36 / 774
2章 闇と勇者と聖女
32
しおりを挟む
「ほんま、自分性格悪いなぁ。あの取引の後も煮え湯飲まされたしなぁ。でも、ビアンカを外に出すのは嫌やな。」
「それは番としてですか。それとも守る自信がないのですか?」
「おい、お前さっきから、勝手なことばかりいうな。父ちゃんは強い。聖女の母ちゃんは守られるべき大切な存在だ。家族をバラバラにするな。」
「守られてばかりの弱い少年は口を挟まないでいただきたいですね。家族を養う為に働きに出る親は一般的です。このような箱庭で、親が常に共に居続けることは稀ですよ。
キミぐらいの子供は親の仕事を手伝うか、将来の為に学校で勉学に励むか、一人立ちして生きていくために働いているものもいるのです。
それに母さんが弱い?笑わせないで下さい。キメラを一撃で仕留める聖女ですよ。キミより確実に強いです。」
これ以上口を挟むなとシェリーはいう。
「そうね。家族を守るために、お兄様を助ける為に、国を守るために、わたくしは行動を起こさなければならないのですね。」
ビアンカの目に強い意思の光がさした。
「手始めにこの結界の外から始めればいいでしょう。できれば3年以内で終らせてください。」
「まあ。それは大変ですわ。」
「それでは邪魔者はさっさと退散させていただきます。5年前にも言いましたが、余程の事がないかぎり二度とここにはきません。お邪魔しました。」
シェリーは血縁者に背を向け、カイルもそれに続き家を出る。
しかし、丘を下ったところで声がかかる。
「おい。」
シェリーは無視をする。
「聞こえてんだろ、姉さん。」
シェリーは足を止め振り向く。そこには、ナオフミと声を掛けたユウマがいた。
「俺を外に連れて行ってくれ。」
「・・・」
「聞こえてるのに無視すんなよ。」
「黒髪、黒目のトラブルを連れて歩きたくない。喧嘩腰の弱っちいクソガキの面倒はみたくない。これからマルス帝国に行くのに問題だらけのガキを連れていくメリットがない。」
「あんたは髪の色を変える方法を知っているんだろ?口の悪さは直す、します。外の世界に行ってみたいんだ、です。」
「そこの勇者に連れて行ってもらえばいいではないですか。」
「佐々木さん、たのんます。このとおりや。」
ナオフミがシェリーに向かい頭を下げる。
「佐々木さん、確かシーラン王国に住んどうって言ってたやろ?あそこは、騎士の学校も魔術の学校もあるって聞いたことあるんや。佐々木さんの話聞いて俺はこいつらに学校も行かしてないことに気いついたんや。だから、たのんます。」
シェリーははぁとため息を吐く。
「1~2週間後にまた此処を通ります。中には入りません。結界の外で火花を打ち上げるので1刻待ちます。行く気がその時、まだあるなら来て下さい。それと」
シェリーは腰のバックから青いペンダントを取り出し
「ユウマさん、これを母さん渡してユウマさんに合う術式に変更してもらうようにお願いしてください。決してナオフミさんに渡してはなりません。」
「そないにゆわれたら気になるわ。佐々木さんのこれ。」
ナオフミは一瞬でシェリーに近づき首からペンダントを取り上げた。
黒髪でピンクの目をした美しい容姿の少女が現れる。ユウマは唖然としてシェリーを見ていた。
「なんやこれ、なんか覚えのある魔力が」
ワオォォォォ━━━━ン
突如、遠吠えが辺りに響く。
「返して、早く。」
「なんや?」
ドーン!と結界の外で爆発音が響く。
「この国にいるんです。早く。」
「まさか」
「何がや?」
カイルの困惑の声とナオフミの疑問の声と結界が壊れる音が重なる。
「5人なんです。私は5人。」
「なんやて。」
ナオフミは驚きの顔でカイルを見る。
そして、何かが一直線にこちらに向かって来た。
「終わった。やはり小嶋さんに関わるとろくなことがない。」
困惑しているカイル、状況がいまいち分かっていないユウマ、驚愕の事実を知ったナオフミ。
そして、死んだ目をしたシェリーがたたずんでいた。
「それは番としてですか。それとも守る自信がないのですか?」
「おい、お前さっきから、勝手なことばかりいうな。父ちゃんは強い。聖女の母ちゃんは守られるべき大切な存在だ。家族をバラバラにするな。」
「守られてばかりの弱い少年は口を挟まないでいただきたいですね。家族を養う為に働きに出る親は一般的です。このような箱庭で、親が常に共に居続けることは稀ですよ。
キミぐらいの子供は親の仕事を手伝うか、将来の為に学校で勉学に励むか、一人立ちして生きていくために働いているものもいるのです。
それに母さんが弱い?笑わせないで下さい。キメラを一撃で仕留める聖女ですよ。キミより確実に強いです。」
これ以上口を挟むなとシェリーはいう。
「そうね。家族を守るために、お兄様を助ける為に、国を守るために、わたくしは行動を起こさなければならないのですね。」
ビアンカの目に強い意思の光がさした。
「手始めにこの結界の外から始めればいいでしょう。できれば3年以内で終らせてください。」
「まあ。それは大変ですわ。」
「それでは邪魔者はさっさと退散させていただきます。5年前にも言いましたが、余程の事がないかぎり二度とここにはきません。お邪魔しました。」
シェリーは血縁者に背を向け、カイルもそれに続き家を出る。
しかし、丘を下ったところで声がかかる。
「おい。」
シェリーは無視をする。
「聞こえてんだろ、姉さん。」
シェリーは足を止め振り向く。そこには、ナオフミと声を掛けたユウマがいた。
「俺を外に連れて行ってくれ。」
「・・・」
「聞こえてるのに無視すんなよ。」
「黒髪、黒目のトラブルを連れて歩きたくない。喧嘩腰の弱っちいクソガキの面倒はみたくない。これからマルス帝国に行くのに問題だらけのガキを連れていくメリットがない。」
「あんたは髪の色を変える方法を知っているんだろ?口の悪さは直す、します。外の世界に行ってみたいんだ、です。」
「そこの勇者に連れて行ってもらえばいいではないですか。」
「佐々木さん、たのんます。このとおりや。」
ナオフミがシェリーに向かい頭を下げる。
「佐々木さん、確かシーラン王国に住んどうって言ってたやろ?あそこは、騎士の学校も魔術の学校もあるって聞いたことあるんや。佐々木さんの話聞いて俺はこいつらに学校も行かしてないことに気いついたんや。だから、たのんます。」
シェリーははぁとため息を吐く。
「1~2週間後にまた此処を通ります。中には入りません。結界の外で火花を打ち上げるので1刻待ちます。行く気がその時、まだあるなら来て下さい。それと」
シェリーは腰のバックから青いペンダントを取り出し
「ユウマさん、これを母さん渡してユウマさんに合う術式に変更してもらうようにお願いしてください。決してナオフミさんに渡してはなりません。」
「そないにゆわれたら気になるわ。佐々木さんのこれ。」
ナオフミは一瞬でシェリーに近づき首からペンダントを取り上げた。
黒髪でピンクの目をした美しい容姿の少女が現れる。ユウマは唖然としてシェリーを見ていた。
「なんやこれ、なんか覚えのある魔力が」
ワオォォォォ━━━━ン
突如、遠吠えが辺りに響く。
「返して、早く。」
「なんや?」
ドーン!と結界の外で爆発音が響く。
「この国にいるんです。早く。」
「まさか」
「何がや?」
カイルの困惑の声とナオフミの疑問の声と結界が壊れる音が重なる。
「5人なんです。私は5人。」
「なんやて。」
ナオフミは驚きの顔でカイルを見る。
そして、何かが一直線にこちらに向かって来た。
「終わった。やはり小嶋さんに関わるとろくなことがない。」
困惑しているカイル、状況がいまいち分かっていないユウマ、驚愕の事実を知ったナオフミ。
そして、死んだ目をしたシェリーがたたずんでいた。
22
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!
杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!!
※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。
※タイトル変更しました。3/31
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる