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17章 不確定な未来と不穏な未来の予兆

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『そうねー。ここから帰ると多分、貴女にとって不愉快な事を言われるけど、それを了承しなさい。それで、貴女にとって足りなかったモノが手に入るわ。』

「それは何ですか?」

『そこまでは教えないわ。だって、全てが分かってしまったら、面白くないでしょ?あ・・・こんな事を言っていると、クソ神みたいだと言われそうね。
 あ、そうそうユールクスを視た?凄いと思わない?私が神を作り出したのよ。あ、まだか。
 あのクソ神に絶対に後悔させてやるんだから!私をこの私を見殺しにした、あのクソ神に絶対に思い知らせてやるんだから!私は神を作り出せる程凄いって認めさせてやるんだからね!』

 黒髪のエルフの少女は肩を怒らせて言葉を放つ。相当、クソ神というモノに腹を立てているらしい。

「アレはそういうものだと思いますから、怒るだけ無駄です。」

『分かっているわよ。暖簾に腕押しでしょ?はぁ。あと、そうね。次元の悪魔の連絡は来たかしら?もう少し後かしら?彼奴等の未来視はぶれ過ぎて分からないのよ。』

「先程ありました。」

『そう。今回は魔眼持ちも混じっているから気をつけなさい。』

 これは本当に過去の産物なのだろうか。二人の話しがかみ合い過ぎている。

「魔眼持ちが?ペースが早すぎる。」

『魔眼持ちが混じっていることが不可解かしら?でも、そうでもないわよ。この大陸の特に北側の人々の嘆きや憎しみ・怒りの思いが急激に増えているの。そのうち完全体の悪魔が出てくるのも時間の問題ね。』

「やはり、マルス帝国を潰さないとだめですね。」

『気を早らないで、下準備をきちんとしないと、呑まれるのは貴女よ。不可解要素もあるのでしょ?その為に帰ってから言われた事を受けるように。』

 アリスは念押しの様にもう一度言った。よっぽどシェリーが嫌なことを言われるのだろう。


『今回はコレぐらいかしら?』

「他に遺した場所は何処ですか?」

『毎回、そう聞くけど、私の回答も同じ。探しなさい。私の言葉はその時ではないと意味をなさないもの。黒の聖女。貴女の未来が一番不安定。一人で魔王に挑み相打ちで死ぬか。貴女の番と共に魔王に挑むか。』

 アリスはシェリーから目線を外し、言葉を紡ぐ。

『黒の聖女が魔王に挑む未来は確定している。しかし、その行程は様々だ。お前達が弱いと黒の聖女の足を引っ張る。お前達が黒の聖女を捕まえておかないと一人で魔王に突っ込んで行く。いずれにしても黒の聖女は死ぬ。まぁ、クソ神はそれでも良いって言うのでしょう。黒の聖女の生死はお前達次第だ。』

「心得た。」

 カイルがシェリーと何処と無く雰囲気が似た黒髪の少女の言葉に答えた。

「アリスさん、そんな事は言わなくてもいいです。」

 シェリーが不機嫌そうに言い放つが、アリスと呼ばれた少女がシェリーに視線を戻し

『私個人としては貴女生きて欲しいから、もう、私に出来る事は未来の者たちに言葉を残す事だけ、ただ、それしか出来ないから。ふふふ、また会いましょう。』

 そう言って黒髪の少女が映し出されていた壁がただの岩の壁に戻ってしまった。アリスの言葉から推測するとまだシェリーへのメッセージが何処かに残されているのだろう。

「シェリー、彼女は何者なのかな?」

 未だに壁を睨み続けているシェリーにカイルが尋ねてきた。

「彼女は未来視が出来るエルフです。」

「・・・それだけ?」

 シェリーは振り返りカイルを見上げる。

「他に何が必要でしょうか?」

 何が必要かと問われれば、必要無いのかも知れないが、それだけの情報では何も分からないのと同じだ。

「うーん。必要って程じゃ無いけど、シェリーにとって、大事な事を教えてくれる人みたいだから、知っておきたいってことかな?」

 確かに未来視を遺してくれており、参考にしている事は多い。レベルを上げる事も然り、スキルを作り上げる事も然り、マルス帝国の情報も与えてくれることもあった。まぁ、先程と同じく大分濁した感じで言われたが

「彼女はアリス。エルフの王として彼の世界からこの世界にあの謎の生命体によって喚ばれた人です。」

「エルフの王!」

 エルフの王、エルフ神聖王国が存在していた時代に権力を奮った存在だ。あの暴君レイアルティス王によって国を滅ぼされるまで、この大陸の支配者と言っていい存在だった。

「しかし、彼女の価値観とエルフの価値観が合わなかったようで、エルフ族はそんな彼女を排除しようとしました。ある時から自分が死ぬ未来しか視えなくなったそうです。だから、彼女は残された時間を全てこの世界に喚ばれた者たちへ未来視を残す事にしたそうです。」

 それはそうだろう。科学の進んだ世界から魔法が進んだ世界、それも人族以外の種族が文明を持っており、魔物と呼ばれる外敵も存在するのだ。
 価値観の違いはどうしても出てきてしまったのだった。
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