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11章 アイラという少女の処遇

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 シェリーとシェリーのツガイである4人は第一層にある軍本部に来ていた。因みに西第一層門の門兵は今まで第6師団が賄っていたが、第6師団にはいたが元々第5師団にいた門兵が立っていた。やはり、子供の心の平穏を守ることは出来なかったようだ。

 軍本部の扉の前には、アンディウム第2師団長が立っていた。どうやら、シェリーを待っていたようで

「先日の私の怪我を治していただき、ありがとうございました。」

 と頭を下げて来た。焼けてしまった髪は元に戻らなかったために、白く流れ落ちていた髪は短く切られ、鳥人特有の羽が生えた耳が顕になっていた。

「いいえ。あれは事故でしたので、体に問題がなければそれでいいです。」

 直接的にはイーリスクロムの狐火に焼かれたモノだが、イーリスクロムもシェリーの魔眼の暴走の被害者であるため、責めることはできない。直接的に問題行動を起こしたエルフは今頃、神力の直撃を受け再起不能に至っていることだろう。

「ええ、問題はありません。では、会議室まで案内しましょう。」


 アンディウムに案内され通された部屋には、数人の軍人と国王陛下であるイーリスクロムが席に着いていた。
 メンバーをみるとどうやら師団長が集まって来ているらしい。シェリーの顔を見たヒューレクレト第5師団長が席を立とうとしていたが、隣にいたクスト第6師団長とブライ第4師団長に抑えつけられていた。

「来てもらって悪いね。」

 イーリスクロムの一つも悪いとは思っていない表情にイラッとくる。本日は軍服ではなく豪華なキラキラした服装で座っているので、余計にイラッとシェリーはしてしまっている。

「ちっ。用件だけさっさと言ってください。」

「シェリー・カークス。舌打ちを陛下の前でするな。」

 ファスシオン第9師団長がシェリーを注意するが

「第9師団長さん。村人失踪事件は解決しましたか?」

「ぐぅ。」

 シェリーの一言に撃沈した。

「そうだね。用件を言うとこの国から聖女を出したいのには、変わりはないんだよね。だから、君に「却下します。」」

 シェリーは最後まで言わせなかった。

「アイラという少女の処遇についてのみの発言でお願いします。」

「きびしー。」

 誰かの声が聞こえたがシェリーは無視をする。

「いや、だからね。聖女の「モルテ国にツガイの情報を売り渡してもいいのですよ。」」

 その言葉にイーリスクロムは黙ってしまった。

「ガハハハ。陛下。これは陛下の方が分が悪いですな。相手の方が引き出しが多すぎる。」

 声の先をたどると、初老のウサギ獣人であることから、統括師団長閣下と見受けられる。

「はぁ。アイラはモルテ国に送り出す事が決定した。明後日には出発する予定ではあるが、本人にはまだ何も報告はしていない。」

「それでいいです。あなたにしか出来ない事があるので、隣国に行くと説明をしてください。それから、この腕輪を彼女に付けてください。」

 そう言いながら、シェリーは近くに立っていたアンディウムに腕輪を渡す。

「これは?」

 とアンディウムが尋ねる。

「ツガイをツガイだと認識しなくなる魔道具です。魔導師オリバーが聖女を勇者から隠したモノを改良した物になります。それから、モルテ国にはわたしも同行しますので、モルテ王との交渉権もいただきたいです。」

「魔導具の件は有り難く貰っておくよ。同行する者達からの不安の声が大きくてどうしようかと思っていたんだ。でも、モルテ王との交渉権は流石に大き過ぎるよね。無理かな。」

 イーリスクロムの否定の言葉にシェリーは

「このことで、事は大きく動きます。マルス帝国は炎国まで手を伸ばしたことにより、炎王の逆鱗に触れました。そして、シャーレン精霊王国もこれから動き始めるでしょう。モルテを抑えられるかが肝になってきます。この国の外交者にそのモルテ王を納得させることのできる程の交渉はできますか?」

「前から思っていたけど、君の友好関係広いよね。はぁ。あのモルテ王を納得ね。まともに話すら出来なかったけど?君ならできると?」

「さぁ?ただ、啓示を受けましたから、モルテに行けと。」

 イーリスクロムは参ったと言わんばかりに両手を上に上げ

「それ以上は言わなくていいよ。あの御方に関わるとこっちの身が持たないからね。同行するのも、モルテ王に交渉するもの君の好きにするといい。」

「ありがとうごさいます。ついでと言ってなんですが」

 シェリーの言葉にイーリスクロムが身構える。

「何かな?」

「先日、陛下のお願い事を聞いた件ですが」

 そう言いつつ、シェリーはヒューレクレトを見る。

「わたしの希望を叶えてくれるというものでしたよね。」

「ああ、そのことか口出しをしたいことがあるとか。」

 イーリスクロムは内心ホッとしたような表情になる。しかし、その後のシェリーの発言に頭を抱えることになったのであった。
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