番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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1章 番(つがい)とは

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「で、シェリー紹介してくれるか。」

 食後のお茶を飲んでいる中、同居人がたずねる。
はっきり言ってどうでもいいシェリーは

「カイルで冒険者。こっちは同居人」

「全然紹介になっておらん。それにシェリーの番にカイルという人物いなかったはずだ。で、誰だ。」

 カイルはシェリーが同居人と紹介した人物に向かって言う。

「わたしはセイルーン竜王国のカイザール・セイルーンです。今はカイルという名で冒険者をやっております。」

「ああ、竜王国の第三王子か、番探しをシェリーに頼まれたときには国を出た後で足取りがわからなかったやつだな。」

「え。シェリーは俺のこと探してくれていたの。」

「見つからないように、どこの誰かは把握が必要でしょう。」

 シェリーのその言葉を聞いて項垂れるカイル。

「じゃ次はおれな。おれはオリバー・カークス。ルークの父親だ。」

 オリバーがずずずっとお茶を飲みながら言う。

「オリバー。魔導師オリバーか。シェリー 、オリバーは勇者に殺されたと言っていなかったか。」

「ああ。おれは殺されたぞ。ナオフミに。この首の跡が証拠だ。シェリーに生き返らされたけどな。」

 ははは。と笑いながら首の棘の跡の様な黒い紋様を見せる。

「先代の聖女の番だと聞いたのですが」

「ああ、それも本当だぞ。一回死んだことで番としても死んだことにされたんだろうな。あれだけビアンカの事ばかりしか考えられなかったのに今じゃどうでもいいとすら思っている。こうやって存分に研究に没頭できることはすばらしいことだ。」

「番が番ではなくなる。なんて恐ろしい。」

「ああ、竜人族からしたら恐ろしいことかもしれんな。」

 シェリーは話に割り込むつもりはなかったが、気になってたずねた。

「竜人族は何か違うの。」

「なんだシェリーは竜人族の番に対する執着を知らないのか。ははは。通りで捕まるわけだ。」

「え?執着。」

「妄執とも言うべきか。竜人族は番が産まれたら分かるらしい。そして、幼少期から手元に置いて育てるんだと。」

「ヒー。あの恐ろしい紫の上計画が実際に存在している。」

 シェリーは鳥肌の立ったら腕を擦る。

「なんだその計画は?」

「とてもモテる男が己の欲望の為に行われた計画。手に入れることのできない女に似た幼女を連れ去り自分好みの女に育てようというロリコンの集大成と言うべき計画。」
(注:シェリーの独断と偏見が入り雑じった解釈になります。)

「ああ、そんな感じだ。」

 とても納得したようにオリバーは頷く。

「違う。違う。」

 慌ててカイルが否定する。

「長い時間を生きる竜人族にとっては番こそが唯一共にいてくれる存在なんだ、早く番に会いたいのと、竜人の習慣になれてもらうために小さい頃から共に暮らすんだ。」

「同じです。」

「同じだな。」

 カイルはまたしても項垂れる。

「自己紹介はこれぐらいでいいか。シェリー、結界に侵入した形跡があったが今度は何を言われた。」

「ああ、あれね。少し遠出することになる。放置すると家がゴミ屋敷になるから1ヶ月毎には戻るつもりだけど。」

「子供じゃないから自分のことは自分でできるさ。」

「それを信じて半年間家を空けたら、溶けた廊下とか、謎の粘液生物とか、黒光りのヤツらが徘徊する家になっていたけど?ああ 、今回は勇者のところに行くからなんか伝言なり、贈り物があるなら考えといて3日後に出る予定だから。」

 ははは、と自分が劣勢だと感じたオリバーは失敗は成功の元だと言いながらダイニングから出ていった。

 食器の片付けをしようかと立ち上がりたかったがカイルに横抱きにかかえられた。

「なんですか。カイルさん。」

 無言のまま隣接するリビングのソファーに座る。そのまま座ったので、もちろんシェリーは膝上横抱きでカイルに抱かれたままだ。

「シェリー、俺がここにく来る前、誰と一緒だったのかな。」

 口調はいつもと変わらないが地に響くような低い声でたずねる。

「昨日強引に家まで送られてから朝までオリバー以外会ってないですよ。」

「じゃ、先ほどの話の侵入者とはなんだ。」

「ああ。わたしの夢の中に侵入してくる謎の生命体。」

「ん?魔物か?」

「創造主又は管理者又は世界の意思。正確な名称は知りませんが、わたしに啓示をしてきたり愚痴を言ってきたり、おちょくってきたりする謎の生命体です。」
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