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6章 王都メイルーン

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 ここ3日程は平和に過ごしていた。グレイとスーウェンはランクを上げる為にギルドに出入りをし、3日でEランクに上がっていた。依頼の内容を聞くと、それ絶対Cランクの依頼だよねというものが混じっている。多分ニールが一枚噛んでいるようだ。
 そして、シェリーはカイルと共にせっせとニールに言われた特殊依頼をこなしていた。魔物の活性化が徐々に進んでいるようだ。
 イアール山脈付近の魔物の凶暴化が顕著に出ているようで、先日とうとう、トーセイのギルドマスターキングコングがでしゃばってしまったらしく、山脈の山の1つが消滅したらしい。受付では我慢が出来なかったようだ。

 そして、グレイとスーウェンがランクが一つ上がったからお褒美が欲しいといって、今日は家のリビングでくつろいでいる。
 グレイとスーウェンが横で話をしているが、シェリーは上の空だ。

「シェリー。何か気になることがあるのか。」

 グレイはシェリーが心配になって声をかけるが当のシェリーは頭を抱えこんでしまった。
 カイルがシェリーの前に膝をついて問いかける。

「何がシェリーを困らせているの?」



 その事にシェリーが気がついたのはルークの騎士養成学園からの帰りである。
 常にシェリーのツガイの位置を把握するためマップ上にピンを立てていたのだが、一つのピンが一瞬消え、ラースの公都グリードに現れたのだ。嫌な予感はしたもののの人物はそれなりの立場にあるため、グリードを訪ねてもおかしくはないのだ。
 翌日、見るとそのまま南下を始めた。そのままいくとイアール山脈にぶつかってしまう。この魔物の活性化が活発になりはじめた山脈に突っ込むのは無謀というものだ。しかし、2日かけて山脈を通過しそのまま南下し本日王都メイルーンに入って来てしまった。速度が異常に速すぎる。
 なぜ、バレた。ギラン共和国に行ったのは・・・。確かに、行った。本来の姿のまま行ってしまった。しかし、彼の人物は首都に詰めることが多く、ほとんど首都を出ることはない。
 だが、あのときシェリーは彼の人物の位置を確認していたかといえばしていない。それは、あのときとても怒っていたからだ。そこまで気が回る余裕がなかったのだ。

 そして、勢いよく玄関の扉を叩く音が聞こえた。最悪だ。いくらなんでも早すぎる。番が4人も耐えられない。

「ご主人様、誰か訪ねてこられましたが?出ましょうか?」

 シェリーを心配してスーウェンが代わりの応対を受けようかと言うが

「4人目が来ました。」
 
 シェリーの言葉に三人が一斉に立ち上がる。

「取り敢えず追い返します。」

 そう言いながら、シェリーは青いペンダントを首から掛け、前のように壊されない様、服の中に隠す。

「一緒に行こう。」

 カイルが申し出るが

「多分来ると余計にややこしくなるので来ないでください。」

 シェリーは三人に背を向けリビングを後にした。


 玄関の扉は今にも壊れそうな程叩かれている。外にいる人物は扉を壊す気ではないだろうか。しかし、結界に阻まれているためその拳が扉を突き抜けることはない。
 シェリーは扉を開けずに声を掛ける。

「どちら様でしょうか。」

 扉の叩く音は止み、地を這うような声が響く

「俺の番を出せ。」

 本当にこの世界の者達はツガイツガイとうるさい。

「オレのツガイと言う人物はおりません。お帰りください。」

 ドンと扉が叩かれ

「黒髪の女がいるはずだ!出せ。」

「それはカラス鳥人ですか?黒犬獣人ですか?蝙蝠コウモリ人ですか?残念ながら特種な黒を持つ獣人の方はいらっしゃいません。」

「違う!人族だ。いい加減に早く出せ。」

「それは本当に人族ですか?黒を持つ人族がいると言うのですか。」

「・・・・。」

 扉の向こう側の人物からの返事はない。考えてみればおかしな事だと、思い始めたのだろう。

「本当に黒を持つ人族の女性だと確認したのですか?」

「いや。」

「では、お帰りください。このように突然扉を壊す勢いで来られましても対応に苦慮しますので、その女性を確認の上、その女性を訪ねに行って下さい。」

「ああ。」

 扉の向こう側の人物が離れて行く足音が聞こえてきた。シェリーはうまく行ったと安堵のため息をつく。
 背中からいきなり抱き締められた、上をみれば、とても辛そうな顔をしたグレイだった。

「そんな風に言わなくても。」

「何がですか?」

「シェリー自身の事をそんな風に言ってはダメだよ。」

 横を見ると同じような顔をした。カイルがいた。

「ご主人様。」

 スーウェンも同じように側にいた。どうやら3人とも心配で見に出てきてしまったようだ。

「本当のことですから。」

 しんみりした空気をぶち壊すかのように地響きが聞こえ

「シェリーっていう黒髪の人族がいるはずだ。オーウィルディア殿に確認したぞ。」

 という声と共に彼の人物が扉を蹴破り結界ごと破壊し、中に侵入してきた。
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