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13章 死の国
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部屋全体にまばゆい光が満ち、契約の完了が示され、陣が割れるように形をなくしていった。それと同時に徐々に光が消えていく。そこにはただ一人、シェリーだけが立っており、他の全ての者達が床に伏したままだった。
未だに床に伏しているルナティーノにシェリーは近付いて行き、しゃがみ込む。
「あれは何ですか?あのような発言をされたために、あの存在に私が貴方を従えたと勘違いして去って行きましたよ。」
ルナティーノは体を起こし、立ち上がる。
「勘違いではない。我々は聖女に従うと言う契約だ。今度は間違わない。」
シェリーは頭を抱えたくなった。この国にきてから想定外のことばかりだ。モルテ王の存在する姿も予想外。契約にこの国で嫌われている白き神が降臨してくるもの予想外。
そして、極めつけが、一国の王がシェリーの言葉に従うという契約・・・それも一番重い神との契約でだ。
「はぁ。では契約通りツガイを贈ります。ブライさん・・・。」
シェリーは振り向きブライを見るが、未だに床に伏して震えている。使い物にならなさそうだ。仕方がなくシェリーが動こうとしたところで、カイルがシェリーを視線で制して、ブライの元へ向かって行く。
「ツガイの名はアイラ・クォードです。金髪青目の人族です。マリートゥヴァ様と同じ色を持っていますが、性格は全く違います。色々問題が生じるようでしたら、矯正してください。またの名を調教ともいいます。」
シェリーはルナティーノにアイラについて言っているが、人に対して言って良くない言葉が混じっている。
「なんだそれは?」
「彼女はツガイというものに囚われません。つまり、貴方をツガイとして認識できません。」
「は?そんなことがあり得るのか?」
「ええ。あの存在に選ばれ、喚ばれた者達にはそういう傾向にあるようです。ですから、ふらふらっとあっちこっち行くかと思いますので、その辺りはルナティーノ様におまかせします。」
「あっちこっち?」
「多分、直ぐにわかると思います。」
シェリーの後ろには大きな包を抱えたカイルが立っていた。その包をカイルが外し、黒い毛皮があらわになる。それをシェリーが受け取り、床に毛皮を広げると眠っているアイラが出てきた。
「コレが番?コレは番ではない。」
ルナティーノがアイラを見て否定をする。
「それは、ツガイと認識しないようにしています。ツガイと認識してしまうと、まともに話し合いが出来ませんので。」
そう言いながら、シェリーはアイラの手首に付けられた腕輪を外す。
その瞬間、ルナティーノの目の色が変わった。
「確かに番だ。こんなに近づいても番だと分からないなんて、この腕輪はなんだ?」
ルナティーノはシェリーから腕輪を奪い取り、握り潰す。
「そういう魔道具です。起こしますが、いいですか?」
「一々そんな事を確認を取らずに起こせばいい。」
シェリーは遠い目をしながら
「色々、こちら側も心の準備というものが必要ですので。」
シェリーのその言葉を聞いて、後ろの方で未だに床に座り込んだままのイリアとノートルが首を縦に振っている。
「『解除。』」
シェリーのその言葉と同時に眠りの魔術が解け、アイラの目が開く。
「ああ、なんかすっごく良く寝た。あれ?ここどこ?」
アイラは伸びをしながら辺りを見回す。アイラの言葉に答えようとルナティーノが言葉を放つ前にアイラは飛び起き
「エルフの方!」
と言ってアイラはスーウェンに向かって走り出してしまった。アイラに標的にされてしまったスーウェンは首を横に振り、こっちに来るなと言っている。
「やっと、お会いできましたぁ。」
と言っているアイラの背を見ながらルナティーノは呆然としている。
「これは・・・。」
「見てのとおりです。彼女は見た目のいい男性のところへ一直線に行く人種です。」
シェリーはアイラの事をそういう種族だと表現した。
「ククク。こういう事か。番を番として認識しないから、必要があれば調教していいと。」
ルナティーノはアイラの元へ歩いて行く。その顔は番を迎える顔ではなく、残忍性を帯びた顔つきになっていた。
ルナティーノはアイラを抱きかかえる。
「え?何?誰?この人怖いんだけど。」
アイラのその言葉を聞いたルナティーノは残忍性を帯びた笑顔になる。
「ヒィー!た、助けてください。エルフの方!」
助けを求められたスーウェンは首を横に振る。
「竜人の方。助けてください。貴方、強いのでしょ!」
アイラは次にカイルに助けを求めるが、カイルも首を横に振り「それはできないかな。」と言っている。
次々に別の人物に助けを求めるアイラに比例して、ルナティーノの闇が段々と濃くなっていき、影から怪しいモノが湧き出てき始めた。
「お前は今日からここで暮らすことになるのだ。」
「ひぃぃぃ。そんな事聞いていない!帰る。あたしは帰る!」
アイラはのけぞりながら、ルナティーノから距離を取ろうとするが、抱えられているのでそれも叶わない。ルナティーノは笑いながら、出口であろう玉座の右奥の扉に向かって歩き出す。
「契約だ。神との契約は守らなければならない。ハハハ。」
そう言って、叫ぶアイラと笑うルナティーノが扉の奥に消えて行った。
未だに床に伏しているルナティーノにシェリーは近付いて行き、しゃがみ込む。
「あれは何ですか?あのような発言をされたために、あの存在に私が貴方を従えたと勘違いして去って行きましたよ。」
ルナティーノは体を起こし、立ち上がる。
「勘違いではない。我々は聖女に従うと言う契約だ。今度は間違わない。」
シェリーは頭を抱えたくなった。この国にきてから想定外のことばかりだ。モルテ王の存在する姿も予想外。契約にこの国で嫌われている白き神が降臨してくるもの予想外。
そして、極めつけが、一国の王がシェリーの言葉に従うという契約・・・それも一番重い神との契約でだ。
「はぁ。では契約通りツガイを贈ります。ブライさん・・・。」
シェリーは振り向きブライを見るが、未だに床に伏して震えている。使い物にならなさそうだ。仕方がなくシェリーが動こうとしたところで、カイルがシェリーを視線で制して、ブライの元へ向かって行く。
「ツガイの名はアイラ・クォードです。金髪青目の人族です。マリートゥヴァ様と同じ色を持っていますが、性格は全く違います。色々問題が生じるようでしたら、矯正してください。またの名を調教ともいいます。」
シェリーはルナティーノにアイラについて言っているが、人に対して言って良くない言葉が混じっている。
「なんだそれは?」
「彼女はツガイというものに囚われません。つまり、貴方をツガイとして認識できません。」
「は?そんなことがあり得るのか?」
「ええ。あの存在に選ばれ、喚ばれた者達にはそういう傾向にあるようです。ですから、ふらふらっとあっちこっち行くかと思いますので、その辺りはルナティーノ様におまかせします。」
「あっちこっち?」
「多分、直ぐにわかると思います。」
シェリーの後ろには大きな包を抱えたカイルが立っていた。その包をカイルが外し、黒い毛皮があらわになる。それをシェリーが受け取り、床に毛皮を広げると眠っているアイラが出てきた。
「コレが番?コレは番ではない。」
ルナティーノがアイラを見て否定をする。
「それは、ツガイと認識しないようにしています。ツガイと認識してしまうと、まともに話し合いが出来ませんので。」
そう言いながら、シェリーはアイラの手首に付けられた腕輪を外す。
その瞬間、ルナティーノの目の色が変わった。
「確かに番だ。こんなに近づいても番だと分からないなんて、この腕輪はなんだ?」
ルナティーノはシェリーから腕輪を奪い取り、握り潰す。
「そういう魔道具です。起こしますが、いいですか?」
「一々そんな事を確認を取らずに起こせばいい。」
シェリーは遠い目をしながら
「色々、こちら側も心の準備というものが必要ですので。」
シェリーのその言葉を聞いて、後ろの方で未だに床に座り込んだままのイリアとノートルが首を縦に振っている。
「『解除。』」
シェリーのその言葉と同時に眠りの魔術が解け、アイラの目が開く。
「ああ、なんかすっごく良く寝た。あれ?ここどこ?」
アイラは伸びをしながら辺りを見回す。アイラの言葉に答えようとルナティーノが言葉を放つ前にアイラは飛び起き
「エルフの方!」
と言ってアイラはスーウェンに向かって走り出してしまった。アイラに標的にされてしまったスーウェンは首を横に振り、こっちに来るなと言っている。
「やっと、お会いできましたぁ。」
と言っているアイラの背を見ながらルナティーノは呆然としている。
「これは・・・。」
「見てのとおりです。彼女は見た目のいい男性のところへ一直線に行く人種です。」
シェリーはアイラの事をそういう種族だと表現した。
「ククク。こういう事か。番を番として認識しないから、必要があれば調教していいと。」
ルナティーノはアイラの元へ歩いて行く。その顔は番を迎える顔ではなく、残忍性を帯びた顔つきになっていた。
ルナティーノはアイラを抱きかかえる。
「え?何?誰?この人怖いんだけど。」
アイラのその言葉を聞いたルナティーノは残忍性を帯びた笑顔になる。
「ヒィー!た、助けてください。エルフの方!」
助けを求められたスーウェンは首を横に振る。
「竜人の方。助けてください。貴方、強いのでしょ!」
アイラは次にカイルに助けを求めるが、カイルも首を横に振り「それはできないかな。」と言っている。
次々に別の人物に助けを求めるアイラに比例して、ルナティーノの闇が段々と濃くなっていき、影から怪しいモノが湧き出てき始めた。
「お前は今日からここで暮らすことになるのだ。」
「ひぃぃぃ。そんな事聞いていない!帰る。あたしは帰る!」
アイラはのけぞりながら、ルナティーノから距離を取ろうとするが、抱えられているのでそれも叶わない。ルナティーノは笑いながら、出口であろう玉座の右奥の扉に向かって歩き出す。
「契約だ。神との契約は守らなければならない。ハハハ。」
そう言って、叫ぶアイラと笑うルナティーノが扉の奥に消えて行った。
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