74 / 796
6章 王都メイルーン
67
しおりを挟む
校舎を出ると、ここの学生だろう少年達が敷地内を行き来している姿が見受けられた。シェリーはルークに会いたかったが、姉が顔を出すと迷惑になるかもしれいと思いグッと我慢をする。
そもそも何しに来たのかと問われてしまえば、正直に学園から出ていけと言われたなどと口が裂けても言えないことだった。
シェリーはカイルと共に来た道を戻っていく。
しかし、突然後ろから
「姉さんどうしたの!学園にいるなんて。」
シェリーを見つけて走って来たのか、肩で息をしている学生服姿のルークが後ろにいた。
「ルーちゃん、元気だった?お姉ちゃんすーっごく心配してたのよ。」
シェリーは後ろを振り向き満面の笑みでルークに近づく。
「カイルさんまで何かあったの?」
不安な表情を見せるルークに対してシェリーは笑顔のまま、ルークの頬に手を添え
「ルーちゃんがお世話になっているからね、寄付しに来たのよ。」
その言葉に何か気づいたルークは顔をうつ向け
「ごめん。僕のせいだよね。」
「ルーちゃん何も悪いことしてないでしょ?」
「でも。」
「学園に入る前にお姉ちゃん言ったよね。最小年齢で入学したら、何か言われるかもしれない。騎士の剣が使えていることに何か言われるかもしれない。魔導師として術式が使えることに何か言われるかもしれない。
でもこれはルーちゃんが努力した結果の証だから堂々としていなさいって、ルーちゃんはやりたい事をやればいいのよ。お姉ちゃんはそれを全力で応援するだけ。」
「うん。」
「今回の寄付も端金だからいいのよ。」
大量の高純度の魔石は端金とは表現しない。しかし、シェリーにとっては推しメンに課金する感じなのだろう。
「ありがとう、姉さん。」
そう笑顔で、ルークに言われるだけで、シェリーはデレデレである。
しかし、そこに割り入る声があった。
「おい、パシリ何勝手に走って行ってるのだ!」
声の方を見るとルークよりも年上の学生服を着た少年が立っていた。学生服には学年ごとにラインの色が違うが少年の学年を表す色はルークと同じ青色で今年入学した学生と思われた。しかし、シェリーは先程耳に入った言葉が気になった。パシリ・・・。
「わたしのルーちゃんをパシリに使うあんたは何様?」
シェリーが笑顔で少年に近づく。ルークは少年の危険を察知し、シェリーを止めようとするが
「姉さんちょっと待って。」
「ルーちゃん、お姉ちゃんはすこおしおはなしするだけだよー。」
シェリーの目が完全にイっていた。
「姉?全然似ていないブスだな。」
その言葉にルークとカイルが殺意を向ける。
「ひぃっ。」
腰を抜かしそうになる少年の胸ぐらをシェリーは掴み自分の目線に合わせる。
「で、どこのどなた様?」
「テュランティーノ・シーラン。だ、第一王子だ。」
「はん。第一王子様がわたしのルーちゃんをなぜパシリに使っているのですかね。」
シーラン王国の第一王子テュランティーノ・シーラン16歳。シーラン王国の王族の象徴でもある金髪碧眼の狐獣人だ。
はっきり言えば見た瞬間、狐獣人の金髪碧眼と言えばこの国の王族だとわかることなのだ。別のシェリーが王族の特徴を知らなかったわけではない。
ルークのためなら貴族だろうが王族だろうが喧嘩を売るのがシェリーである。
「第一王子である俺にこんなことをして、ただで済むと思うなよ。」
「第一王子の代わりなんて、いくらでもいるのですよお。第二王子だって、第三王子だっているのですから、16歳にもなって何も成していない、親の脛を齧っている王子なんて、いなくてもいいのではないのですかね。」
シェリーは王子の目を除き込むようにして心を抉る言葉を発する。騎士養成学園は13歳から入学資格が得られるのに彼は16歳だ。ということは3回落ちたことになる。
「うわ━━━━何やってんですか。」
シェリーと第一王子の間に一陣の風が駆け抜ける。シェリーの手から第一王子の姿が消え、新たに現れた男の脇に抱えられていた。
「ブライさんじゃないですか。よく、変わったところで会いますよね。」
その男は先程、学園長の前にいた。第4師団長のブライであった。
「俺は会いたくないがこれも仕事なんだ。」
「お疲れさまです。それで、そのクソ狐を渡してくださいませんか。」
「渡したら、大変なことになるだろ。おい、『銀爪のカイル』そこのラースの嬢ちゃんを止めてくれ。」
「ん?俺はシェリーの考えに賛成するよ。」
「ええ!ラースの嬢ちゃん、この件は俺に預けてもらえないだろうか。」
「え?それもう8回目ですよ。」
シェリーがどれだけ問題行動を起こしたか、わかる数だ。
「この前のウザうさぎもそうでしたよね。」
「おう。いやでもな、これでも第一王子なんだよ。」
これでも・・・。その言葉を聞いたテュランティーノ・シーランは項垂れる。
「はぁ。わかりました。必ずそっちで締めてください。」
「了解。」
そう言ってブライは消えた。
「王子勘弁してください。なんで、ラースに喧嘩を売るんですか。陛下からも忠告されていましたよね。ラースには手を出してはいけないと。」
「なに言っているんだ。ルークの氏はカークスだぞ。」
「王子もしかしてラースの目の事を知らないのですか。」
「なんだ?それは。」
「はぁ。そんなんだからラースの嬢ちゃんに、代わりはいるって言われてしまうのですよ。」
ブライはそう言って、第一王子にトドメを刺した。
そもそも何しに来たのかと問われてしまえば、正直に学園から出ていけと言われたなどと口が裂けても言えないことだった。
シェリーはカイルと共に来た道を戻っていく。
しかし、突然後ろから
「姉さんどうしたの!学園にいるなんて。」
シェリーを見つけて走って来たのか、肩で息をしている学生服姿のルークが後ろにいた。
「ルーちゃん、元気だった?お姉ちゃんすーっごく心配してたのよ。」
シェリーは後ろを振り向き満面の笑みでルークに近づく。
「カイルさんまで何かあったの?」
不安な表情を見せるルークに対してシェリーは笑顔のまま、ルークの頬に手を添え
「ルーちゃんがお世話になっているからね、寄付しに来たのよ。」
その言葉に何か気づいたルークは顔をうつ向け
「ごめん。僕のせいだよね。」
「ルーちゃん何も悪いことしてないでしょ?」
「でも。」
「学園に入る前にお姉ちゃん言ったよね。最小年齢で入学したら、何か言われるかもしれない。騎士の剣が使えていることに何か言われるかもしれない。魔導師として術式が使えることに何か言われるかもしれない。
でもこれはルーちゃんが努力した結果の証だから堂々としていなさいって、ルーちゃんはやりたい事をやればいいのよ。お姉ちゃんはそれを全力で応援するだけ。」
「うん。」
「今回の寄付も端金だからいいのよ。」
大量の高純度の魔石は端金とは表現しない。しかし、シェリーにとっては推しメンに課金する感じなのだろう。
「ありがとう、姉さん。」
そう笑顔で、ルークに言われるだけで、シェリーはデレデレである。
しかし、そこに割り入る声があった。
「おい、パシリ何勝手に走って行ってるのだ!」
声の方を見るとルークよりも年上の学生服を着た少年が立っていた。学生服には学年ごとにラインの色が違うが少年の学年を表す色はルークと同じ青色で今年入学した学生と思われた。しかし、シェリーは先程耳に入った言葉が気になった。パシリ・・・。
「わたしのルーちゃんをパシリに使うあんたは何様?」
シェリーが笑顔で少年に近づく。ルークは少年の危険を察知し、シェリーを止めようとするが
「姉さんちょっと待って。」
「ルーちゃん、お姉ちゃんはすこおしおはなしするだけだよー。」
シェリーの目が完全にイっていた。
「姉?全然似ていないブスだな。」
その言葉にルークとカイルが殺意を向ける。
「ひぃっ。」
腰を抜かしそうになる少年の胸ぐらをシェリーは掴み自分の目線に合わせる。
「で、どこのどなた様?」
「テュランティーノ・シーラン。だ、第一王子だ。」
「はん。第一王子様がわたしのルーちゃんをなぜパシリに使っているのですかね。」
シーラン王国の第一王子テュランティーノ・シーラン16歳。シーラン王国の王族の象徴でもある金髪碧眼の狐獣人だ。
はっきり言えば見た瞬間、狐獣人の金髪碧眼と言えばこの国の王族だとわかることなのだ。別のシェリーが王族の特徴を知らなかったわけではない。
ルークのためなら貴族だろうが王族だろうが喧嘩を売るのがシェリーである。
「第一王子である俺にこんなことをして、ただで済むと思うなよ。」
「第一王子の代わりなんて、いくらでもいるのですよお。第二王子だって、第三王子だっているのですから、16歳にもなって何も成していない、親の脛を齧っている王子なんて、いなくてもいいのではないのですかね。」
シェリーは王子の目を除き込むようにして心を抉る言葉を発する。騎士養成学園は13歳から入学資格が得られるのに彼は16歳だ。ということは3回落ちたことになる。
「うわ━━━━何やってんですか。」
シェリーと第一王子の間に一陣の風が駆け抜ける。シェリーの手から第一王子の姿が消え、新たに現れた男の脇に抱えられていた。
「ブライさんじゃないですか。よく、変わったところで会いますよね。」
その男は先程、学園長の前にいた。第4師団長のブライであった。
「俺は会いたくないがこれも仕事なんだ。」
「お疲れさまです。それで、そのクソ狐を渡してくださいませんか。」
「渡したら、大変なことになるだろ。おい、『銀爪のカイル』そこのラースの嬢ちゃんを止めてくれ。」
「ん?俺はシェリーの考えに賛成するよ。」
「ええ!ラースの嬢ちゃん、この件は俺に預けてもらえないだろうか。」
「え?それもう8回目ですよ。」
シェリーがどれだけ問題行動を起こしたか、わかる数だ。
「この前のウザうさぎもそうでしたよね。」
「おう。いやでもな、これでも第一王子なんだよ。」
これでも・・・。その言葉を聞いたテュランティーノ・シーランは項垂れる。
「はぁ。わかりました。必ずそっちで締めてください。」
「了解。」
そう言ってブライは消えた。
「王子勘弁してください。なんで、ラースに喧嘩を売るんですか。陛下からも忠告されていましたよね。ラースには手を出してはいけないと。」
「なに言っているんだ。ルークの氏はカークスだぞ。」
「王子もしかしてラースの目の事を知らないのですか。」
「なんだ?それは。」
「はぁ。そんなんだからラースの嬢ちゃんに、代わりはいるって言われてしまうのですよ。」
ブライはそう言って、第一王子にトドメを刺した。
11
お気に入りに追加
1,023
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる