75 / 796
6章 王都メイルーン
68
しおりを挟む
ここ3日程は平和に過ごしていた。グレイとスーウェンはランクを上げる為にギルドに出入りをし、3日でEランクに上がっていた。依頼の内容を聞くと、それ絶対Cランクの依頼だよねというものが混じっている。多分ニールが一枚噛んでいるようだ。
そして、シェリーはカイルと共にせっせとニールに言われた特殊依頼をこなしていた。魔物の活性化が徐々に進んでいるようだ。
イアール山脈付近の魔物の凶暴化が顕著に出ているようで、先日とうとう、トーセイのギルドマスターがでしゃばってしまったらしく、山脈の山の1つが消滅したらしい。受付では我慢が出来なかったようだ。
そして、グレイとスーウェンがランクが一つ上がったからお褒美が欲しいといって、今日は家のリビングでくつろいでいる。
グレイとスーウェンが横で話をしているが、シェリーは上の空だ。
「シェリー。何か気になることがあるのか。」
グレイはシェリーが心配になって声をかけるが当のシェリーは頭を抱えこんでしまった。
カイルがシェリーの前に膝をついて問いかける。
「何がシェリーを困らせているの?」
その事にシェリーが気がついたのはルークの騎士養成学園からの帰りである。
常にシェリーのツガイの位置を把握するためマップ上にピンを立てていたのだが、一つのピンが一瞬消え、ラースの公都グリードに現れたのだ。嫌な予感はしたものの彼の人物はそれなりの立場にあるため、グリードを訪ねてもおかしくはないのだ。
翌日、見るとそのまま南下を始めた。そのままいくとイアール山脈にぶつかってしまう。この魔物の活性化が活発になりはじめた山脈に突っ込むのは無謀というものだ。しかし、2日かけて山脈を通過しそのまま南下し本日王都メイルーンに入って来てしまった。速度が異常に速すぎる。
なぜ、バレた。ギラン共和国に行ったのは・・・。確かに、行った。本来の姿のまま行ってしまった。しかし、彼の人物は首都に詰めることが多く、ほとんど首都を出ることはない。
だが、あのときシェリーは彼の人物の位置を確認していたかといえばしていない。それは、あのときとても怒っていたからだ。そこまで気が回る余裕がなかったのだ。
そして、勢いよく玄関の扉を叩く音が聞こえた。最悪だ。いくらなんでも早すぎる。番が4人も耐えられない。
「ご主人様、誰か訪ねてこられましたが?出ましょうか?」
シェリーを心配してスーウェンが代わりの応対を受けようかと言うが
「4人目が来ました。」
シェリーの言葉に三人が一斉に立ち上がる。
「取り敢えず追い返します。」
そう言いながら、シェリーは青いペンダントを首から掛け、前のように壊されない様、服の中に隠す。
「一緒に行こう。」
カイルが申し出るが
「多分来ると余計にややこしくなるので来ないでください。」
シェリーは三人に背を向けリビングを後にした。
玄関の扉は今にも壊れそうな程叩かれている。外にいる人物は扉を壊す気ではないだろうか。しかし、結界に阻まれているためその拳が扉を突き抜けることはない。
シェリーは扉を開けずに声を掛ける。
「どちら様でしょうか。」
扉の叩く音は止み、地を這うような声が響く
「俺の番を出せ。」
本当にこの世界の者達はツガイツガイとうるさい。
「オレのツガイと言う人物はおりません。お帰りください。」
ドンと扉が叩かれ
「黒髪の女がいるはずだ!出せ。」
「それは烏鳥人ですか?黒犬獣人ですか?蝙蝠人ですか?残念ながら特種な黒を持つ獣人の方はいらっしゃいません。」
「違う!人族だ。いい加減に早く出せ。」
「それは本当に人族ですか?黒を持つ人族がいると言うのですか。」
「・・・・。」
扉の向こう側の人物からの返事はない。考えてみればおかしな事だと、思い始めたのだろう。
「本当に黒を持つ人族の女性だと確認したのですか?」
「いや。」
「では、お帰りください。このように突然扉を壊す勢いで来られましても対応に苦慮しますので、その女性を確認の上、その女性を訪ねに行って下さい。」
「ああ。」
扉の向こう側の人物が離れて行く足音が聞こえてきた。シェリーはうまく行ったと安堵のため息をつく。
背中からいきなり抱き締められた、上をみれば、とても辛そうな顔をしたグレイだった。
「そんな風に言わなくても。」
「何がですか?」
「シェリー自身の事をそんな風に言ってはダメだよ。」
横を見ると同じような顔をした。カイルがいた。
「ご主人様。」
スーウェンも同じように側にいた。どうやら3人とも心配で見に出てきてしまったようだ。
「本当のことですから。」
しんみりした空気をぶち壊すかのように地響きが聞こえ
「シェリーっていう黒髪の人族がいるはずだ。オーウィルディア殿に確認したぞ。」
という声と共に彼の人物が扉を蹴破り結界ごと破壊し、中に侵入してきた。
そして、シェリーはカイルと共にせっせとニールに言われた特殊依頼をこなしていた。魔物の活性化が徐々に進んでいるようだ。
イアール山脈付近の魔物の凶暴化が顕著に出ているようで、先日とうとう、トーセイのギルドマスターがでしゃばってしまったらしく、山脈の山の1つが消滅したらしい。受付では我慢が出来なかったようだ。
そして、グレイとスーウェンがランクが一つ上がったからお褒美が欲しいといって、今日は家のリビングでくつろいでいる。
グレイとスーウェンが横で話をしているが、シェリーは上の空だ。
「シェリー。何か気になることがあるのか。」
グレイはシェリーが心配になって声をかけるが当のシェリーは頭を抱えこんでしまった。
カイルがシェリーの前に膝をついて問いかける。
「何がシェリーを困らせているの?」
その事にシェリーが気がついたのはルークの騎士養成学園からの帰りである。
常にシェリーのツガイの位置を把握するためマップ上にピンを立てていたのだが、一つのピンが一瞬消え、ラースの公都グリードに現れたのだ。嫌な予感はしたものの彼の人物はそれなりの立場にあるため、グリードを訪ねてもおかしくはないのだ。
翌日、見るとそのまま南下を始めた。そのままいくとイアール山脈にぶつかってしまう。この魔物の活性化が活発になりはじめた山脈に突っ込むのは無謀というものだ。しかし、2日かけて山脈を通過しそのまま南下し本日王都メイルーンに入って来てしまった。速度が異常に速すぎる。
なぜ、バレた。ギラン共和国に行ったのは・・・。確かに、行った。本来の姿のまま行ってしまった。しかし、彼の人物は首都に詰めることが多く、ほとんど首都を出ることはない。
だが、あのときシェリーは彼の人物の位置を確認していたかといえばしていない。それは、あのときとても怒っていたからだ。そこまで気が回る余裕がなかったのだ。
そして、勢いよく玄関の扉を叩く音が聞こえた。最悪だ。いくらなんでも早すぎる。番が4人も耐えられない。
「ご主人様、誰か訪ねてこられましたが?出ましょうか?」
シェリーを心配してスーウェンが代わりの応対を受けようかと言うが
「4人目が来ました。」
シェリーの言葉に三人が一斉に立ち上がる。
「取り敢えず追い返します。」
そう言いながら、シェリーは青いペンダントを首から掛け、前のように壊されない様、服の中に隠す。
「一緒に行こう。」
カイルが申し出るが
「多分来ると余計にややこしくなるので来ないでください。」
シェリーは三人に背を向けリビングを後にした。
玄関の扉は今にも壊れそうな程叩かれている。外にいる人物は扉を壊す気ではないだろうか。しかし、結界に阻まれているためその拳が扉を突き抜けることはない。
シェリーは扉を開けずに声を掛ける。
「どちら様でしょうか。」
扉の叩く音は止み、地を這うような声が響く
「俺の番を出せ。」
本当にこの世界の者達はツガイツガイとうるさい。
「オレのツガイと言う人物はおりません。お帰りください。」
ドンと扉が叩かれ
「黒髪の女がいるはずだ!出せ。」
「それは烏鳥人ですか?黒犬獣人ですか?蝙蝠人ですか?残念ながら特種な黒を持つ獣人の方はいらっしゃいません。」
「違う!人族だ。いい加減に早く出せ。」
「それは本当に人族ですか?黒を持つ人族がいると言うのですか。」
「・・・・。」
扉の向こう側の人物からの返事はない。考えてみればおかしな事だと、思い始めたのだろう。
「本当に黒を持つ人族の女性だと確認したのですか?」
「いや。」
「では、お帰りください。このように突然扉を壊す勢いで来られましても対応に苦慮しますので、その女性を確認の上、その女性を訪ねに行って下さい。」
「ああ。」
扉の向こう側の人物が離れて行く足音が聞こえてきた。シェリーはうまく行ったと安堵のため息をつく。
背中からいきなり抱き締められた、上をみれば、とても辛そうな顔をしたグレイだった。
「そんな風に言わなくても。」
「何がですか?」
「シェリー自身の事をそんな風に言ってはダメだよ。」
横を見ると同じような顔をした。カイルがいた。
「ご主人様。」
スーウェンも同じように側にいた。どうやら3人とも心配で見に出てきてしまったようだ。
「本当のことですから。」
しんみりした空気をぶち壊すかのように地響きが聞こえ
「シェリーっていう黒髪の人族がいるはずだ。オーウィルディア殿に確認したぞ。」
という声と共に彼の人物が扉を蹴破り結界ごと破壊し、中に侵入してきた。
11
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる