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14章 黒の国
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シェリーは先程いた客室に連れて来られていた。目の前には王太子がおり、イライラした感じが見て取れる。
そして、シェリーの両隣にはグレイとスーウェンがおり、後ろにはオルクスが立っている。カイルはシェリーを抱えて座っている。
「で?私は帰っていいと思いますが?」
「シェリー。ペンダントを取って見せてあがればいいと思うよ。」
カイルはシェリーのペンダントを取った姿を王太子に見せればいいと言っているのだ。そんな人様の家庭をぶち壊す事をシェリーにしろと言っていることに等しいのだ。
「嫌です。」
「シェリー。そいつの膝の上に座らずに私の膝の上に座ればいい。」
王太子がシェリーに向かって、苛ついた気持ちを押さえながら言う。
「それも嫌です。」
しかし、それにもシェリーは否定をする。
「佐々木さん。もう諦めたら?」
炎王が部屋にあるもう一つの円卓に座っている。その両隣には先程の青い白髪の少女と緑の白髪の女性が座っていた。この鬼の国には珍しい白髪の二人の女性だが、一人は別名火山の国と言われるこの国で唯一溶けない氷で覆われた山に住むという精霊だろう。
「諦める?炎王は諦めたと?」
「いや、俺を引き合いに出さないでくれ。」
「まぁまぁ。新しいお茶を入れましょう。」
そう言って、緑の白髪の女性が立ち上がり、お茶の用意を始めた。
「ヴィーネ。アフィーリアとオリビアを呼んできてくれ。」
「いいよ。」
青い白髪の少女は浮き上がり、窓から空に向かって飛んでいった。
「俺は見えないけど、佐々木さんは見えるんだよな。アフィーリアにはルークくんがいると。」
「私は認めません。」
「あ。うん。だから、オリビアのも見てあげたら全て解決だ。」
「炎王。全く解決してません。悪災再来ですよ。」
「くくく。その目を持っていても、それを言うのか?この世界でラースの魔眼に敵う者はいるのか?」
「白き神の力が及ぶところでは、ナディアの魔眼は意味をなさないです。」
「存じておりますよ。」
そう言って緑の白髪の女性がシェリーの前にお茶を置く。
「確か、カウサ神教国の教会であった婚姻式の皆殺しの被害者にラースの大公がいたとか、その姪が皆殺しの犯人と逃げたと言う噂を聞きましたね。」
この噂を耳にするほど、この女性は生きていたということだろうか。
「なんだ?それは駆け落ちか?」
「いいえ。花嫁と逃げたそうです。」
「うーん。意味がわからん。」
そんな話をしながら女性はお茶を配り終え、炎王の隣の席に再び戻る。
「お呼びと伺い、参りました。初代様。」
部屋の入り口から声がし、目線を向けると黒髪に赤目の凛とした雰囲気の鬼族の女性が立っていた。その横から青い白髪の少女がすり抜けて炎王の側に行き、再びアイスをもらっていた。食べ過ぎではないのだろうか。
「ああ、オリビア妃、来たか。リア姫はどうした?」
「料理をするのじゃと言って、水屋に籠もっております。」
「それは、昼食は当分後になるな。質問なんだがオリビア。もし、番の存在が分かればどうする?」
炎王のその言葉にオリビアと呼ばれた女性は炎王の前まで駆け寄り跪く。
「そ、それはもちろん番様の元に行きます。初代様と王后様のような存在に憧れております。」
「だそうだ。」
炎王がシェリーを見て言う。
「はぁ。名前をフルネームで教えてください。」
本当にこの世界の人達はツガイのことになると、何もかも捨ててツガイに向かって行くのは何とかならないのだろうか。
「その少女は?」
オリビアはシェリーを見ながら炎王に尋ねる。
「6代目の聖女のシェリーだ。今回、リリーナの病を治してもらうのに来てもらった。」
「「聖女!」」
王太子とオリビアの声が重なる。
「シェリーが聖女なんて凄いな。」
「光の巫女様でも治せなかった王后様の病をこの少女が?」
「名前。」
「オリビア・グラシアールと申します。」
そして、シェリーは彼女を視た。視たシェリーは亜空間収納の鞄から黒い刀を取り出し
「殺ろう。喚びだして斬ろう。この刀ならきっと傷一つぐらい付けられるはず!」
「落ち着いてシェリー。誰が視えたのかな?」
「ニールさんです。あのニールさんです。あり得ません!巫山戯てますよね。」
そう、シェリーの関わりのある人物がツガイとしてあてがわれたのだ。
「ニールか。」
そう言うカイルも遠い目をする。あの仕事の鬼のニールに鬼族のツガイがいれば少しは変わるのだろうか。
「ニール様と言う御方が私の番ですか?リオン様、離婚しましょう!アフィーリアも大きくなりましたから理解もしてくれる事でしょう。今から片付けをしてきますので、お帰りになる時は私も連れて行ってくださいませ。」
そう言って、オリビアは急いで部屋を出ていった。娘であるアフィーリアもツガイのことで頭がいっぱいなので理解はしてくれるだろうが、早急過ぎないだろうか。
