああそれ?一旦国に帰ったけど、命令でまた戻って来た。今はウィルのところで雇われている。あ!そうだ。ウィルから伝言があった。『イーリスちゃんに言っておいてー。昨日次元の悪魔が3体出現したわって、そのうち一体が魔眼持ちよ。思ったより魔眼持ちの出現が早いわ。魔王の復活も10年かからないかもしれないわ。』と言っておいてくれと言われた。」
だから、口真似は必要ないのではないのだろうか。
「魔眼持ちが?早急に対策しなければならないってことか。レイモンド。1刻後に軍議を開けるように伝達してくれ。」
「はっ。」
レイモンドはイーリスクロムに命令されたことを成す為に部屋を出ていき、ディスタも用が終わったので壊れた窓から外に出ていった。
「君が関わると普通では起こり得ないことが起こるね。寿命が縮む思いだよ。今日は君の了承が得られたからそれでいいよ。詳しことは後日連絡をするからその時はまた来てくれ。」
イーリスクロムはシェリーにまた来て欲しいと言い。オーウィルディアから言われたことを検討するためだろうか部屋を出ていき、シェリーとカイルも部屋を出された。
本当なら転移で家に帰りたいところだが、シェリーの手にはサリーから渡された写真機があるままだった。これは返しておかなければならないので、王宮から軍本部まで歩いて戻ることとなる。
しかし、すれ違う人の視線がとても気になる。隣で無言で歩いてるカイルの機嫌も段々悪くなってきているのか不穏な空気が漂ってきている。
一体何なのだ。今までのように拒否される感じや憎悪を向けられるわけでもない。どちらかというと、第5師団で向けられた視線に近い感じだ。
シェリーはあの時を思いでしてしまい、ブルリと震えてしまった。
「俺がいない間に何があった。」
そう言いながらカイルがシェリーに近づいてくる。しかし、カイルの視線は未だにレイモンドに掴まれているシェリーの手に向けられていた。
「あったと言えばありましたが、それがどうしましたか?」
カイルは手刀でレイモンドの手を叩き落とし、シェリーを抱き寄せる。
「やはり、側を離れるんじゃなかった。」
抱き寄せたところでカイルはシェリーの首にいつもどおり青いペンダントが揺れていることに気がついた。
ペンダントがあるのにシェリーが本来の姿に戻っている。
「で、何があった。誰がこの様な状態にさせた。そこの近衛騎士隊長か。この国の王か。」
カイルはそう言いながら、シェリーの手を掴んでいたレイモンドを睨みつける。その時、廊下が騒がしくなり、部屋の扉が開け放たれ、十数人の騎士が剣を携え、なだれ込んできたのだ。
「ご無事ですか!」
そう言いながら、イーリスクロムを守るように囲った騎士たちはレイモンドと同じ様な軍服を纏っているので、近衛騎士の者達なのだろう。
「貴様等が侵入者か!この不届き者が!」
中央に陣取った大柄の熊獣人の男性にそのような事を言われたが、この言われようだとシェリーまで侵入者扱いにされてしまっている。侵入者はカイルのみなので、文句を言おうと壁になっているカイルから体をずらし、シェリーは口を開いた。
「私は国王陛下から呼ばれただけですので、侵入者ではありません。」
シェリーがそう言ったことで、多くの視線がシェリーに向けられたが、近衛騎士たちが黒髪のシェリーの姿を見て固まった。
やはり何も変わりないじゃないかと思ったが、何かおかしい。シェリーを見て視線を背けたり顔を真赤にしている。なんだ?この反応は?
シェリーが困惑しているとカイルが破壊した窓から新たな侵入者がやってきた。
「殿下ー。忘れものですよ。」
そう言いながら、ラースに居るはずのディスタがガラスを踏みながら入ってきた。
「速すぎです。剣を届けようとしても全然追いつけないじゃないですか。」
このなんとも言えない空気を壊してくれたのはありがたいが、侵入者が一人増えてしまったことに変わりはない。
カイルに大剣を渡しながら、ディスタの視線がシェリーに向けられた。
「え?これは・・・ナオフミが女装して・・・ぐっ。」
シェリーは思いっきりディスタの腹を殴った。
「何処がクソ勇者に似ていると?目が腐っているのでは?」
「その口の悪さは殿下の番か。全然違うじゃないか。うん。こっちの方がいい。」
そう言ってディスタはシェリーの頭を撫でるが、カイルにその手を叩き落とされる。
「さわるな。」
「はいはい。俺は帰りますよ。ウィルからの伝言で『続きはシェリーちゃんにお願いしてね。』だそうだ。」
別にオーウィルディアの口調を真似しなくてもいいと思うのだが、ディスタは用が終わったとばかりに踵を返して、入ってきた壊れた窓から出ていこうとしていた。しかし、それを引き止める声でディスタは足を止めた。
「ちょっと待て、その声はディスタ?」
近衛騎士たちに囲まれたイーリスクロムが引き止める。
「何か見えないけど、イーリスか?」
ディスタからそう言われ、イーリスクロムは近衛騎士たちに問題ないからと言って壁際で待機するように命令し、ディスタの方を向く。
「さっき気になることを言っていたが、殿下って誰のことかな?」
「誰ってカイザール殿下のことか?しかし、イーリスが本当に王なんてものをやっているなんてな。」
ディスタからカイルの名前を聞かされ、カイルを見て天井を見上げるイーリスクロムがいる。ため息を吐いてディスタにもう一つ気になっていた事柄をイーリスクロムは尋ねた。
「ディスタ。お前、国に帰るって言っていなかったか?なんでまだ、この大陸にいる?」
「ああそれ?一旦国に帰ったけど、命令でまた戻って来た。今はウィルのところで雇われている。あ!そうだ。ウィルから伝言があった。『イーリスちゃんに言っておいてー。昨日次元の悪魔が3体出現したわって、そのうち一体が魔眼持ちよ。思ったより魔眼持ちの出現が早いわ。魔王の復活も10年かからないかもしれないわ。』と言っておいてくれと言われた。」
だから、口真似は必要ないのではないのだろうか。
「魔眼持ちが?早急に対策しなければならないってことか。レイモンド。1刻後に軍議を開けるように伝達してくれ。」
「はっ。」
レイモンドはイーリスクロムに命令されたことを成す為に部屋を出ていき、ディスタも用が終わったので壊れた窓から外に出ていった。
「君が関わると普通では起こり得ないことが起こるね。寿命が縮む思いだよ。今日は君の了承が得られたからそれでいいよ。詳しことは後日連絡をするからその時はまた来てくれ。」
イーリスクロムはシェリーにまた来て欲しいと言い。オーウィルディアから言われたことを検討するためだろうか部屋を出ていき、シェリーとカイルも部屋を出された。
本当なら転移で家に帰りたいところだが、シェリーの手にはサリーから渡された写真機があるままだった。これは返しておかなければならないので、王宮から軍本部まで歩いて戻ることとなる。
しかし、すれ違う人の視線がとても気になる。隣で無言で歩いてるカイルの機嫌も段々悪くなってきているのか不穏な空気が漂ってきている。
一体何なのだ。今までのように拒否される感じや憎悪を向けられるわけでもない。どちらかというと、第5師団で向けられた視線に近い感じだ。
シェリーはあの時を思いでしてしまい、ブルリと震えてしまった。
0
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる