219 / 797
18章 一人の有意義な時間は
208
しおりを挟む
まさか、シェリーのツガイに対する態度を神から口出しをされるとは思わないことだった。それもリオンがお気に入りだというウエール様からの啓示をオリバー経由で言われるなんて、なぜ、直接言わないのかとシェリーは憤る。
『ウエールが怯えちゃってるよ。ほら、前にテロスにスクリューアッパーしているの間近で見ちゃってから君が恐いらしいよ。』
謎の生命体からの言葉がシェリーの頭に響いてきた。そんのことで神が只人であるシェリーに怯えるなんてどういう事だ。あれはテロス様が悪いのだ。
「シェリー。神を殴るなんて恐れ多いね。」
やはり、オリバーは謎の生命体の言葉を聞くことができるようだ。
「あれはテロス様が悪いから、私が殴っても許されるはず。それから、食料保管倉庫に偶発的産物が入らないようにして欲しいのだけど?フィーディス商会からクレームが来たけど、何が遭ったか知っているよね。」
「尻尾を噛まれていた彼を助けて治療してあげたのに、クレームを言われるなんて心外だね。」
「配達に来て、異形に噛まれるなんて恐怖以外のなにものでもないと思う。とにかく入らないようにして。あと、あの猫は何?」
「これかね?」
そう言いてオリバーはテーブルの上に陣を描き、シェリーが先程見た黒い猫を召喚した。
「そう、それは何?猫だけど猫じゃない生物。」
「偵察用の魔導生物だ。ある程度は思考する機能も付けている。」
とうとう、オリバーは知性を持つモノを作ってしまったようだ。何を偵察するつもりなのかは知らないが、恐ろしいことだ。
「自分の作ったモノに噛まれないように管理はきちんとして欲しい。」
オリバーの作るものはなにげに恐ろしいのだ。ただのスライムに見えてもレーザー光を発する個体もいたのだ。この猫もどきも何を仕込まれているかわかったものではない。
「そこは問題ない。ごちそうさま。」
オリバーはそう言って立ち上がりダイニングを出ようとしたが、何かを思い出したように立ち止まりシェリーに一通の封筒を差し出した。
「これが届けられていた。」
シェリーが封筒を受け取ったのを見届けてオリバーはダイニングを出ていった。猫もどきはそのままでいいのだろうか。
シェリーは封筒の裏の差出人を見る。イーリスクロム・シーランとサインがされていた。
ああ、アリスの未来視の時が来たのか。
封筒の中身は戻り次第、軍本部を訪ねて欲しいという内容だった。
日付も時間の指定もなかった。確かにいつ戻ってくるか分からない人物に対しては無駄なことだろう。
嫌な事はさっさと済ますに限るとシェリーは出かける準備を始める。と言ってもいつもどおりの冒険者のくたびれた服に着替えるだけなのだが、それに青いペンダントと付けて外に出た。
秋の涼やかな風が吹き抜けていく。あと2ヶ月もすれば雪が降る季節になるだろう。
シェリーは東に向かい西第一層門まで歩いていく。遠くにみえる第一層門には見覚えのある人物が立っていた。子供に悪影響を及ぼしかねない人物だ。普通に原隊復帰できていることにシェリーは疑問に思ってしまう。
「あ!お前。ここに何の用だ。」
門兵として西第一層門に立っていたのはヒューレクレト・スラーヴァル第5師団長だった。師団長がよく西区に配備されているのはシェリー対策なのだろうか。
「陛下からのお呼び出しです。」
シェリーはそう言いながら、国王陛下のサインがされた封筒を見せる。
「お、おお。陛下から・・・今度は何をしたんだ?」
「何もしていません。通してくださ。」
「あ、ああ。」
ヒューレクレトは若干納得してない感じの返事をしながら、鉄の大きな門の横にある人が通れる小さな門を開けてくれた。
シェリーはヒューレクレトを横目に門をくぐって行く。ここなら小さな女の子がフラフラ来ることもないらか最善の配置なのかもしれないと納得することにした。
そして、シェリーはそのまま軍本部に向かっていく。時々シェリーの横を貴族が乗った馬車が通り過ぎて行くが、奇妙なモノを見るような視線を感じる。いつものことだ。普通ならくたびれた服で第一層内をうろつく者などいない。
しかし、そんなシェリーの少し先で止まる馬車があった。
「シェリーさん。どちらまで?お送りしましょうか?」
窓から顔を出して声をかけてきたのは先日家に訪ねてきたユーフィアだった。馬車の中から「奥様はしたないです。」とマリアの声が聞こえている。
「いいえ。すぐそこの軍本部までなのでいいです。」
「すぐそこ?軍本部は4区画先ですよ。さぁさぁ。乗って下さいな。」
ユーフィアは馬車の扉を御者をしている人に言って開けてしまった。近い内にユーフィアに連絡を取るつもりだったので、構わないかとシェリーは思い馬車に乗せてもらうことにした。
「軍本部なんて何かあったのですか?」
ユーフィアがシェリーに聞いてきた。ユーフィアはこれから出かけるのか、帰りなのかはわからないが、薄い青色の訪問用のドレスを着ていた。
「いいえ、お呼び出しを受けただけです。」
そう言ってシェリーは封筒の裏のサインを見せる。国王陛下のサインを見たユーフィアは目を大きく見開いて、何かを言おうとしたが、先にユーフィアの隣に座っていた侍女が口を開いた。
「兄から呼び出しなんて貴女なにをしたのかしら?」
兄・・・侍女をよく見ると金髪に碧の目その頭にはマリアより大きな三角の耳が生えていた。イーリスクロムと同じ狐獣人の女性だった。
『ウエールが怯えちゃってるよ。ほら、前にテロスにスクリューアッパーしているの間近で見ちゃってから君が恐いらしいよ。』
