201 / 796
17章 不確定な未来と不穏な未来の予兆
191
しおりを挟む
シェリーは揺り返す波の音で目が覚めた。目の前には金色の目が・・・デジャヴ。
「シェリー。おはよう。」
「・・・おはようございます。」
シェリーは起き上がろうと体を動かすが、カイルに抱きしめられていて、動く事ができない。
「カイルさん。起きたいのですが?」
「イルでしょ。せっかく二人っきりになれたのにゆっくりしてもいいと思うよ。」
「私は受けた依頼を完了させたいのですが?」
「もう少しだけ、このままがいい。」
そう言ってカイルはシェリーを抱きしめている力を強める。
「う。少し力を弱めてください。」
シェリーに言われ、カイルは力を弱めてシェリーの首元に顔を埋める。そして、気になっていたことをシェリーに尋ねた。
「シェリー。シンスイって何かな?」
いきなりの質問にシェリーは何のことだと考えるが、気を失う前にダンジョンマスターであるユールクスに神水をもらう許可をもらったことを思い出し
「ああ、神水ですか?万能薬みたいなものです。ありとあらゆる病を癒やし、無くなった四肢も元通りに治すことができるものです。」
「そんなものがこのダンジョンにあるのか?」
「ダンジョンにあるというか、この広大なダンジョンの何千年という時間をかけて濃縮したエネルギーの結晶というべきものです。賢者もこの神水の研究をしたくてこの国にいたほどですから、まぁ取りすぎてユールクスさんにダンジョンに入ることを禁止されたそうです。」
賢者。勇者ナオフミに殺されたと思われる人物だ。弟子と共に神水を人工的に作れないかと研究するために、この地に賢者の塔を建て、住み着いていたのだった。
「でも、その効力は聖女であるシェリーにとって必要はない物だよね。」
カイルの疑問は一理ある。それぐらいなら『聖女の慈愛』があれば必要のないものだ。
「私は使いませんよ。来年から実施訓練が始まると聞いていますので、私が側にいないルーちゃんに何があっても大丈夫なように万全にしておかないと心配じゃないですか。この国に来たらユールクスさんに交渉して1本分は確保するつもりでしたが、頑張ったかいがあって5本分もいただいていいと許可をもらうことができました。ふふふ。」
シェリーは笑顔で嬉しそうに話している。ルークのことでしか見られない笑顔だ。シェリーが無理をしてまで手に入れたい理由がルークのためだったなんて、シェリーのルークへの愛は相当に重い。
「ルークの為か・・・。そう言えばダンジョンマスターがシェリーはダンジョンに来るとここに寄ると言っていたけど、シェリーは海が好きなのかな?」
シェリーが好きなものはルーク以外にあるのなら知っておきたいとカイルは聞いてみるが
「別に好きではありませよ。海ということはここは3階層ですよね。1階層から4階層まではユールクスさんが作り上げた、こだわりの世界なのですよ。ですから魔物はいません。」
「え?でもレイスやゾンビがいたけど?」
「別に攻撃されませんでしたよね。強いて言うならその階層の住人であり案内人です。こちら側が敵意をもって攻撃をしても何も反撃されることはありません。だから、この階層の海は安全なのですよ。」
海が安全・・・この世界では魔物が存在する。それは陸地だけではなく海の中も存在するのだ。
「ですから、海の物が取ることができるのです。まぁ。そんなに頻繁にここにこれるわけではありませんので、今は炎王と交渉して、フィーディス商会の人に取ってきてもらっていますが。」
「もしかして、フィーディス商会の人の伝言はそれのことだったのかな?」
「はぁ。そうですね。定期的に持ってきてもらうようにしていたのですが、まさか偶発的産物の被害に遭っていたなんて。」
シェリーの好きなものがわかればいいと思って聞いてみれば全く違う答えが返ってきてしまった。多分これもルークの好きなものだったりするのだろう。だから、カイルはストレートに聞いてみた。
「シェリーの好きなモノってなに?」
「ルーちゃんです。」
シェリーもそのまま答えた。それ以外はないと言わんばかりに言い切った。
「ルーク以外には?食べ物でも色でもシェリーの好きなものが知りたいな。」
「・・・。ありません。」
食べる物もルークが成長に必要なものを出し、ルークの好みに合わせて作ったもの出しているので、自分の好みがあるわけではないし、色も特にこだわりなんてない。好きなものと言われても特に無いのだ。
「それじゃ、シェリーは俺のことを好き?嫌い?」
いつぞやを思い出す質問をカイルはしてきた。
「2択ですか?別に好きでも嫌いでもありません。」
シェリーは普通に答える。ベッドの中で二人っきりの状態でそんな質問をされれば、赤面するか狼狽えるぐらいの反応を見せてもいいはずなのだが、シェリーはカイルを見ながら普通に答える。
これがルークだったのなら違う反応を見せたかもしれない。
「そうか。じゃ家族としては受け入れてくれるかな?」
家族として・・・その質問にシェリーは固まってしまった。ここ一ヶ月ほど押し掛けられるように共に過ごしているが、何かとカイルはシェリーの家事を手伝ってくれている。今まで、そんなこと手伝ってくれる人はいなかったので、助かっているのは事実だ。
「家族としてなら?」
「それは嬉しいな。シェリー、愛しているよ。」
カイルはそう言いながらシェリーに口づけをする。普通なら大したことはない事なのだが、ルークとオリバー以外を家族として受け入れていないシェリーにとっては大きな変化だった。
「シェリー。おはよう。」
「・・・おはようございます。」