____________
補足
水屋=台所
そして、シェリーの両隣にはグレイとスーウェンがおり、後ろにはオルクスが立っている。カイルはシェリーを抱えて座っている。
「で?私は帰っていいと思いますが?」
「シェリー。ペンダントを取って見せてあがればいいと思うよ。」
カイルはシェリーのペンダントを取った姿を王太子に見せればいいと言っているのだ。そんな人様の家庭をぶち壊す事をシェリーにしろと言っていることに等しいのだ。
「嫌です。」
「シェリー。そいつの膝の上に座らずに私の膝の上に座ればいい。」
王太子がシェリーに向かって、苛ついた気持ちを押さえながら言う。
「それも嫌です。」
しかし、それにもシェリーは否定をする。
「佐々木さん。もう諦めたら?」
炎王が部屋にあるもう一つの円卓に座っている。その両隣には先程の青い白髪の少女と緑の白髪の女性が座っていた。この鬼の国には珍しい白髪の二人の女性だが、一人は別名火山の国と言われるこの国で唯一溶けない氷で覆われた山に住むという精霊だろう。
「諦める?炎王は諦めたと?」
「いや、俺を引き合いに出さないでくれ。」
「まぁまぁ。新しいお茶を入れましょう。」
そう言って、緑の白髪の女性が立ち上がり、お茶の用意を始めた。
「ヴィーネ。アフィーリアとオリビアを呼んできてくれ。」
「いいよ。」
青い白髪の少女は浮き上がり、窓から空に向かって飛んでいった。
「俺は見えないけど、佐々木さんは見えるんだよな。アフィーリアにはルークくんがいると。」
「私は認めません。」
「あ。うん。だから、オリビアのも見てあげたら全て解決だ。」
「炎王。全く解決してません。悪災再来ですよ。」
「くくく。その目を持っていても、それを言うのか?この世界でラースの魔眼に敵う者はいるのか?」
「白き神の力が及ぶところでは、ナディアの魔眼は意味をなさないです。」
「存じておりますよ。」
そう言って緑の白髪の女性がシェリーの前にお茶を置く。
「確か、カウサ神教国の教会であった婚姻式の皆殺しの被害者にラースの大公がいたとか、その姪が皆殺しの犯人と逃げたと言う噂を聞きましたね。」
この噂を耳にするほど、この女性は生きていたということだろうか。
「なんだ?それは駆け落ちか?」
「いいえ。花嫁と逃げたそうです。」
「うーん。意味がわからん。」
そんな話をしながら女性はお茶を配り終え、炎王の隣の席に再び戻る。
「お呼びと伺い、参りました。初代様。」
部屋の入り口から声がし、目線を向けると黒髪に赤目の凛とした雰囲気の鬼族の女性が立っていた。その横から青い白髪の少女がすり抜けて炎王の側に行き、再びアイスをもらっていた。食べ過ぎではないのだろうか。
「ああ、オリビア妃、来たか。リア姫はどうした?」
「料理をするのじゃと言って、水屋に籠もっております。」
「それは、昼食は当分後になるな。質問なんだがオリビア。もし、番の存在が分かればどうする?」
炎王のその言葉にオリビアと呼ばれた女性は炎王の前まで駆け寄り跪く。
「そ、それはもちろん番様の元に行きます。初代様と王后様のような存在に憧れております。」
「だそうだ。」
炎王がシェリーを見て言う。
「はぁ。名前をフルネームで教えてください。」
本当にこの世界の人達はツガイのことになると、何もかも捨ててツガイに向かって行くのは何とかならないのだろうか。
「その少女は?」
オリビアはシェリーを見ながら炎王に尋ねる。
「6代目の聖女のシェリーだ。今回、リリーナの病を治してもらうのに来てもらった。」
「「聖女!」」
王太子とオリビアの声が重なる。
「シェリーが聖女なんて凄いな。」
「光の巫女様でも治せなかった王后様の病をこの少女が?」
「名前。」
「オリビア・グラシアールと申します。」
そして、シェリーは彼女を視た。視たシェリーは亜空間収納の鞄から黒い刀を取り出し
「殺ろう。喚びだして斬ろう。この刀ならきっと傷一つぐらい付けられるはず!」
「落ち着いてシェリー。誰が視えたのかな?」
「ニールさんです。あのニールさんです。あり得ません!巫山戯てますよね。」
そう、シェリーの関わりのある人物がツガイとしてあてがわれたのだ。
「ニールか。」
そう言うカイルも遠い目をする。あの仕事の鬼のニールに鬼族のツガイがいれば少しは変わるのだろうか。
「ニール様と言う御方が私の番ですか?リオン様、離婚しましょう!アフィーリアも大きくなりましたから理解もしてくれる事でしょう。今から片付けをしてきますので、お帰りになる時は私も連れて行ってくださいませ。」
そう言って、オリビアは急いで部屋を出ていった。娘であるアフィーリアもツガイのことで頭がいっぱいなので理解はしてくれるだろうが、早急過ぎないだろうか。
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補足
水屋=台所
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