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116 行動することに意味がある

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 悲鳴を上げたメリーローズの姿が歪んだ。そして、『ぼふっ』っと怪しい煙を吹き出てきたと思ったら中から、大人の妖艶な女性が出てきた。

 長い黒髪にゴスロリの格好をした大人の女性が現れたのだ。

「折角ステータスを劣化させて子供の姿になっておったのに!何を飲ませたのじゃ!」

 ゴスロリの女性の喋り方はロリババアの話し方なので、ロリババアで間違いないようだ。そして、メリーローズ曰く幼女の姿を取るためにステータスを弱体化させていたらしい。
 今、視てみるとロリババアのステータスの10倍はあった。MPは今まで見た中でダントツで120万だった。
 ちょっと待て!いままでMP1万だったじゃないか。それが120万!幼女の姿を取るのにそれだけMPを消費していたということか!なんてもったいない使い方を!

「何を飲ませたのじゃ!」

 私が答えないのでメリーローズが詰め寄ってきた。

「冬の女神の神殿の水です」

 全てのステータスを回復させる。神殿の泉の水。

「なんじゃと!」

 それよりもMP1200000もあるのなら

「メリーローズ。今の結界を聖域結界サントゥアスピスにして」

「何故に、妾が創り出した魔術を知っておるのじゃ!」

 そう、これは聖域と結界を合わせたものでメリーローズの固有魔術だ。常時回復、状態異常の無効、一番強固な天地結界が常時展開されるものだ。
 ここで重要なのは私がなぜ知っているかではなく、メリーローズに結界を張ってもらうことが先決なのだ。 

 回復役のルナは何が起こっておるのか理解が追いつかないようで、呆然としているので役に立ちそうにない。神域が形成されるまで、回復役は必要だ。

「メリーローズ。四の五の言わずにさっさと結界を張り直す!ここを生きて戻れるかはルアンダとシュリーヌにかかっているんだからね!」

 私が強く言うと、なぜだか怯えたように身を引かれ『わ、わかったのじゃ』と、いって結界を張り直してくれた。何故に300年生きた魔女に怯えられなければならないんだ!

 メリーローズの行動に首を捻っていると、シンセイがノアールを手に抱えてやってきた。ああ、結界が強固な天地結界に変わったので、持ち場を離れられたのか。

「姫、ノアールを側に置いてくだされ」

 そう言ってシンセイはノアールを私の足元に置いた。ノアールは元の小さな姿に戻っていたけど、『ぷぷぅー』という鳴き声と共に姿を変化させ、大型犬ほどの大きさになった。これは私の幼児ステータス対策ですか?
 私、体力は凄く増えたよ!幼児ステータスから脱却していないけど·····。

「それから、姫よ。これも姫の作戦の内かもしれませぬが、将は人からの好意に慣れておりませぬ故、今度から気をつけてくだされ」

 ·····何故かシンセイがら注意をされてしまった。何が駄目だった?

「ん?私の作戦の何がダメだった?もう直ぐ神域が完成しそうだから、全力で魔人?悪魔?あのよくわからないモノになったリアンに攻撃してほしいのだけど?」

 首を傾げながら、シンセイに問いかけると、大いにため息を吐かれた。

「まぁ、老兵が口を出すことでは無かったですなぁ」

 そう言ってシンセイは背を向けて結界の外に出ていった。だから、何が駄目だったか言ってよ!言ってくれないとわからないじゃない!


 私がもやもやと考え事をしていると、いよいよ神域が完成する段階になってきた。キラキラと大気中にエフェクトがきらめき出す。清らかな空気の質感に変わって来た。

 今まで魔術攻撃で距離をとって攻撃していたリアンが魔術攻撃と直接攻撃の併用に転じてきた。
 それをジュウロウザとシンセイが攻撃を受け止め弾き返す。が、やはり人外のモノとなると些か対応しきれない部分が出てきており、一部の攻撃がメリーローズ結界に当たる。一番上限の結界だ。
 勿論弾き返していると言いたいが、攻撃が当たるたびに結界が軋んでいる。
 この結界を軋ますなんて、一体どんな攻撃だ!ジュウロウザとシンセイは大丈夫だろうか。

 二人の状態を確認したいが、私もしなければならないことがある。

「ルナ!貴女いつまでぼーっとしているの!手が空いているなら結界の外の二人を回復しなさい」

 リアンからの途轍もない攻撃にルナは身をすくめ地面に伏してしまっている。生きたいのなら立ち上がりなさい!ここでうずくまっていても何もならない!
 ここまで、ルナのわがままで皆を振り回したのに、ルナが動かなくてどうするの!

「ルナ!立ちなさい!立って貴女のできることをしなさい!」

「うるさいわね!私の回復なんてほとんど成功しないのだからいいじゃない!」

 リアンにもそう言って戦闘行為から外してもらっていたのだろう。成功しないからやらないのじゃなくて、失敗してもいいからするの!行動することに意味があるのだから!
 腹が立つ。

「いいから、回復の魔術を使いなさい」

 あっ。あまりにも腹が立ったから、思いっきり低い声が出てしまった。

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