シェリーは起き上がろうと体を動かすが、カイルに抱きしめられていて、動く事ができない。
「カイルさん。起きたいのですが?」
「イルでしょ。せっかく二人っきりになれたのにゆっくりしてもいいと思うよ。」
「私は受けた依頼を完了させたいのですが?」
「もう少しだけ、このままがいい。」
そう言ってカイルはシェリーを抱きしめている力を強める。
「う。少し力を弱めてください。」
シェリーに言われ、カイルは力を弱めてシェリーの首元に顔を埋める。そして、気になっていたことをシェリーに尋ねた。
「シェリー。シンスイって何かな?」
いきなりの質問にシェリーは何のことだと考えるが、気を失う前にダンジョンマスターであるユールクスに神水をもらう許可をもらったことを思い出し
「ああ、神水ですか?万能薬みたいなものです。ありとあらゆる病を癒やし、無くなった四肢も元通りに治すことができるものです。」
「そんなものがこのダンジョンにあるのか?」
「ダンジョンにあるというか、この広大なダンジョンの何千年という時間をかけて濃縮したエネルギーの結晶というべきものです。賢者もこの神水の研究をしたくてこの国にいたほどですから、まぁ取りすぎてユールクスさんにダンジョンに入ることを禁止されたそうです。」
賢者。勇者ナオフミに殺されたと思われる人物だ。弟子と共に神水を人工的に作れないかと研究するために、この地に賢者の塔を建て、住み着いていたのだった。
「でも、その効力は聖女であるシェリーにとって必要はない物だよね。」
カイルの疑問は一理ある。それぐらいなら『聖女の慈愛』があれば必要のないものだ。
「私は使いませんよ。来年から実施訓練が始まると聞いていますので、私が側にいないルーちゃんに何があっても大丈夫なように万全にしておかないと心配じゃないですか。この国に来たらユールクスさんに交渉して1本分は確保するつもりでしたが、頑張ったかいがあって5本分もいただいていいと許可をもらうことができました。ふふふ。」
シェリーは笑顔で嬉しそうに話している。ルークのことでしか見られない笑顔だ。シェリーが無理をしてまで手に入れたい理由がルークのためだったなんて、シェリーのルークへの愛は相当に重い。
「ルークの為か・・・。そう言えばダンジョンマスターがシェリーはダンジョンに来るとここに寄ると言っていたけど、シェリーは海が好きなのかな?」
シェリーが好きなものはルーク以外にあるのなら知っておきたいとカイルは聞いてみるが
「別に好きではありませよ。海ということはここは3階層ですよね。1階層から4階層まではユールクスさんが作り上げた、こだわりの世界なのですよ。ですから魔物はいません。」
「え?でもレイスやゾンビがいたけど?」
「別に攻撃されませんでしたよね。強いて言うならその階層の住人であり案内人です。こちら側が敵意をもって攻撃をしても何も反撃されることはありません。だから、この階層の海は安全なのですよ。」
海が安全・・・この世界では魔物が存在する。それは陸地だけではなく海の中も存在するのだ。
「ですから、海の物が取ることができるのです。まぁ。そんなに頻繁にここにこれるわけではありませんので、今は炎王と交渉して、フィーディス商会の人に取ってきてもらっていますが。」
「もしかして、フィーディス商会の人の伝言はそれのことだったのかな?」
「はぁ。そうですね。定期的に持ってきてもらうようにしていたのですが、まさか偶発的産物の被害に遭っていたなんて。」
シェリーの好きなものがわかればいいと思って聞いてみれば全く違う答えが返ってきてしまった。多分これもルークの好きなものだったりするのだろう。だから、カイルはストレートに聞いてみた。
「シェリーの好きなモノってなに?」
「ルーちゃんです。」
シェリーもそのまま答えた。それ以外はないと言わんばかりに言い切った。
「ルーク以外には?食べ物でも色でもシェリーの好きなものが知りたいな。」
「・・・。ありません。」
食べる物もルークが成長に必要なものを出し、ルークの好みに合わせて作ったもの出しているので、自分の好みがあるわけではないし、色も特にこだわりなんてない。好きなものと言われても特に無いのだ。
「それじゃ、シェリーは俺のことを好き?嫌い?」
いつぞやを思い出す質問をカイルはしてきた。
「2択ですか?別に好きでも嫌いでもありません。」
シェリーは普通に答える。ベッドの中で二人っきりの状態でそんな質問をされれば、赤面するか狼狽えるぐらいの反応を見せてもいいはずなのだが、シェリーはカイルを見ながら普通に答える。
これがルークだったのなら違う反応を見せたかもしれない。
「そうか。じゃ家族としては受け入れてくれるかな?」
家族として・・・その質問にシェリーは固まってしまった。ここ一ヶ月ほど押し掛けられるように共に過ごしているが、何かとカイルはシェリーの家事を手伝ってくれている。今まで、そんなこと手伝ってくれる人はいなかったので、助かっているのは事実だ。
「家族としてなら?」
「それは嬉しいな。シェリー、愛しているよ。」
カイルはそう言いながらシェリーに口づけをする。普通なら大したことはない事なのだが、ルークとオリバー以外を家族として受け入れていないシェリーにとっては大きな変化だった。
0
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

どんなに私が愛しても
豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。
これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる