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16章 英雄の国
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「天津さん。あと、5分だけです。」
この魔力量の減りからいって保ってそれだけだ。
「佐々木さん。わかった。ありがとう。」
アマツはユールクスと話し始めた。やはり、ユールクスは嬉しそうだ。
ダンジョンマスターと言うのは孤独な存在だ。己が死ねばダンジョンの崩壊に繋がる。ダンジョンコアを破壊されても同じこと、だから、ダンジョンマスターは人前に出ることはない。己を守るためにダンジョンコアを守るために。
だから、孤独だ。しかし、寂しいわけではないと言う。高位な魔物を作り出せば話し相手もしてくれるし、ダンジョンの細かなことも手伝ってくれるらしい。だが、所詮己が作り出したものだ。同等ではありえない。
しかし、ユールクスに対等に接してくれる人がいた。炎王もそうらしいが、ユールクスに一番影響を与えたのが、アマツともう一人の人物だ。彼にこの異世界を再現させるきっかけを作った人達だと言っていいだろう。そして、彼をここまでのダンジョンマスターに育てた人物だと言ってもいいだろう。もう一人の人物が言っていたそうだ。ユールクスは世界で最凶のダンジョンマスターだと。
「天津さん。時間です。」
「え?もう?5分は早いわね。でも、ありがとう。ユールクスもありがとう。さようなら。」
「ああ、さようなら。アマツ。」
二人の別れの挨拶と同時に「『解除。』」とシェリーはスキルを解いて、思わず地面に座り込むが
「シェリー!」
体制が崩れたところでカイルに抱えられていた。
「ユールクスさん。裏50階層に行ったついでに神水を5本分もらって行ってもいいですか?」
「ああ、構わない。もう一度アマツに会うこともできたし、今回のお礼だ。」
シェリーは密かにガッツポーズを取る。今回無理をして頑張ったかいがあった。そして、そのまま意識を手放した。
カイルside
「シンスイ?」
どうやらそれを手に入れるために無理をしたようだ。あれだけ皆がスキルを解除するように言っても頑なに拒んだ理由がシンスイと言うものが欲しかったらしい。しかし、この場所はなんだ?ダンジョンとは思えないところだ。
「氷竜。ラースを連れてこっちに来い。」
ダンジョンマスターに呼ばれそちらに足を向ける。
「ここはなんだ?」
「ここか?異世界を再現したのだ。黒のエルフが言っていた不思議な世界。水龍が言っていた魔法がない世界。黒龍が我に見せてくれた世界を模したのだ。なにも言わぬがラースもここを知っていたようだ。ただ、あまり好かぬらしい。」
異世界をシェリーが知っていた?ササキさんのいた世界ということか!もう一度その異世界を見ようとすれば、そこは全く別の場所になっていた。
目の前には青い空と海が広がっていた。足元は舗装された地面でなくなり、砂浜に変わっていた。
「移動した?」
「ああ、我はダンジョン内であれば自由に移動できるからな。ここは3階層だ。ラースはダンジョンにくると必ずこの階層に寄って行くから気に入っているのだろう。黒龍曰く『南国リゾート』というものらしい。」
また、分からない言葉が出てきた。ナンゴクリゾートとは何だろう。シェリーに聞けばわかるのだろうか。
「そこの建物は休めるようになっているから好きに使うといい。」
ユールクスが指した先には白壁の赤い屋根の建物があった。その建物の前には色彩豊かな布地を纏った女性・・・ゾンビだろうか足がおかしな方向に曲がり、腕が取れかかっている顔色の悪い女性が立っていた。
ここのダンジョンはアンデット系の魔物が多いのだろうか。
『いらっしゃいませ。お部屋に案内致します。』
その頃、表ダンジョンに向かっている4人は・・・
「なぜ、俺がお前たちと行動を共にしなければならないのだ。」
添乗員姿のレイスの女性の後に付いていき、5番線に待機していた列車に4人は乗せられていた。グレイは出入り口のところに立ったまま何か本のようなものを見ている。スーウェンは座席に座り、回復薬や魔道具のチェックを行っている。オルクスはグレイとは反対側の出入り口に立って外の景色を物珍しそうに見ている。そして、文句を言っているのは強制的にここまで連れて来られ、列車に乗せられたリオンである。
「俺はシェリーと行くと思っていたのに。」
「シェリーは足手まといはいらないと言っているんだ。」
本らしきものを読んでいたグレイが顔を上げ、リオンに言う。一番レベルが低くシェリーの足手まといだと一番自覚しているグレイが自分に言い聞かせるように言った。
「言っておくが俺はレベル100だぞ。」
リオンは自信満々で言うが
「レベルが100あれば初代様と剣で打ち合うことができるのか?先程いた英雄のアマツ様と拳で打ち合えるのか?」
人族でしかないシェリーが二人の龍人と戦う姿を近くで見ていたオルクスがリオンに尋ねる。
「初代様と剣で?それは流石に無理だ。鬼族と龍人族とではどうしても埋めることが出来ない差という物が存在する。」
「シェリーは普通に初代様と剣の相手をしていたぞ。アマツ様もシェリーと拳を交えて、腕が一本持って行かれそうだったと言っていた。お互いが本気を出すことはなかったが、シェリーは龍人の二人と互角だったと言っていいかもしれない。」
そのオルクスの言葉を聞いたリオンが唖然とする。
「だから、あんなにレベルを上げろと言われていたのか。」
リオンは炎王からレベルを上げるように言われていたのだが、レベルが100に達したことに満足してしまい、それ以上のレベルを上げようとはしていなかった。
「そう言えば先程からグレイは何を読んでいるのですか?」
リオンが落ち着いたことで、スーウェンがグレイが見ているものが気になり、聞いてみた。
「あ?これか?ネールっていう人から渡されたんだ。爺様がダンジョンを掃除?をするとき用に書き記したものらしい。」
「なんですかそれは見せなさい。」
スーウェンは立ち上がりグレイに詰め寄る。
「何で俺はダンジョンのことなんて知らなかったのにネールのヤツが知っているんだ!グレイそれを見せろ。」
反対側の出入り口にいたオルクスもグレイに詰め寄っていく。
「え?嫌だ。俺が一番レベルが低いのに、これぐらいハンデがあってもいいだろ?」
「今回大幅にレベルアップできる機会なのです。それを逃がすわけがないですよね。」
「レベル200まで行かないとシェリーに認められないからな。」
「レベルが200・・・それは頑張らないといけないな。」
いつの間にか、リオンもグレイの側に寄ってきて、シド総帥が書き記したものを狙っていた。
『まもなく5階層に到着いたします。下車をされますお客様は熱耐性を施してお待ちくださいませ。』
ダンジョンの5階層にもうすぐ着くというアナウンスが流れてきた。そのアナウンスの声を消すぐらいの大声で
「お前らは俺よりレベルが高いから必要ないだろ!」
グレイはシド総帥が書き記したものを見せることへの拒否反応を示した。
この魔力量の減りからいって保ってそれだけだ。
「佐々木さん。わかった。ありがとう。」
アマツはユールクスと話し始めた。やはり、ユールクスは嬉しそうだ。
ダンジョンマスターと言うのは孤独な存在だ。己が死ねばダンジョンの崩壊に繋がる。ダンジョンコアを破壊されても同じこと、だから、ダンジョンマスターは人前に出ることはない。己を守るためにダンジョンコアを守るために。
だから、孤独だ。しかし、寂しいわけではないと言う。高位な魔物を作り出せば話し相手もしてくれるし、ダンジョンの細かなことも手伝ってくれるらしい。だが、所詮己が作り出したものだ。同等ではありえない。
しかし、ユールクスに対等に接してくれる人がいた。炎王もそうらしいが、ユールクスに一番影響を与えたのが、アマツともう一人の人物だ。彼にこの異世界を再現させるきっかけを作った人達だと言っていいだろう。そして、彼をここまでのダンジョンマスターに育てた人物だと言ってもいいだろう。もう一人の人物が言っていたそうだ。ユールクスは世界で最凶のダンジョンマスターだと。
「天津さん。時間です。」
「え?もう?5分は早いわね。でも、ありがとう。ユールクスもありがとう。さようなら。」
「ああ、さようなら。アマツ。」
二人の別れの挨拶と同時に「『解除。』」とシェリーはスキルを解いて、思わず地面に座り込むが
「シェリー!」
体制が崩れたところでカイルに抱えられていた。
「ユールクスさん。裏50階層に行ったついでに神水を5本分もらって行ってもいいですか?」
「ああ、構わない。もう一度アマツに会うこともできたし、今回のお礼だ。」
シェリーは密かにガッツポーズを取る。今回無理をして頑張ったかいがあった。そして、そのまま意識を手放した。
カイルside
「シンスイ?」
どうやらそれを手に入れるために無理をしたようだ。あれだけ皆がスキルを解除するように言っても頑なに拒んだ理由がシンスイと言うものが欲しかったらしい。しかし、この場所はなんだ?ダンジョンとは思えないところだ。
「氷竜。ラースを連れてこっちに来い。」
ダンジョンマスターに呼ばれそちらに足を向ける。
「ここはなんだ?」
