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2章 闇と勇者と聖女
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白い謎の生命体は「この美しい世界を下から見上げる機会をくれたお礼に、君が欲しがっていたものを贈るよ。」そう言い残して、スキルの強制解除をし、消え去った。
空間を支配していた神々しい圧迫感のある気配が存在しなくなり、残されたのは、月夜にたたずむシェリーだけだった。
草を踏みしめて、こちらに来る気配が2つ。
「シェリー」
呼び掛けられ、カイルの方を見ると、心配そうな顔をしたカイルとなぜか落ち込んでいるグレイがシェリーの方に歩いて来ていた。
「わざわざどうしたのですか。」
カイルはシェリーの目の前に立ち、少しかがんでシェリーの視線に合わせる。
「シェリー、さっきはごめんね。シェリーが俺の知らないシェリーみたいだったから、つい嫌なこと聞いてしまって、だから、家族になろう。」
「は?」
━いきなりなに?どこをどうすればこんな言葉がでてくるんだろう?・・・。あれか、まさか言わされている?━
「それ言わされていませんか?」
「先程の高位な御方にってこと?うーん。それは俺には分からないけど、ここにはシェリーの居場所はないのかなっと思ったんだ。ここに、この世界に繋留めるものがルークしかいないんじゃないのかな。ルークの手が離れてしまったらシェリーはどこに行ってしまうのかな。不安で仕方がないんだ。」
「わたしはどこにも行きませんよ。この世界で生きるしかありませんから。」
「先程の高位な御方ならこの世界以外も可能なんじゃないかな。あの御方がシェリーをどこかに連れて行ってしまったら、手が届かなくなってしまう。」
確かにあの謎の生命体なら可能なのかもしれない。だからと言って、そう素直にそんな望を叶えるとは思われない。もし、願いを叶えてやるっとあの謎の生命体が言ったとしたら、それはきっと愉快な結果になるからだろう。
「だから、この世界でルーク以外の家族を作らないか。」
これが、私とわたしが、欲しかった贈り物とでも言いたいのだろうか。
置いていった家族 、憧れの家族、なくした家族、受け入れられない家族。これ以上は心を掻きまわさないでほしい。
「シェリーには聖女としての役目があり、それを支えるために5人の番がいる。言葉では理解しているんだ。でも、心はそれを否定している。グレイもそうなんじゃないかな。そして、シェリーは番を否定している。じゃ、家族として受け入れられないかな。」
「ツガイではなく家族。」
「ここに来て、ずーっとシェリーの心が泣いているような気がしていたんだ。ここはシェリーにとってとてもつらいところなんだね。あるべき家族の場所にシェリーはいられないのなら、新しく家族を作らないかな?」
「かぞく・・・。」
目の奥に私の記憶が映り混む、川でサワガニを捕まえようとして、転んだ時兄は手を差し出して助けてくれた。小学校でテストを満点を取って帰ってきたとき母は頭を撫でて誉めてくれた。大雨で学校から帰れなくなったとき父が迎えに来てくれた。
でも、わたしの記憶にはない。母親が、父親がわたしに何かをしてくれた記憶はない。この世界に産まれて親から何かを与えられたか?名前でさえ、わたしを育てるために雇われたばあやがつけてくれたのだ。
わたしの家族・・・ルークの記憶ばかりが写り混む。なにかが溢れ出しそうで唇を噛み締める。
「シェリー泣きたいときは泣いていいんだよ。」
カイルの手がシェリーの頭を優しく撫でる。
「くっ、ふっ。」
「それにシェリーには黒髪が似合うよ。金色にしているのがもったいないぐらい。」
『めぐちゃん、茶髪も似合うけどやっぱり、めぐちゃんには黒髪が一番似合うよ。』まだ夫が彼氏だった頃、夏祭りの帰りにコウジさんに言われた言葉が甦った。
月を仰ぎ見る。やはり月は2つある。
「それは、ずるいな。」
言葉を口に出してしまたら、もうダメだった。押さえ込んでいた感情が外にあふれてしまった。
佐々木という女性の記憶はシェリーとしては邪魔であり、すがる対象であった。もし、この記憶が無ければ子供として甘えられたのではないか。しかし、この記憶がなければ、親がツガイしか見ずに、子供に構わずにいる生活には耐えられなかった。幸せの記憶、憧れの記憶、未練の記憶、羨望の記憶。シェリーは佐々木という女性ではないと思い知らされる。