謎の生命体からの言葉がシェリーの頭に響いてきた。そんのことで神が只人であるシェリーに怯えるなんてどういう事だ。あれはテロス様が悪いのだ。
「シェリー。神を殴るなんて恐れ多いね。」
やはり、オリバーは謎の生命体の言葉を聞くことができるようだ。
「あれはテロス様が悪いから、私が殴っても許されるはず。それから、食料保管倉庫に偶発的産物が入らないようにして欲しいのだけど?フィーディス商会からクレームが来たけど、何が遭ったか知っているよね。」
「尻尾を噛まれていた彼を助けて治療してあげたのに、クレームを言われるなんて心外だね。」
「配達に来て、異形に噛まれるなんて恐怖以外のなにものでもないと思う。とにかく入らないようにして。あと、あの猫は何?」
「これかね?」
そう言いてオリバーはテーブルの上に陣を描き、シェリーが先程見た黒い猫を召喚した。
「そう、それは何?猫だけど猫じゃない生物。」
「偵察用の魔導生物だ。ある程度は思考する機能も付けている。」
とうとう、オリバーは知性を持つモノを作ってしまったようだ。何を偵察するつもりなのかは知らないが、恐ろしいことだ。
「自分の作ったモノに噛まれないように管理はきちんとして欲しい。」
オリバーの作るものはなにげに恐ろしいのだ。ただのスライムに見えてもレーザー光を発する個体もいたのだ。この猫もどきも何を仕込まれているかわかったものではない。
「そこは問題ない。ごちそうさま。」
オリバーはそう言って立ち上がりダイニングを出ようとしたが、何かを思い出したように立ち止まりシェリーに一通の封筒を差し出した。
「これが届けられていた。」
シェリーが封筒を受け取ったのを見届けてオリバーはダイニングを出ていった。猫もどきはそのままでいいのだろうか。
シェリーは封筒の裏の差出人を見る。イーリスクロム・シーランとサインがされていた。
ああ、アリスの未来視の時が来たのか。
封筒の中身は戻り次第、軍本部を訪ねて欲しいという内容だった。
日付も時間の指定もなかった。確かにいつ戻ってくるか分からない人物に対しては無駄なことだろう。
嫌な事はさっさと済ますに限るとシェリーは出かける準備を始める。と言ってもいつもどおりの冒険者のくたびれた服に着替えるだけなのだが、それに青いペンダントと付けて外に出た。
秋の涼やかな風が吹き抜けていく。あと2ヶ月もすれば雪が降る季節になるだろう。
シェリーは東に向かい西第一層門まで歩いていく。遠くにみえる第一層門には見覚えのある人物が立っていた。子供に悪影響を及ぼしかねない人物だ。普通に原隊復帰できていることにシェリーは疑問に思ってしまう。
「あ!お前。ここに何の用だ。」
門兵として西第一層門に立っていたのはヒューレクレト・スラーヴァル第5師団長だった。師団長がよく西区に配備されているのはシェリー対策なのだろうか。
「陛下からのお呼び出しです。」
シェリーはそう言いながら、国王陛下のサインがされた封筒を見せる。
「お、おお。陛下から・・・今度は何をしたんだ?」
「何もしていません。通してくださ。」
「あ、ああ。」
ヒューレクレトは若干納得してない感じの返事をしながら、鉄の大きな門の横にある人が通れる小さな門を開けてくれた。
シェリーはヒューレクレトを横目に門をくぐって行く。ここなら小さな女の子がフラフラ来ることもないらか最善の配置なのかもしれないと納得することにした。
そして、シェリーはそのまま軍本部に向かっていく。時々シェリーの横を貴族が乗った馬車が通り過ぎて行くが、奇妙なモノを見るような視線を感じる。いつものことだ。普通ならくたびれた服で第一層内をうろつく者などいない。
しかし、そんなシェリーの少し先で止まる馬車があった。
「シェリーさん。どちらまで?お送りしましょうか?」
窓から顔を出して声をかけてきたのは先日家に訪ねてきたユーフィアだった。馬車の中から「奥様はしたないです。」とマリアの声が聞こえている。
「いいえ。すぐそこの軍本部までなのでいいです。」
「すぐそこ?軍本部は4区画先ですよ。さぁさぁ。乗って下さいな。」
ユーフィアは馬車の扉を御者をしている人に言って開けてしまった。近い内にユーフィアに連絡を取るつもりだったので、構わないかとシェリーは思い馬車に乗せてもらうことにした。
「軍本部なんて何かあったのですか?」
ユーフィアがシェリーに聞いてきた。ユーフィアはこれから出かけるのか、帰りなのかはわからないが、薄い青色の訪問用のドレスを着ていた。
「いいえ、お呼び出しを受けただけです。」
そう言ってシェリーは封筒の裏のサインを見せる。国王陛下のサインを見たユーフィアは目を大きく見開いて、何かを言おうとしたが、先にユーフィアの隣に座っていた侍女が口を開いた。
「兄から呼び出しなんて貴女なにをしたのかしら?」
兄・・・侍女をよく見ると金髪に碧の目その頭にはマリアより大きな三角の耳が生えていた。イーリスクロムと同じ狐獣人の女性だった。
0
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

婚約破棄はこちらからお願いしたいのですが、創造スキルの何がいけないのでしょう?
ゆずこしょう
恋愛
「本日でメレナーデ・バイヤーとは婚約破棄し、オレリー・カシスとの婚約をこの場で発表する。」
カルーア国の建国祭最終日の夜会で大事な話があると集められた貴族たちを前にミル・カルーア王太子はメレアーデにむかって婚約破棄を言い渡した。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる