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1章 番(つがい)とは

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 食事が終わったあとシェリーはテラスに出てボーッとしていた。いや、右手が空間をスライドするように動いている。

「シェリーは何をしているのかな?」

「ひと探し。」

 シェリーはスキル『マップ機能』のグルグル検索君を使って人を探していた。

 追加スキル
  グルグル検索君
 入力したものをマップ上に表示できる。物、建物、人など。ただし、人名入力する場合は同姓同名がすべて表示されるため、種族名を入れることをおすすめします。
 これルーク君の師匠探しの為に創ったみたいだけど、番探しに使えばあんなに苦労しなかったんじゃない?バカだね。

 最後の詳細コメントは相変わらずイラッとくる。

  ユノリー・マーソン 鷹鳥人 (1件)

 マップ機能の検索には引っ掛かったが、どうもトーセイの街の中にいるようだ。

「捜し人はイアール山脈の中ではなく、トーセイの街の中にいるようです。」

「え?そうなの?」

「耳の横でしゃべらないでください。」

 またしてもシェリーはカイルに膝上抱っこをされているのだった。ここ数日、抵抗すれば余計に悪化が進むと学習したシェリーはこれぐらいなら許すようになってきた。

「明日は先にそちらを訪ねて、ギルドに行きます。」

 シェリーは立ち上がり

「わたしはさっさと休むのでおやすみなさい。」

 一人バルコニーで残されたカイルは、少しづつ懐柔していけばシェリーが堕ちてくれるのではないかと考えるのだった。



 翌朝、シェリーとカイルは集合住宅の部屋の一つの前にいた。ベルを鳴らし住人を呼び出す。奥からは『はいよ』っと声が聞こえる。ドアの格子窓から住人が顔をだす。

「どちささんで?」

「王都に娘さんがいらっしゃるユノリー・マーソンさんでよろしいですか。」

「そうだよ。よくこの場所がわかったね。一年ぐらい連絡とっていなかったから、まだトーセイにいるとは言っていなかったのにね。」

 普通に依頼を受けた者ならイアール山脈中を徘徊していたことだろう。

「ええ。娘さんからの手紙を預りました。受け取りのサインをお願いします。」

 ちょっとまってっとの言葉と同時に格子窓が閉められ玄関の扉が開いた。そして、手紙を渡し、サインを受けとる。

「ここの住所は娘さんにお伝えしてもよろしいですか?」

「ああ、かまわないよ。ありがとうね。」

 こうして、3件目の依頼も無事におえることができた。
 二人は依頼完了手続きのためギルドにきた。時間が昼前ということもあるのか閑散としている。受け付けカウンターも一人しか座っていない。

「依頼完了手続きをお願いします。」

「お、シェリーのお嬢ちゃん久しぶりだな。」

 そう答えたのは、居るだけで圧迫感を感じるほどガタイが大きく、筋肉隆々でスキンヘッドのタンクトップ姿の男だった。

「ギルドマスターなぜここに座っているのですか。」

 受付のカウンターに座っていたのはこのトーセイ支部のギルドマスターだった。

「ああ。沖でクラーケンがでたとか、灰色狼の群が近隣の村を襲って相当なリーダーが出現したのかなかなか討伐できないとか、イアール山脈の中腹でゴブリンの集落が発見されてキングがいるとかいないとか、まあそんなことで緊急性の高い事が3件も起きちまってな。
 てんやわんやで受付の連中も補助要員としてかりだされてしまったんだ。人員が必要なら俺が行こうと言うとみんな止めるんだ。それで、受付業務をしてるわけだ。」

「いや、それはみんなさん止めるでしょう。キングコングが好き勝手暴れれば、被害甚大じゃないですか。」

「キングコングってなんだ?」

「ギルドマスターみたいな大猿ヒトのことです。」

「そんなに誉めても何も出ないぞ。おお、一番難関だった手紙の受け渡しをしてくれたのか、毎年この依頼は押し付け合いになるんだよな。山脈中駆け回ることになるからな。わははは。」

 依頼の完了の手続きはスムーズに終わり、ギルドを出ることにした。


「6刻になるけど、どうする?」

「軽く食事を食べてから、トーセイを出て国境を越えましょう。それから公都へ抜ける街道沿いを行けるところまでいきます。」

「それだと、焦土化したところを突っ切ることになるよ。」

「焦土化した街を通ることも目的です。そして、公都には行かず、そのまま北上します。」

「じゃ、当分二人きりで過ごせるね。」

 はっきり言って一人で十分なのに、なんとも嫌な言葉だとシェリーは思った。

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来ていただきましてありがとうございます。
お気に入りの評価してくださいました読者様
感謝を申し上げます。

次回から2章に入りますので引き続きよろしくお願いいたします。
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