空間を支配していた神々しい圧迫感のある気配が存在しなくなり、残されたのは、月夜にたたずむシェリーだけだった。
草を踏みしめて、こちらに来る気配が2つ。
「シェリー」
呼び掛けられ、カイルの方を見ると、心配そうな顔をしたカイルとなぜか落ち込んでいるグレイがシェリーの方に歩いて来ていた。
「わざわざどうしたのですか。」
カイルはシェリーの目の前に立ち、少しかがんでシェリーの視線に合わせる。
「シェリー、さっきはごめんね。シェリーが俺の知らないシェリーみたいだったから、つい嫌なこと聞いてしまって、だから、家族になろう。」
「は?」
━いきなりなに?どこをどうすればこんな言葉がでてくるんだろう?・・・。あれか、まさか言わされている?━
「それ言わされていませんか?」
「先程の高位な御方にってこと?うーん。それは俺には分からないけど、ここにはシェリーの居場所はないのかなっと思ったんだ。ここに、この世界に繋留めるものがルークしかいないんじゃないのかな。ルークの手が離れてしまったらシェリーはどこに行ってしまうのかな。不安で仕方がないんだ。」
「わたしはどこにも行きませんよ。この世界で生きるしかありませんから。」
「先程の高位な御方ならこの世界以外も可能なんじゃないかな。あの御方がシェリーをどこかに連れて行ってしまったら、手が届かなくなってしまう。」
確かにあの謎の生命体なら可能なのかもしれない。だからと言って、そう素直にそんな望を叶えるとは思われない。もし、願いを叶えてやるっとあの謎の生命体が言ったとしたら、それはきっと愉快な結果になるからだろう。
「だから、この世界でルーク以外の家族を作らないか。」
これが、私とわたしが、欲しかった贈り物とでも言いたいのだろうか。
置いていった家族 、憧れの家族、なくした家族、受け入れられない家族。これ以上は心を掻きまわさないでほしい。
「シェリーには聖女としての役目があり、それを支えるために5人の番がいる。言葉では理解しているんだ。でも、心はそれを否定している。グレイもそうなんじゃないかな。そして、シェリーは番を否定している。じゃ、家族として受け入れられないかな。」
「ツガイではなく家族。」
「ここに来て、ずーっとシェリーの心が泣いているような気がしていたんだ。ここはシェリーにとってとてもつらいところなんだね。あるべき家族の場所にシェリーはいられないのなら、新しく家族を作らないかな?」
「かぞく・・・。」
目の奥に私の記憶が映り混む、川でサワガニを捕まえようとして、転んだ時兄は手を差し出して助けてくれた。小学校でテストを満点を取って帰ってきたとき母は頭を撫でて誉めてくれた。大雨で学校から帰れなくなったとき父が迎えに来てくれた。
でも、わたしの記憶にはない。母親が、父親がわたしに何かをしてくれた記憶はない。この世界に産まれて親から何かを与えられたか?名前でさえ、わたしを育てるために雇われたばあやがつけてくれたのだ。
わたしの家族・・・ルークの記憶ばかりが写り混む。なにかが溢れ出しそうで唇を噛み締める。
「シェリー泣きたいときは泣いていいんだよ。」
カイルの手がシェリーの頭を優しく撫でる。
「くっ、ふっ。」
「それにシェリーには黒髪が似合うよ。金色にしているのがもったいないぐらい。」
『めぐちゃん、茶髪も似合うけどやっぱり、めぐちゃんには黒髪が一番似合うよ。』まだ夫が彼氏だった頃、夏祭りの帰りにコウジさんに言われた言葉が甦った。
月を仰ぎ見る。やはり月は2つある。
「それは、ずるいな。」
言葉を口に出してしまたら、もうダメだった。押さえ込んでいた感情が外にあふれてしまった。
佐々木という女性の記憶はシェリーとしては邪魔であり、すがる対象であった。もし、この記憶が無ければ子供として甘えられたのではないか。しかし、この記憶がなければ、親がツガイしか見ずに、子供に構わずにいる生活には耐えられなかった。幸せの記憶、憧れの記憶、未練の記憶、羨望の記憶。シェリーは佐々木という女性ではないと思い知らされる。
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