番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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7章 教会の聖女候補と世界の聖女

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 あれから5日が経ち何事もなく日々が過ぎていき、いつものように冒険者ギルドの特殊依頼受付のニールのカウンターにシェリーとカイルはいた。

「これ行ってきてくれないか。」

 渡された依頼書は、村人全員の謎の奇病の調査依頼だ。

「教会に頼んでください。冒険者家業ではありません。」

 確かにそうなのだ、人々の怪我や、病を治す光魔術を使える人物を保護という名目で独占をしているのが教会という組織なのである。

「治療云々ではなく最近、聖女様が見つかったようでな。」

「あ?」

 後ろにいたグレイからにごった声がでた。

「聖魔術が使えるそうだ。その聖女様。正確には候補だが、晴れ舞台にここが使えるか調査して欲しいそうだ。」

「す、素晴らしい。」

 表情筋がルークしか反応しないシェリーが満面の笑みで依頼書を手にとり見ていた。

「これはに頑張って貰わないといけないですよね。」

「お、おう。」

 ニールが完全に引いている。

「この依頼はCランクだから後ろの二人も受けることができるから行ってきてくれ。」

 グレイとスーウェンは1週間でDランクまであがっていたのだ。

「もちろんです。」

 シェリーは上機嫌で依頼書に特殊インクで拇印を押し、小腹を満たしに行くといって、ギルド常設の食堂に消えた。

「おい、シェリーはどうしたんだ?」

「さあ、ただ。」

「ただ?」

「聖女という人に頑張ってもらおうと思っているんじゃないかな。」

 とカイルが予想を立てると、後ろの二人も「ああ。」と納得しているようだ。

 三人も特殊インクで依頼受付をし、シェリーのいる食堂へ向かおうとしたとき、ギルドの出入り口の扉が吹っ飛んだ。

 扉を吹っ飛ばした人物は辺りを見渡し、食堂に向かおうとしたカイル達を見つけ、床を踏み抜く勢いで目の前まで来て

「なんで家に居ないんだ?俺のつ・・・」

 不法侵入者はいきなり横に吹っ飛んでいった。侵入者の代わりにいたのは、拳を振りきった格好のシェリーだった。

スキル
  『猫パンチ』
 脳筋猫専用のお仕置きスキル。『聖人の正拳』を番に対して封じられてしまったため、創り出された。
 番の襲撃で泣かれるなんて思わなかったんだよ。ごめんね。

「扉と壁の修復はそこの脳筋猫に請求お願いします。」

 シェリーはカウンターから出てきたニールに言った。

「ちょっと待て嬢ちゃん。この御仁なんだか見たことあるんだが本人か、確認してもいいか。」

「わたしは知れません。ギラン共和国のオルクス・ガナート傭兵団長に似ているかもしれませんが、気のせいでしょう。」

「思いっきり本人じゃねーか。ギラン共和国の軍服着ているし本人じゃないって言ったら誰なんだ?」

「さあ?」

「シェリーちゃん。ランチセットできたにゃ。」

 ミーニャの声に呼ばれてニールに背を向けるシェリー。

「おい、カイル。知り合いだよな?」

「名乗られた覚えがないからね。どこの誰かは知らないね。」

「金狼の兄ちゃん」

 指名されたグレイは横を向く。

「エル「知りません。」・・・。」

 スーウェンは被せてきた。

「ということでニール。請求はそこの豹獣人の人にお願いしてね。」


 シェリーはデザートのパフェを小会議室に運ばれ、向かい側に魔獣捕獲用の網で椅子と体を固定された脳筋猫が唸っている。シェリーの左右にはグレイとスーウェン。背中・・・カイルの膝の上に座らされたシェリー、お誕生日席にはニールがいた。

「わたしはパフェを食堂で食べたかったのですが?」

「ギラン共和国の傭兵団長と話が通じなくて困っているんだ。」 

「ニールさんの力不足をわたしに言われても困ります。」

「『俺の番はどこだ。』と言われ困っているんだ。」

「魔導師に頼んでフェクトス総統閣下の元に転送してもらってください。」

「あ、俺辞めてきたから」

 皆が一斉に脳筋猫に視線を向ける。

「傭兵辞めたから帰るところはギラン共和国じゃなくて、番のところだ。」

 ガン!
 シェリーは机に頭を打ち付けていた。

「「「シェリー!」」」

 驚く三人の声が聞こえるが、痛いので夢じゃないらしい。辞めてきた?辞めてきた!あの、フェクトス総統閣下がオルクス手離した?マルス帝国を警戒して傭兵団を作り上げた、あのフェクトス総統閣下が!

「よくフェクトス総統閣下が許しましたね。」

 シェリーは額を机に付けたまま尋ねる。

「ああ、色々言われれたが、あーなんだったか。あ、そうそう、『帝国潰してくるならいいよ』って言われたっけな。」

 言いそうだ、フェクトス総統閣下が言いそうな言葉だ。
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