「ここか?異世界を再現したのだ。黒のエルフが言っていた不思議な世界。水龍が言っていた魔法がない世界。黒龍が我に見せてくれた世界を模したのだ。なにも言わぬがラースもここを知っていたようだ。ただ、あまり好かぬらしい。」
異世界をシェリーが知っていた?ササキさんのいた世界ということか!もう一度その異世界を見ようとすれば、そこは全く別の場所になっていた。
目の前には青い空と海が広がっていた。足元は舗装された地面でなくなり、砂浜に変わっていた。
「移動した?」
「ああ、我はダンジョン内であれば自由に移動できるからな。ここは3階層だ。ラースはダンジョンにくると必ずこの階層に寄って行くから気に入っているのだろう。黒龍曰く『南国リゾート』というものらしい。」
また、分からない言葉が出てきた。ナンゴクリゾートとは何だろう。シェリーに聞けばわかるのだろうか。
「そこの建物は休めるようになっているから好きに使うといい。」
ユールクスが指した先には白壁の赤い屋根の建物があった。その建物の前には色彩豊かな布地を纏った女性・・・ゾンビだろうか足がおかしな方向に曲がり、腕が取れかかっている顔色の悪い女性が立っていた。
ここのダンジョンはアンデット系の魔物が多いのだろうか。
『いらっしゃいませ。お部屋に案内致します。』
その頃、表ダンジョンに向かっている4人は・・・
「なぜ、俺がお前たちと行動を共にしなければならないのだ。」
添乗員姿のレイスの女性の後に付いていき、5番線に待機していた列車に4人は乗せられていた。グレイは出入り口のところに立ったまま何か本のようなものを見ている。スーウェンは座席に座り、回復薬や魔道具のチェックを行っている。オルクスはグレイとは反対側の出入り口に立って外の景色を物珍しそうに見ている。そして、文句を言っているのは強制的にここまで連れて来られ、列車に乗せられたリオンである。
「俺はシェリーと行くと思っていたのに。」
「シェリーは足手まといはいらないと言っているんだ。」
本らしきものを読んでいたグレイが顔を上げ、リオンに言う。一番レベルが低くシェリーの足手まといだと一番自覚しているグレイが自分に言い聞かせるように言った。
「言っておくが俺はレベル100だぞ。」
リオンは自信満々で言うが
「レベルが100あれば初代様と剣で打ち合うことができるのか?先程いた英雄のアマツ様と拳で打ち合えるのか?」
人族でしかないシェリーが二人の龍人と戦う姿を近くで見ていたオルクスがリオンに尋ねる。
「初代様と剣で?それは流石に無理だ。鬼族と龍人族とではどうしても埋めることが出来ない差という物が存在する。」
「シェリーは普通に初代様と剣の相手をしていたぞ。アマツ様もシェリーと拳を交えて、腕が一本持って行かれそうだったと言っていた。お互いが本気を出すことはなかったが、シェリーは龍人の二人と互角だったと言っていいかもしれない。」
そのオルクスの言葉を聞いたリオンが唖然とする。
「だから、あんなにレベルを上げろと言われていたのか。」
リオンは炎王からレベルを上げるように言われていたのだが、レベルが100に達したことに満足してしまい、それ以上のレベルを上げようとはしていなかった。
「そう言えば先程からグレイは何を読んでいるのですか?」
リオンが落ち着いたことで、スーウェンがグレイが見ているものが気になり、聞いてみた。
「あ?これか?ネールっていう人から渡されたんだ。爺様がダンジョンを掃除?をするとき用に書き記したものらしい。」
「なんですかそれは見せなさい。」
スーウェンは立ち上がりグレイに詰め寄る。
「何で俺はダンジョンのことなんて知らなかったのにネールのヤツが知っているんだ!グレイそれを見せろ。」
反対側の出入り口にいたオルクスもグレイに詰め寄っていく。
「え?嫌だ。俺が一番レベルが低いのに、これぐらいハンデがあってもいいだろ?」
「今回大幅にレベルアップできる機会なのです。それを逃がすわけがないですよね。」
「レベル200まで行かないとシェリーに認められないからな。」
「レベルが200・・・それは頑張らないといけないな。」
いつの間にか、リオンもグレイの側に寄ってきて、シド総帥が書き記したものを狙っていた。
『まもなく5階層に到着いたします。下車をされますお客様は熱耐性を施してお待ちくださいませ。』
ダンジョンの5階層にもうすぐ着くというアナウンスが流れてきた。そのアナウンスの声を消すぐらいの大声で
「お前らは俺よりレベルが高いから必要ないだろ!」
グレイはシド総帥が書き記したものを見せることへの拒否反応を示した。
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