73 / 716
6章 王都メイルーン
66
しおりを挟む
煤けた金髪を編み込みでまとめ上げたシェリーが訪問用のかっちりとしたシンプルなドレスに着替え、玄関に降りていくと待っていたのはいつもと違い軍服に近い感じの洋装で、髪をオールバックで後一つにまとめたカイルだった。イケメンは何を着ても似合う。
てっきりグレイがゴリ押しで付いて来るかと思っていたら、当のグレイはスーウェンと共に項垂れていた。
「イルが付いて来るのですか。」
「グレイとスーウェンは冒険者としてのランクを上げておいてもらわないと、一緒の依頼を受けられないからね。FランクとBランクじゃ絶対に無理だからね。」
確かにその通りだ。今日、登録したばかりの二人はFランクだし、依頼を受けられるのはEランクまでだ。
「直ぐにBランクになってやるからな。」
「次は私が付いて行きますからね。」
二人の恨めしそうな声を背にシェリーは玄関を出ていった。
今日の西第二層の門兵はいつも通りの黒狼獣人のクストに戻っていた。
「おう、こんな時間からお出掛けか。」
いつもと違い、かっちりとした洋装の二人を疑問に思いクストが声を掛けてきた。
「ルーちゃんの騎士養成学園から呼び出しがあったから、行ってきます。」
「何!学園を破壊する気か!」
「クストさん大袈裟ですね。破壊なんてしませんよ。事と次第によっては。ふふふ。行ってきす。」
シェリーはそう言って西教会前から魔道列車に乗るために門を潜っていった。後ろから
「俺は第4師団に行って来るから後は頼んだぞ。」
という、クストの声が響いていた。
シェリーは魔道列車に乗って騎士養成学園前で降りた時刻が、約束の時間8刻の8半刻前にたどり着いた。本当にギリギリだった。
そして、学園の入り口に詰めている警備員に事を説明し中に入れて貰い、指定された校舎を目指す。
騎士養成学園の隣には、魔術学園がありこの北地区の4分の1を二つの学園が占めているので敷地はそこそこ広い。
指定された校舎へたどり着き、受け付けを済ませ、思ったより豪華な部屋に通された。多分、貴族と対面するときに使用する部屋のようだ。
少し待つと、一人の人物が入って来た。シェリーは立ち上がり挨拶をする。
「初めまして、ルーク・カークスの姉になりますシェリー・カークスです。この度はどの様なご用件でしょうか。」
「初めまして、私はここの学園長をしております。カルロス・グアトールと申します。」
挨拶をしてきたのはこの騎士養成学園の学園長を勤める人物だった。その人物は銀髪赤目で筋肉が服を着ている感じの40歳ぐらいの人物だった。ただ、彼の頭の上にはウサギの耳が付いていた。
グアトールといえばこのシーラン王国の統括師団長で有名な筋肉ウサギの一族だ。もう、ウサギ獣人ではないとまで言われている。
その一族の出である学園長自ら、シェリーと対面しているのだ。
「この度はわざわざ来ていただいてありがとうごさいます。実はですね。ルーク君は魔力が相当高いですよね。なので、魔術学園の方に転入をお薦めしたいと思っているのです。」
「魔力が高いと何の問題があるのです。はっきり言ってもらえますか。」
「ここは騎士養成学園なので、高魔力に対応した施設がないのです。しかし、魔術学園の方なら高魔力に対応ができるのです。」
「そうですか。自分達では力不足で対応できないから、他の所に回したいと言っているのですか。」
「いいえ。ですから、魔術学園の方がルーク君の為になると思いますのでお薦めしたいのです。」
「なぜ、貴方が弟の将来を勝手に決めているのですか、弟の将来ぐらい弟が決めることです。具体的にはなんですか。金の要求ですか。」
シェリーは手に持っていた小さな鞄に手を入れる。その姿を見たカルロスに緊張が走った。
シェリーが取り出したのは、手の平に乗るほどの巾着だった。その口を開き逆さに向ける。
ガラガラガラ。
っと音を立てながら出てきたのは、高純度の魔石だった。それが、ローテーブル一杯にこぼれ出る。
「これで足りるかしら?」
「は。え?」
あまりにも大量の高純度の魔石が小さな巾着から出てきたことにカルロスの思考は停止してしまった。
「これだけあれば、弟が壊した施設の修復と高魔力に対応した改修ができますよね。やれますよね。」
これはもう、魔石を提供するから改修工事をしろという命令に近かった。
「わかりました。高魔力に対応した施設にさせていただきます。」
カルロスは折れるしかなかった。
シェリーはその言葉を聞いて満足して、部屋を出ていった。
カルロスはソファーにズリ込むように背中を預け、天井を仰ぎ見る。
「噂以上だった。」
「いやいや、よかったじゃないか。学園が木っ端微塵にならなくって。」
カルロスは誰もいないはずの室内から声が聞こえ慌てて体を起こし回りを見渡す。すると、先程シェリーが座っていた所に一人の男性が座っていた。
「ブライか。わざわざ第4師団長様が来たのか。」
「クストのヤツがさ慌ててやって来て、緊急警報発令ラースが動いたって言うからさ、今度は何があったのかとヒヤヒヤしたぜ。しかし、姉も姉なら弟も弟なのか。ここの施設を壊すのも相当だぞ?」
「ああ、規格外というやつだ。この国にいるうちはいいが他国に行ったら脅威にしかならん。」
「しかし、『銀爪のカイル』なんで一緒にいたのか不思議だ。」
てっきりグレイがゴリ押しで付いて来るかと思っていたら、当のグレイはスーウェンと共に項垂れていた。
「イルが付いて来るのですか。」
「グレイとスーウェンは冒険者としてのランクを上げておいてもらわないと、一緒の依頼を受けられないからね。FランクとBランクじゃ絶対に無理だからね。」
確かにその通りだ。今日、登録したばかりの二人はFランクだし、依頼を受けられるのはEランクまでだ。
「直ぐにBランクになってやるからな。」
「次は私が付いて行きますからね。」
二人の恨めしそうな声を背にシェリーは玄関を出ていった。
今日の西第二層の門兵はいつも通りの黒狼獣人のクストに戻っていた。
「おう、こんな時間からお出掛けか。」
いつもと違い、かっちりとした洋装の二人を疑問に思いクストが声を掛けてきた。
「ルーちゃんの騎士養成学園から呼び出しがあったから、行ってきます。」
「何!学園を破壊する気か!」
「クストさん大袈裟ですね。破壊なんてしませんよ。事と次第によっては。ふふふ。行ってきす。」
シェリーはそう言って西教会前から魔道列車に乗るために門を潜っていった。後ろから
「俺は第4師団に行って来るから後は頼んだぞ。」
という、クストの声が響いていた。
シェリーは魔道列車に乗って騎士養成学園前で降りた時刻が、約束の時間8刻の8半刻前にたどり着いた。本当にギリギリだった。
そして、学園の入り口に詰めている警備員に事を説明し中に入れて貰い、指定された校舎を目指す。
騎士養成学園の隣には、魔術学園がありこの北地区の4分の1を二つの学園が占めているので敷地はそこそこ広い。
指定された校舎へたどり着き、受け付けを済ませ、思ったより豪華な部屋に通された。多分、貴族と対面するときに使用する部屋のようだ。
少し待つと、一人の人物が入って来た。シェリーは立ち上がり挨拶をする。
「初めまして、ルーク・カークスの姉になりますシェリー・カークスです。この度はどの様なご用件でしょうか。」
「初めまして、私はここの学園長をしております。カルロス・グアトールと申します。」
挨拶をしてきたのはこの騎士養成学園の学園長を勤める人物だった。その人物は銀髪赤目で筋肉が服を着ている感じの40歳ぐらいの人物だった。ただ、彼の頭の上にはウサギの耳が付いていた。
グアトールといえばこのシーラン王国の統括師団長で有名な筋肉ウサギの一族だ。もう、ウサギ獣人ではないとまで言われている。
その一族の出である学園長自ら、シェリーと対面しているのだ。
「この度はわざわざ来ていただいてありがとうごさいます。実はですね。ルーク君は魔力が相当高いですよね。なので、魔術学園の方に転入をお薦めしたいと思っているのです。」
「魔力が高いと何の問題があるのです。はっきり言ってもらえますか。」
「ここは騎士養成学園なので、高魔力に対応した施設がないのです。しかし、魔術学園の方なら高魔力に対応ができるのです。」
「そうですか。自分達では力不足で対応できないから、他の所に回したいと言っているのですか。」
「いいえ。ですから、魔術学園の方がルーク君の為になると思いますのでお薦めしたいのです。」
「なぜ、貴方が弟の将来を勝手に決めているのですか、弟の将来ぐらい弟が決めることです。具体的にはなんですか。金の要求ですか。」
シェリーは手に持っていた小さな鞄に手を入れる。その姿を見たカルロスに緊張が走った。
シェリーが取り出したのは、手の平に乗るほどの巾着だった。その口を開き逆さに向ける。
ガラガラガラ。
っと音を立てながら出てきたのは、高純度の魔石だった。それが、ローテーブル一杯にこぼれ出る。
「これで足りるかしら?」
「は。え?」
あまりにも大量の高純度の魔石が小さな巾着から出てきたことにカルロスの思考は停止してしまった。
「これだけあれば、弟が壊した施設の修復と高魔力に対応した改修ができますよね。やれますよね。」
これはもう、魔石を提供するから改修工事をしろという命令に近かった。
「わかりました。高魔力に対応した施設にさせていただきます。」
カルロスは折れるしかなかった。
シェリーはその言葉を聞いて満足して、部屋を出ていった。
カルロスはソファーにズリ込むように背中を預け、天井を仰ぎ見る。
「噂以上だった。」
「いやいや、よかったじゃないか。学園が木っ端微塵にならなくって。」
カルロスは誰もいないはずの室内から声が聞こえ慌てて体を起こし回りを見渡す。すると、先程シェリーが座っていた所に一人の男性が座っていた。
「ブライか。わざわざ第4師団長様が来たのか。」
「クストのヤツがさ慌ててやって来て、緊急警報発令ラースが動いたって言うからさ、今度は何があったのかとヒヤヒヤしたぜ。しかし、姉も姉なら弟も弟なのか。ここの施設を壊すのも相当だぞ?」
「ああ、規格外というやつだ。この国にいるうちはいいが他国に行ったら脅威にしかならん。」
「しかし、『銀爪のカイル』なんで一緒にいたのか不思議だ。」
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
982
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる